19:まいどお騒がせします。
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「神崎!!」
神崎を追いかけ、大森達とともに1年の教室に駆けつけた因幡だったが、すでに遅かった。
神崎の報復に教室内は騒然となり、廊下と教室の床には窓ガラスの破片が散乱し、黒板には金属バットが突き刺さっていた。
「神崎っ!! 待ちなさいっ!!」
「神崎さん!!」
因幡達は止めようとするが、神崎は城山に怪我を負わせた男子の胸倉をつかんだまま、因幡達を睨んで怒鳴る。
「てめーらも邪魔すんな!! 城山の分はきっちり返させて貰わねーと」
「……まずいですね、先輩…」
「あ?」
振り返ると、両目の泣きボクロと左頬の傷痕が特徴的な1年男子がそこに立っていた。
今の状況にそぐわず、表情には余裕が見られる。
「これじゃあいくらなんでも、ボクが止めなきゃいけない…」
「あ?」
「三木ぃ! た…、助けてくれ!!」
神崎に胸倉をつかまれている男子が助けを求めた。
「なんだてめーは…」
パァン!!
次の瞬間、三木の手のひらが神崎の額を直撃し、神崎の体は大きく吹っ飛び、床に倒れ、動かなくなった。
「神崎ぃっ!!」
因幡が叫んだ直後、男鹿と邦枝と古市も駆けつけてきた。
「姐さん!!」
「神崎は?」
「―――それが…」
男鹿達が教室を見ると、倒れた神崎と、その傍で悠然と立っている三木の姿があり、先程まで騒々しかった教室が今は嘘のように静かだ。
「神崎!!」
「あの男…、六騎聖にやられたんです」
「六騎聖?」
大森の言葉に男鹿が反応する。
三木の目は、男鹿を見つめていた。
目を合わせた男鹿は「ふぅん」と鼻を鳴らし、ベル坊に尋ねる。
「ベル坊。どうだ、あいつは? 六騎聖だってよ」
すると、ベル坊は露骨に嫌悪の表情を浮かべ、首を横に振った。
「ダヴ」
「……おまえだけはないってさ…」
三木はなんのことかわからず首を傾げたが、間を置いて口を開く。
「久しぶりだね、男鹿。驚いたよ。まさか、こんな形でまたキミに会えるなんて思わなかったからね…」
男鹿はなんの反応も返さない。
三木は自分の左頬の傷痕に指を当てた。
「あれ? もしかして忘れてる? 非道いな。中学の頃、あんなに」
「マ゛―――ッ!! マ゛マ゛マ゛ーマ゛マ゛――――ッ!!!」
遮るように、翻訳もはばかるほどの汚い言葉を浴びせるベル坊。
三木は一度黙り、言葉を続けようとする。
「中学の頃、あんなにかわいがってくれ」
「マ゛―――ッ!!!」
露骨に会話を遮るベル坊。
因幡は何事かと傍で眺めていた。
(すごいキレてる…)
やがて、他のクラスの生徒も騒ぎを聞きつけ、教室から出てきた。
これ以上騒ぎが大きくなる前にと因幡と大森が教室に踏み込み、倒れた神崎に近づいた。
他の石矢魔生徒も数人教室に入ってくる。
「男鹿!! あんたもそいつと戦っちゃダメよ」
大森が忠告する以前に男鹿はそんな気はさらさらなかった。
「あん? 戦わねーよ。だってベル坊こんなだぜ?」
未だに自分の肩で「ないない」と首を振っているベル坊に指さす。
「…神崎を沈めた一撃…。正直ゾッとした。相手にしない方がいいわ。あんたでも勝てるかどうか…」
思い出しただけでも冷や汗が浮かんでくる。
「だから、戦わねーっつの。オレをなんだと思ってんだ」
男鹿がそう言うと、三木の笑みが消えた。
「神崎…」
(ダメだ。完全にノビてる…)
因幡が声をかけて確認したとき、三木はそれを見下ろし、しらけたような口調で言った。
「―――ふぅん…。それが東邦神姫の神崎…。石矢魔のトップって、その程度なんだ…」
それを聞いて、大森は振り返り睨みつける。
「あ?」
「……………」
因幡は黙ったまま、気絶した神崎の顔を見つめていた。
三木は挑発を続ける。
「ちょっと思っただけですよ。こんなのに勝っても自慢にならないなって…。だってそうでしょ? 弱すぎますよ」
「待って、寧々!!」
挑発に気付いた邦枝が声をかけ、大森は三木から視線を逸らした。
それでも三木は黙らない。
「……そのクセやることだけはハデだ。人の迷惑もかえりみず、虚勢をはるためだけに暴力を振るう。不良って、こんなのばかりですか?」
「そ…、そうだ…。そうだそうだ!! 帰れバカヤロウ!!」
「いいぞ三木!!」
「てめぇらなんかさっさと六騎聖にやられちまえばいいんだ!!」
「迷惑なんだよ、チンピラどもが!!」
「オレ達の平穏を乱すんじゃねーよ!!」
三木の影響と、石矢魔が手を出してこないのをいいことに、クラスの生徒達が一斉に声を上げた。
ダァンッ!!
因幡の右足が、神崎に胸倉をつかまれていた男子の机を踏み、生徒達の罵声を一瞬かき消した。
しん…、と再び静寂に包まれる。
「黙れ…。お望みなら、オレが神崎の続きやってもいいんだぜ。城山のことはオレだって頭にきてんだ。今度は脱糞するか? ションベン小僧が」
「ひ…っ!」
殺気だった目に睨まれたその男子は急いで三木の後ろへと逃げた。
他の生徒や教師も怯えた顔をしている。
三木を除いては。
「…そうだよ。やめなよ、みんな。これでもこの人達は本気なんだ」
その言葉に真っ先に頭にきたのが大森だ。
カッと怒りで顔が熱くなり、三木の胸倉をつかんで殴りかかろうとする。
「もとはといえば、あんたんトコのバカ共が…!」
それを、男鹿は肩をつかんで止める。
それを見て、同じく動きを止める因幡。
「ここで買ったら、負けだぜ」
「……………」
三木の胸倉をつかんだ大森の手が離れる。
「へえ…。キミが止めるんだ。残念…。もうひとり退学に出来るかと思ったのに…」
口元の薄笑みを浮かべ、三木は曲ったネクタイを直した。
大森は悔しげな顔をしながらも踵を返し、因幡も机から足をどけ、神崎のもとへ戻った。
神崎は、同じく駆けつけてきた真田兄におぶられ、因幡達とともに教室を出る。
「そうそう、石矢魔のみなさん。放課後はぜひ旧校舎の屋上へ…。我々部長連が、お待ちしておりますよ」
全員が教室を出て行く前に、三木は告げた。
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