18:狙われています。
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本屋の外で因幡は古市に説明していた。
古市は男鹿とここで待ち合わせているらしい。
ジャンプを読んでいたところ、因幡を見つけてしまったわけだ。
「お母さんの仕事だったんですか」
2人は缶ジュースを片手に、本屋のすぐ傍にある自動販売機の前に立つ。
「そう。マザコンじゃねえけど、母親の仕事っぷりを見たいというか…」
ファンとしてストーリーを応援しているというか。
それは言わなかった。
「信じられないなら…、おまえらで個人情報もろもろの作品作ってもらうのも可能だけど?」
「信じますっ」
邪悪な笑みを浮かべる因幡から、古市は本気だと悟って首を激しく横に振った。
「ちなみに、さっきのこと、あいつら(神崎と姫川)には絶っ対言うなよ。言ったら、どっかで待ち伏せして油断してる隙にブッ転がすからな」
「心得ましたから、そんな怖い予告しないでください」
古市に念を押した因幡は、飲み終わった空き缶を自動販売機の隣のゴミ箱に入れ、「男鹿、来たみたいだぞ」とその方向に指さして古市に教え、歩きだした。
「あれ、今日はご一緒しないんですか?」
「神崎達と待ち合わせ」
そう言って背を向けたまま手を小さくひらひらと振り、「また学校でな」と改札を通った。
階段を上がると、すでに神崎、城山、夏目が待っていた。
「よっ」
「おはよ、因幡ちゃん」
「1年坊(古市)となにか話してたか?」
「なんだ、見てたなら声かけろよ」
そんなことを話していると、乗車予定の電車が時間通りに来た。
因幡と神崎達は2両目に乗り込み、目的の駅に到着するまでつり革につかまり、電車に揺られた。
聖石矢魔学園の生徒もちらほらと見当たった。
因幡達を見た瞬間、一斉に視線を逸らしたのがわかった。
朝から車両内に重苦しい空気が流れる。
「ねえ、あれって石ヤバの…」
「見るからにそうだろ」
「これだから不良って」
「野蛮人」
「確か、帝毛とモメたって…」
「やめてほしいわ。こっちが巻き添え食らっちゃう」
「六騎聖に潰されちゃえばいいんだ」
ヒソヒソとそんなことが聞こえてくるが、因幡達は相手にせずに聞き流した。
電車を降り、因幡は新鮮な外の空気を吸い込んだ。
「意外」
駅から離れたとき、夏目がそう言った。
「あ? なにが?」
因幡はポケットからストレス解消用のチョコレート味のキャンディーを取り出して咥え、隣を歩く夏目に顔を向けた。
「睨みもしなかったから。てっきり「なにごちゃごちゃ喋ってんだブッ転がすぞ」とでも言うのかと…。神崎君は思いっきりガン睨みしてたけどね」
「なんだよ、夏目、オレが因幡よりガキだとでも言いてえのか?」
「そういうわけじゃないよ」
横目で神崎に睨まれ、夏目はなだめるような笑みを返して否定する。
「オレは石矢魔みたいに不良がゴロゴロいる高校にいたわけじゃねえからな。ちょっとでも厄介事起こすとああ言われてたから…、慣れだ」
キャンディーを咥えたまま、因幡は答えた。
「それよりも、奴らの陰口にあった“六騎聖”って気にならねえか?」
「そういやそんなこと言ってたな…」
神崎は視線を上げ、そのワードを思い出す。
「なにかのグループ名かな?」
「東邦神姫のようなものですかね?」
「…ま、悪口を除いてはまたしばらく楽しめそうだけどな。クラスも最高だし」
因幡が笑い混じりに言うと、神崎はうんざりした顔で「あれほど最悪なクラスはねーぜ」と返した。
「あ、姫川ー!」
その時、因幡は、聖石矢魔の正門前でベンツから降りる姫川を見つけ、声をかけて気付かせ、手を振った。
「てめーは堂々とベンツで登校かよ。優雅なもんだな、このボンボン」
今日初めて会って早々、神崎が喧嘩腰に声をかけた。
姫川も嘲笑混じりに言い返す。
「悪い? おまえだって来ようと思ったら来れるだろが」
「健全な男子高校生は徒歩か電車だ。ラクばっかしてると、ここに肉ついてくんぞ」
神崎は手を伸ばし、姫川の腹をつかんだ。
「痛って! つねんなバカ!」
「ぎゃはは! やめろ! くすぐんじゃねーよ!」
仕返しとばかりに腹をくすぐられてしまう。
因幡は「朝からイチャイチャ、よろしいことで」と小さく呟きながら、その光景をムービーにおさめた。
「あれ? 昨日の…」
背後から声をかけられて振り返ると、昨日出会った赤毛の男が立っていた。
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