17:また転校しました。
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9月1日。
朝日が昇る石矢魔町。
「桃ちゃん、いつまで寝てるの?」
因幡家の朝も早い。
珍しくコハルが因幡を起こしに階段を上がり、因幡の部屋の扉をノックした。
だが、扉の向こうからはなんの返事もない。
怪訝に思ったコハルは「入るわよ?」と伺ってから扉を開けて中へと入る。
「!」
そこには、ベッドの上で完全に全身毛布にくるまった因幡の姿があった。
心なしか、空気が暗い。
コハルはカーテンを開けるが、それでもまだ部屋が暗く感じられる。
「…桃ちゃん…、今日、学校よ?」
「………行きたくない」
くぐもった声が返ってくる。
酷く落ち込んでいた。
石矢魔高校の校舎が男鹿の手によって破壊されてしまい、校舎が直るまで他の高校を間借りすることになった。
それはいいが、因幡がショックを受けたのは、石矢魔高校の生徒はとても多いため、いくつかの高校に分散させたことだ。
退院したばかりの因幡はその転校案内届けを昨夜知り、それからずっとこの調子だ。
行きたくないと毛布から顔も出してこない因幡の気持ちを、コハルは理解できなくもなかった。
理由は1つしか思い浮かばない。
「もう…。しばらく神崎君達に会えないからって…」
ピクリと因幡が反応する。
「……違うもん」
(「もん」…)
久々に女の子らしい娘を見たコハル。
「桃ちゃん、私だって辛いのよ? しばらくあの2人のあんなこんなイチャイチャなシーンが見れないなんて思うと…っ」
コハルはハンカチを取り出し、目に当てた。
「…母さん……」
「神崎君のツンデレっぷりと姫川君の余裕っぷりが、母さんの励みになっていたのに…、萌えになっていたのに…っ!」
「…っ」
因幡の目も潤んできた。
「母さん…!」
毛布から出てきた因幡とコハルはひしりと抱き合った。
「早く学校行けよ」
(泣きどころ違くね?)
いつの間にか部屋の前に立っていた春樹が声をかけた。
やはり因幡の方が母親(コハル)の血を濃く受け継いでるな、と思った。
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