16:魔界で大ピンチに。
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(ワシと契約しておらぬのに…、魔界にいるからといってこの圧倒的な魔力…!! 人間のクセに、魔族並以上の力を秘めておる…。コハル…、これでも娘を普通の人間として生かすつもりか…!?)
「…っ」
サソリを倒したあと、瞳の色を取り戻した因幡はその場に倒れた。
「因幡!」
姫川達が因幡に駆け寄る。
「…疲れた…」
「どうやって倒したかはともかく、さっさとここから出るぞ! 東条! 因幡は任せる!」
「おう」
東条は因幡を肩に担ぎ、巨大サソリが出てきた穴から逃げる姫川に続く。
「そんな…」
「ヌシ様が…」
「追え!! 殺せ!!」
オブト達が姫川達を追いかけようとしたとき、洞窟が激しく揺れた。
その異変に逃走中の姫川達も気付く。
「今度はなんだ?」
相沢は天井を見上げ、空間を見回すと、天井から岩の欠片が次々と落ちてくるのが見えた。
そこで姫川は思い当たった。
「…まさかと思うが…、あの巨大サソリが、この洞窟を支える柱になってたんじゃねえか?」
その言葉に陣野もはっとする。
「そうか…。あの連中にとって、あのサソリはまさに守り神のようなものだ。餓死されたらたまらないからな。この洞窟を支えるために、生贄と称して食事を与え続けていたわけか…」
「じゃあオレ達も早く出ないと洞窟で心中ってわけか」
相沢がそう言うと、姫川達の前にあのウサギが飛びだし、先を走った。
あのウサギがどういうつもりか考えている余裕はない。
「あのウサギを追うぞ!」
東条が言わずとも、全員が同じ意見だった。
後ろから追ってくるように洞窟が崩れ始める。
穴はどこまでも続く。
だが、徐々に上り坂になってきた。
「! おい!」
因幡を担いで先頭を走る東条は先にある光を見つけた。
出口だ。
先に陣野に続き、相沢と城山が出る。
出口の先は森林だ。
「姫川!」
「くっ!」
最後尾の姫川が手を伸ばし、東条に担がれた因幡がその手をつかんで引っ張った。
洞窟は完全に崩れ、出口が埋まる。
間一髪だった。
全員その場に腰を下ろし、息を弾ませた。
「はぁ…、はぁ…。…外…だ…」
因幡は仰向けに寝転がり、雲に覆われた空を見上げた。
「神崎…! おい、目を開けろ…!」
一度地面に寝かされ、姫川に抱き起こされる神崎に、因幡は重い体を引きずって這い寄る。
「ごほっ…」
「神崎…!」
「神崎さん…!」
解毒剤は手に入らなかった。
洞窟を出たとしても、辺りには病院もなければ民家もない。
時間も残りわずかだ。
「てめぇ、こんなワケのわかんねーとこで死ぬ気か!?」
「姫…川…、因幡…、城や…ま…」
薄れる意識の中、神崎は名を呼んだ。
「神崎…、クソ…っ、どうすりゃいいんだ…!」
因幡は歯を食いしばり、コブシを地面に叩きつけた。
「! …誰か来るぞ」
東条は背後の茂みに気配を感じた。
一難去ってまた一難か。
因幡達は神崎を守るように囲い、こちらに近づいてくる者に備える。
出てきたのは、ウサギと、白衣を着た男だった。
「おまえ、さっきのウサギじゃ…」
東条が指をさして言ったとき、白衣の男は宙に小瓶を放り投げ、銃で撃ち抜いた。
「!!」
小瓶が割れると中から白い煙が噴出され、それを吸いこんでしまった因幡達はその場に倒れ、眠りに落ちた。
“…わざわざ来てもらってすまんな”
「いきなり押し掛けてきたから何事かと思えば、人間を助けろ…と。私のじいさんからもよく愚痴を聞かされていた」
“おヌシの愚痴もあとで聞いてやる。…治りそうなのか?”
白衣の男は神崎に近寄り、胸元から出した小瓶の薬を飲ませた。
「タフな男だな。本来なら体の激痛で失神し、そのまま死んでいるところだ。…応急措置はした。あとは一度うちに戻ってちゃんと治療すれば助かる」
“人間界に戻す前に、魔界の記憶も消してくれないか?”
「あまりオススメはしないがね。まあ、忘れた方がいいだろう…。ここで起きた、恐ろしい記憶は全部…。ただし、キミの契約者になるやもしれんコは、多少残るかもしれない。魔界の空気に馴染んでしまったからな」
“……かまわん”
それがのちに助けとなる記憶なら。
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