16:魔界で大ピンチに。
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サソリの上で因幡と東条が横目を合わせ、口元に笑みを浮かべた。
「いい蹴りじゃねーか」
「フン、今度食らってみるか?」
「東条と…因幡!?」
城山は驚いてそれを見上げていた。
因幡達に続いて、姫川達も穴から飛び下りてサソリの上に着地する。
「城山…、生きてるか?」と神崎。
「てめーがそれを言うな」と姫川。
「よくもまあ、未知の生物相手に…」と相沢。
「このあとのことは考えてるのか?」と陣野。
「喧嘩だろ?」
「転がせばいいんだろ?」
東条と因幡はイキイキした顔で答えた。
「実は仲良し!!?」
相沢がつっこむ。
「オレも助太刀するぞ!」
姫川と陣野に縄を外された城山は立ち上がって言い放つ。
「その格好で言うな、暑苦しい」
姫川は気分を害した。
「人間!? バカな…、捕えたはずだぞ!!」
「よくもヌシ様を…!!」
「全員生贄に捧げてしまえ!!」
オブト達は全員毒針を向ける。
すると、巨大なサソリが急に、キシャアアアッと鳴きだし、洞窟を揺らした。
「!! ヌシ様が興奮しておられる!」
「連中の中にメスが混じっているのか!?」
「殺すな!! 貴重な生贄だ!!」
「そのメスを引き摺り出せ!!」
相沢、城山、神崎、姫川の視線が因幡に集中する。
「オレを見るなっ」
「…「殺すな」ってことは、とりあえず毒針向けてくることはねえわけだ?」
姫川は不気味な笑みを浮かべ、スタンバトンを取り出した。
「だったら、普通のチンピラと大差ない」
陣野と相沢も構える。
同時に、オブト達が一斉にかかってきた。
因幡達はそれに応戦する。
「オレが女よー」
相手がうかつに毒針を向けないように、姫川は嘘を吐き、スタンバトンの電撃を食らわせる。
「いやーん」
相沢もそれに乗っかり、相手のアゴを容赦なく蹴飛ばす。
「バカーん」
東条まで。
「虎まで乗っかるのか」
人間とは思えない強さに、オブト達は苦戦を強いられ、一旦距離を置いた。
「クソ…ッ。本当に人間か、こいつら!?」
「数はこっちが上だってのに…!」
「おい」
因幡は一時的に静かになったのを機に、オブト達に話しかけた。
「仲間のひとりがてめーらの毒食らって死にかけてんだ。誰でもいい。解毒剤があるならそれをよこせ。そしたら、誰が女なのか教えてやるよ」
「おい! なにを勝手に…」
陣野は因幡の肩をつかむが、因幡は「時間がねえんだ」とその手を払う。
オブト達は、しん、と静まり返り、誰かが笑いだした。
「人間がオレ達に取引か!?」
「残念だったな。解毒剤なんてねーよ!」
「オレ達は仲間の毒を受けても平気だからな」
「解毒剤が…ない?」
姫川は肩越しに、背負った神崎に振り返った。
神崎は背中でぐったりとし、時折、血を吐きだしていた。
「ゲホッ…」
「神崎さん!!」
因幡の瞳に、その光景が映った。
「ここまでくれば手に入ると思ったか!?」
「その人間はもう終わりだ!」
「オレ達の毒を受けて何時間経過した? もってあと30分もねえだろうよ!」
因幡の目の前にいるオブト達が、下品な声で笑いだす。
「神崎!」
「神崎さん! しっかりしてください!」
背後では、姫川と城山が神崎に呼びかける声が聞こえた。
「なら…、もうおまえらでもどうにもならないのか?」
震える声がオブトに尋ねる。
「だから言ってるだろ?」
「どうにもならねえ。そいつは…死ぬんだ」
(……死ぬ?)
心臓を握りしめられた気がした。そして、沸々と怒りが湧きあがる。
「…だったら、てめーらにもう用はねえ」
因幡の瞳が赤く染まり、冷たい冷気が吹く。
それを見たオブト達は思わずたじろいだ。
「赤い瞳…! 人間じゃねえぞ…!」
「こいつ…魔族か!?」
「男だろうが女だろうが、もう構うものか! 殺せ!!」
危険を感じ取った数人のオブト達が、一斉に毒針で因幡の体を刺した。
「因幡!!」
姫川が叫ぶと同時に、オブト達は異変に気付いた。
尻尾が徐々に凍り付いているからだ。
「うわ!!」
「なんだ!?」
慌てたオブト達はトカゲのように自分の尻尾を切り離す。
完全に凍りついた尻尾は地面に落ち、粉々に砕けた。
尻尾を切り離さなければ同じことになっていたかもしれない。
オブト達は青ざめた。
「そんなに殺されたいか?」
冷たい突風が吹き、オブト達はヘビに睨まれた蛙のように動きを止めた。
脅しじゃない。
誰もが思った。
同じく呆気にとらえていた姫川達だが、因幡の背後に近づくものに、姫川は声を上げた。
「因幡! 後ろだ!」
巨大なサソリが尻尾を因幡目掛け振り下ろした。
因幡はそれを肩越しに確認し、後ろに一歩飛んで避け、ジャンプする。
ゴシャッ!!!
サソリの頭に、靴跡が残るほどの蹴りが食らわされた。
そこから、徐々にサソリの体が凍りついていく。
「道、開けてもらおうか」
パァンッ!!
完全に凍りつき、因幡がコブシを握りしめると、氷漬けになったサソリの体は粉々に砕け散った。
“砕け散る毒(フリージングポイズン)”
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