16:魔界で大ピンチに。
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「知らねえよ」
オブトを誘いだすために使った穴の先にある、広めの空間では他のオブト達が積み上げられていた。
何度、城山の居場所と神崎に必要な解毒剤を問い詰めても、皆、知らぬ存ぜぬだ。
「……いい加減喋ってくれねーと…、マジで時間ないんだけど?」
因幡は青筋を立て、相沢に尻尾を踏まれて身動きとれないオブトの胸倉をつかむ。
「ほ…、本当だ。儀式の場所なら知っているが、生贄を捕えている場所はわからない。他の奴の担当だからな。解毒に関しては…、まず誰かを解毒する機会がまったくない。だからオレ達より身分の上の者じゃないと…」
「オレ達を捜しまわってるのは、ほとんど下っ端の連中ってことか…。サソリのクセにアリみたいな組織だな」
姫川がそう呟くと、陣野が「なら…」とオブトに尋ねる。
「その身分の上の奴らがどこをうろついてるか吐いてもらおうか」
すると、オブトはくつくつと笑いだした。
「ククッ。おまえら、そんなこと口で言ってわかるのか? ここはてめーらにとっては巨大迷路だ。迷い、迷った挙句、オレ達の仲間に捕まるか、飢え死にするのがオチだ。無闇に迷えないよな? そんな死にかけの奴、連れ歩いて…」
ゴッ!
突如、陣野の顔の横から突き出されたコブシがオブトの顔面に炸裂した。
オブトは後ろに吹っ飛び、積み上げられたオブト達の上に落ちる。
「誰が死にかけだ…っ」
神崎はコブシを握りしめ、息を荒くしている。
「おい、マジで死ぬぞ!」
慌てる因幡に神崎は睨みつける。
「病人扱いしてんじゃねーよ! 毒如きで死んでたまるかっ! ゲホッ!!」
「血反吐吐いてる奴がなに言ってんのっ!!?」
口から血を吐き出した神崎に因幡が青ざめた顔でつっこむ。
「時間がない」
そう言って唯一の出入口である穴を通る陣野に続き、相沢も後ろからそれに続く。
「通っても大丈夫か、少し様子も見てくるから、いいコに待ってるんだな。後ろのサソリ人間の山、誰か起きそうになったら沈めといて」
「てめー、相沢、バカにしてんじゃ…、ゲホゲホッ」
「はいはいもう喋るな」
噎せる神崎に、因幡はその背中を擦ってなだめた。
「…好都合な場所だと思ったんだけどな…。あの狭い道じゃ、奴らの尻尾も封じれると…」
「得体の知れねえ敵相手によく思いつくよな、姫川は」
「ゲームに登場するモンスターと思えばな」
なるほど、と因幡は納得する。
数分後、神崎は穴の向こうを見つめながら呟く。
「…あいつら、遅いな」
声もかけてこない。
「トイレじゃねえの?」
「敵地で大便でもすんのか?」
3人はしばらく黙り、先に因幡が動き出す。
「様子見てくる」
「待てっ、明らかにコレなにかありましたフラグだろ!」
姫川は因幡の手首をつかんで止め、神崎は「オレ達も一緒に行く」と言いだした。
「一緒って…、ここ一本道だぞ! 嫌でも誰かが先陣切らないと…。…アレか?」
「アレだな」
3人は自分の右手の握りこぶしを左手のひらで包み、構える。
「「「じゃーんけーんっっ!!」」」
因幡、再び先頭。
「おまえらなんか嫌いだ。つうか、神崎絶対死にかけじゃないし;」
勝った時の神崎の喜びようは、小躍り寸前だったのを思い出す。
真ん中を歩く神崎は「文句言わずにとっとと行けよ」と促した。
その後ろにいる姫川は壁に手を触れ、違和感に気付いた。
(……この洞窟、けっこう脆いな)
岩の性質か、老朽か、少し触れただけで壁が削れた。
先頭の因幡はおそるおそる広い場所へと出てみた。
オブトの姿もなければ、相沢と陣野の姿も見えない。
「相沢ー、陣野ー…」
因幡は小さな声で呼んでみる。だが、返事は返ってこない。
「あいつら、どこに…」
姫川は辺りを見回し、ふと、天井を見上げた。
暗くてわかりにくいが、いくつか穴が空いている。
それを見て、先程の洞窟の脆さを思い出した。
「!! 穴に戻れ!!」
「「!?」」
因幡と神崎が声を張り上げた姫川に振り返ると同時に、天井の穴から次々とオブト達が飛び下りてきた。
「な!?」
「こいつら…っ!」
オブト達は背中合わせになった3人を囲み、尻尾の先にある毒針を突きつける。
「…待ち伏せだ…。罠にかかったのは…、オレ達の方だ…」
おそらく、陣野と相沢もこの罠にかかったのだろう。毒針の敵に多勢に無勢。
因幡達もヘタには動けない。
「捕えろ!!」
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