遅めのおやつを君と【♠夢】
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「…冬樹。本当に、いいのか?」
真っ赤な夕陽の差し込む教室に二人きり。
神妙な顔でデュースは問う。
「もちろん。遠慮しないで」
曇りのない瞳で有吉冬樹は答える。
「これは重罪だ…決して許されはしない…っ」
「大丈夫。デュースは真面目で通っているし、よしんばバレてしまっても少しくらい大目に見て貰えるでしょ。それに私だって同罪だから、罰は一緒に受けてあげる」
繰り返す彼へと、善良な人間を唆す悪魔のように冬樹は囁く。
「…わかった。そこまで言うなら僕も腹を括ろう…せーので、いくぞ」
観念したというように一つ溜息をついた後、デュースは真剣な面差しで頷いた。
刹那、強い風が吹き抜ける。風に煽られた白いカーテンが、共犯者たちを隠した。
「「せーのっ!」」
「――うん、美味しい。やっぱり、並んで買っただけあるね」
「美味い…夕食前に食べるお菓子がこんなに美味いなんて…っ!ああっ、これ以上食べたら夕食が入らなくなってしまう…出された食事を残すのも重罪なのに…止められない…っ!」
窓際の席に座って、オンボロ寮の監督生とデュース・スペードは甘いお菓子を頬張っていた。
それは、図書館での調べ物の帰りの事だ。
忘れ物をした事に気付き教室に戻ってみたら下校時間ギリギリまで補習を受けていたという(試験の結果が芳しくなかったらしい)デュースと行き会ったのだが…。
帰りの道中、彼の腹の虫があまりにうるさくて、見かねた冬樹が夜食にと買っておいたスコーンをお裾分けした、というわけだ。
ハーツラビュル寮の意味不明な寮則、第何条だったか…「夕食の直前におやつを食べてはならない」に抵触する、と渋るデュースだったが、目の前の魔の誘いには勝てなかったようだ。
「そんなにがっつかなくたって、スコーンは逃げないさ。喉に詰まるといけないから、ゆっくりお食べよ。あ、こっちのベリー入りのも美味しいよ?」
「止めろ!これ以上僕を誘惑するんじゃないっ!」
「トレイン先生の鬼の補習を耐え切ったんだ、これくらいのご褒美があったっていいじゃない。それに、規則はたまには破らなくちゃね」
ぺろりと舌を出して見せる冬樹に、デュースは呆れたような顔をする。
「お前、真面目そうに見えて意外とそういうとこあるよな…」
「いえいえ、それほどでも」
悪魔は再び、いたずらっぽく微笑むのだった。
その後あっさりと夕食前の間食がばれて、デュースは寮長に「首をはねろ(オフ・ウィズ・ユアヘッド)」をかけられ、彼を唆した冬樹はハーツラビュル寮の窓拭きを命じられたのは、また別の話……
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