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うげぇ

イラータは食堂で、いろいろと話してくれた。
親とはぐれて、イラータはがれきの都を泣きながら、さまよい歩いていたんだと。
イラータはまだ5歳だった。

右手が千切れかけたクマのぬいぐるみを抱いて、腹に感じていた空腹が死を予感させた頃。
少年だったトランクス若社長と出会った。

瓦礫の町に光がさしこみそうな、優しい笑みを浮かべて、少年トランクスはポケットの中にあった、ビスケットをくれた。

「俺がかならず人造人間を倒すから。それまで、がんばって。生きるんだ」

そう言って、みんなが避難しているビルの地下に連れて行ってくれたそうだ。



「きっと、私にとって勇者様だったのね。すごく不思議なの。トランクス社長が、私を抱えてね、空を飛んで、避難所に連れて行ってくれた覚えがあるのよ」

「それ。腹が減りすぎで、思い出、美化しちゃったんじゃあ、ないの?」

昼飯のスパゲティーをすすりながら言うと、イラータはクスクス笑った。
「そうかも。、、、でもとても感謝してる。きっと、みんなもそう」
スープ入りのスプーンを宙に停めて、イラータは明後日の方を向いていた。
懐かしむようにも見えるし、恋をしているようにも見える。

「ま。そのお美しい思い出のせいで、こうも陰湿になるなんて、皮肉だけどな」

私は髪をいじりながら、ため息をついた。
まだ半乾き。自分の髪がクセのつかない直毛で助かったわ。
そんな私を見て、イラータは困った顔をした。

「みんながトランクス社長に恋愛感情抱いてるってせいもあるけど、多分、一番の原因はお礼が言えないからだと思うの」

「助けてくれたお礼?」

イラータはコクリとうなずいた。

「 だって社長だもの。そう気安く話かけれるわけないし、社長も忙しいし。みんな歯がゆい思いをしているのよ」

「で、抜け駆けする奴がでないように、こうして嫌がらせするってか?、、、たくよー。せっかくの一張羅だってのに。私は社長に助けられてねっつーの」

ちなみに今、私はずぶ濡れのまま座っている。だから、椅子もしけしけ。そうじのおばちゃんが、きっと怒るだろーなぁ。

「ねぇ。ルンルンさんホントに大丈夫?遠慮しなくても、私の予備のスーツ貸すわよ?」

「い、いい。いい。遠慮しとく」

こいつのスーツって、絶対ピンク色とかそんな甘ーいやつだろ。
イラータの可愛らしいお顔立ちには似合うだろうけど、私が着たらギャグだよ。罰ゲームだよ。拷問だよ。
まちがいなく。

私の心を読んだのか、イラータがまた小さなくちびるを動かし笑った。
「そうよね。ルンルンさん美人だから、私のじゃあ、似合わないかも」

「、、、、は? 私?」

眉間にシワが寄ったのがわかった。
「あんた。病院行くことオススメするよ」

「そんなこと言って、私は騙されないもん。いったい、そのおじさんメガネどこから発掘したの?ホントに、もったいないと思うな」

イラータの細い指がメガネに伸びてきたので、私はその手首を握り、進行を妨げた。
ふんっと、鼻で笑う。

「私のことはいいんだよ。それより、早く行くぞ」

「えっ?」

「えっ?じゃないよ。ホラ、会社案内してくれって、お願いしたじゃねーか。ほれ、ダーッシュ!」

私は、自分とイラータの空になったお皿を左手に持って、イラータの手を引き、食堂を後にした。




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