襲撃

「はあ・・・・・・、はあ・・・・・・速すぎ・・・・・・・・・・」

 ひょっとしたらこの子たち、走る速度でタイムトラベルできるんじゃないかしら。
 
 ベンチでだるそうにしていると、チビトラが退屈そうに手を頭のうしろにやった。

「まったく。だらしないなぁ。言うとおりにしてやったんだから、感謝しろよなー」
「感謝、感激、雨、嵐。さすが! ふたりともすごいわー」

 棒読みで感謝と賞賛の言葉をのべると、悟天くんがふふくそうに頬をふくらませた。

「アイスキャンディ食べたかったなぁ・・・・・・」
「ごめんね、悟天くん。おわびに、すっごくおいしいのつくってあげるから」


「なあ悟天! せっかく逃げたんだから、今のうちに遊ぼうぜ!」

 チビトラが指さすのは、無料の大型遊具のあるキッズスペースだ。ホントに大きい。ずっと向こうまで続いて、迷子にならないのかな。

 悟天くんはコロッと機嫌をなおして、瞳を輝かせる。

「さんせーい!」
「おまえは休んでるんだろ? おれたちちゃんと戻ってくるから、そこにいろよ」
「はーい。いってらっしゃーい」

 手をふると、ふたりは子犬みたいに飛び跳ねて、遊具にかけていった。
 こうして見ていると、チビトラもかわいいなぁ

 ずっと向こうまで行ってしまったふたりをほのぼの見ていると、わたしの体にふっと影が落ちた。

 ゾワリと肌が粟立つ。次元の神スクラルの声がひびいた。

『いかん! サイヤ人から離れるでない! 見つかるぞ!』

 
 もう遅いかも・・・・・・。

「離れてっ!」

 わたしはにやけ顔をして近づいてきたおじさん二人を、懇親の力を込めて突き飛ばした。
 自分も横に飛ぶ。

 
 背後を見ると、座っていたベンチがぐちゃぐちゃに破壊されている。

 おじさんたちはしりもちをついて、呆然と破片になったベンチをながめていた。



 ****



 トランクスが小さな自分と、悟天の気を追って、ついたのは大型遊具のあるキッズスペースだった。

 ふたりは遊具のてっぺんで、遊んでいる。

「おーい! 俺と悟天くん!」

 さけんで手をふると、小さな自分が「あ! お兄ちゃんだ!」と指さしながら、舞空術で降りてきた。
 悟天も「あ、待ってー」とやってくる。

「探したよ。ずいぶん遠くまで走ったな」
「お、俺が逃げようって言い出したんじゃないからね! あの美波って子に頼まれたんだ!」
 
 トランクスは「わかってるよ」と苦笑いした。

「ところでその美波ちゃんは?」
「あっちで休んでるよ」

 小さな自分と悟天に案内されてベンチのある場所に向かうと、小さな自分が「あれっ?」とさけんだ。

 かけだして、こわれたベンチの近くにいるふたりの男の近くに寄る。

「ちょっと、おじさんたちー! ここにすわっていた女の子知らないー?」
「なんだ、このガキ」 
「あれー? ベンチが壊れちゃってる」
「ひょっとしてここにいた子に何かしたっ!?」
 
 トランクスは不審な雰囲気に眉を潜めた。
 
 トランクスに気づいた男たちが飛び上がって、ぶんぶんと首を横にふった。

「ち、ちげーよ! 俺たちじゃない」
「誘拐しようとしたら、逃げちまったんっすよね!」
「バ、バカッ」
 
 トンランクスは男たちの胸ぐらに手をのばして、つかみあげた。

「あの子はどこへ行った!? けがをさせたのか!?」

 トランクスの剣幕に押されながら、男たちはさらに激しく首をふる。

「お、俺たちはなにもしてねぇ! 話しかけようとしたら、急にガキが俺たちを突き飛ばして、走り出したんだ!
 そしたらベンチが粉々に」
「女の子はどこへ!?」
「あ、あっちだ」

 男が指さしたのは、関係者以外立ち入り禁止とかかれた扉だった。
 開けっ放しの扉から見えるのは、屋上につづく階段だった。
 
 ・・・・・・いやな予感がする。
「小さい俺! こいつらを捕まえていてくれ! 悟天くんはみんなを呼んでくるんだ」
「わ、わかった!」
「うん!」

 小さな自分が、男たちをひねりあげてるのを見届けると、トランクスは屋上につづく扉に飛びこんだ。


 

 
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