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襲撃

「ごめん。ホント。ごめん。美波ちゃん大丈夫?」


「大丈夫じゃない」



西の都一の巨大なショッピングセンター。

その屋上にある野外レストラン&カフェ「モヒモヒ」だったっけ?


白いプラスチック製の円卓に一本ずつ、青と白のストライプのパラソルがついていて、周辺には南国の草や木が植え込んである中々の癒やし空間。


私はその癒やしの中で、傷ついたハートを癒すべく、テーブルに突っ伏している。

小さい頃に、ドラゴンボールのキャラみたいに、空を自由自在に飛び回るのが、夢な時もあった。


でも、ハイスピードで飛んでくれたトランクスの飛行速度は、半端ない。

まぁ、トランクスからしてみれば、気を使って遅めに飛んでいたのかもしれないけど、絶叫マシン嫌いの私をグロッキーにするのは、十分なスピードだった。



もう、挨拶しにいった順番すら覚えてないし・・・。

「ほら、美波ちゃん俺の水も飲みな。」

「あ、ありがとうございます。」


そう言って水を差し出してくれたヤムチャだ。


私はありがたく、お冷やをいただくと、 クラクラする頭を持ち上げて、その水を飲み干した。

コップに口をつけながら、テーブルの、メンバーを見回す。

私の右からトランクス、チビトラ、ブルマ、ヤムチャ、クリリン、孫家のチチと、その膝の上に悟天が座っている。
ベジータは、結局こなかったみたい。
ブルマさんは「仕方が無いわね~。アイツ修行マニアだから」とカラカラわらっていたけど、多分わたしがいるからだろうな。

ついでに悟飯は今、オレンジハイスクールに行っていて、後から合流するそうだ。


氷が口に入らないようにちびちび飲む私を見て、ヤムチャがデレッと鼻の下を伸ばした。
「しかし、美波ちゃんかわいいなぁ!将来絶対、美人になるよ。今のうちにプロポーズしちゃおっかなぁ......なーんちゃって」

ヤムチャの許容範囲はいくつからいくつまでなんだろう。
私が適当に愛想笑いを浮かべていると、ブルマがヤムチャの耳を思いっきり引っぱった。
「いでででで!何すんだよ。ブルマ」
「あんたはほんっとーに、軽石並みに軽いんだから」

重いか軽いかの前に、ヤムチャの許容範囲がどうかと思うぞ、、、。

ヤムチャって昔は結構かっこよかったのになぁ。

苦笑いを浮かべていると、ヤムチャの横に座って、同じように笑っていたクリリンと目があった。

「あはは。またやってるよ。、、、しかし、時空の狭間にいたなんて、不思議だなー。住んでたのか?」

その質問は、昨日チビトラがしましたよ。クリリンさん。

私は首をブンブンと左右に振って、「えーと、、、あの」と口ごもった。

ベジータが言った「ふざけるな」と言うセリフが頭をよぎり、息が詰まる。


「言えない事情があるらしいんです」

するとトランクスが私の頭を撫でながら、Zチームのみんなに言ってくれた。

「でも、悪い子じゃないですし、あの怪物に狙われているようで、母さんの所に居てもらってるんです」


何だか、申し訳ない気分になってきた。

言えない、、、と言うより、自分でも信じきれていない事実を、むやみに人に話したくないだけ。

すごく勝手な理由だ。

それに「居てもらってる」じゃないし。

私はただのお邪魔虫と言うか、なんというか、、、。


ショボンとして、周りを見まわすと、今度はチチさんと目があった。

「そげな顔しちゃならねーぞ。美波ちゃん」

「そうさ。美波ちゃんが良い子な上、将来美人になるってことは、俺にだってよーくわかる」

ヤムチャの下心が若干こもった、フォローにまたブルマの手が伸びる。

耳を引っ張られないうちに、両手を上げたヤムチャが、ニコッと笑ってくれた。

「逆に、俺、ちょっとなつかしいぜ。その素姓が何も言えないってパターンさ。初めてトランクスに会った時と、そっくりだ」

「えっ?」

「おお。俺もそう思ってた」

クリリンもヤムチャの意見に賛同する。

思わず、トランクスを見上げると、彼も優しく微笑んでいた。

「実は、俺も初めは、みんなに自分の正体が言えなかったんだ。でもとても良くしてもらったよ」

「なつかしいわね~。私は初めからトランクスが悪い奴じゃないって信じてたわよ」

自慢げに言うブルマさんは、あのステキなウインクをバチコーンとよこしてきた。

「だから安心しなさい。この私が美波ちゃんは良い子だって宣言してるんだから」

うれしさ半分と、魅力的すぎるウインクに思わず、うつむいてしまった。

「あ、ありがとうございます」

背中のむずがゆい感じを誤魔化すために、テーブルに出されたハンバーグにパクつく。

「おっ、元気でたみたいだな」

クリリンが笑うと、みんなも笑顔に賛同するように笑った。



なんか思い出すなぁ。

ドラゴンボールを初めて読んだ時のこと。

強くて、明るくて、みんなの人柄に引き込まれた日のこと。

ドラゴンボールボールマニアと言われるほど、読みこんだ。

やっぱり、この人たちはあたたかい。

そう思ったら、私も自然に笑顔になっていた。
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