襲撃
トレーニングルームで父親の修行に付き合ったトランクスは、心地良い疲労感に浸りながら、短く息を吐いた。
朝日の差し込んだ長い廊下を歩きながら、さっきベジータに言われたことを思い返す。
『お前、動きがてんで鈍いぞ! ちんたら遊んでないで、平和でも修行ぐらいしておけ!!』
遊んでいたわけではないが、ぐうの音もでない。
自分の世界の平和を取り戻し、闘う事がなくなったトランクスは、皆を恐がらせると思い、昼に睡眠をとり、皆が寝静まった頃に町の復旧作業の手伝いをする、フクロウ生活を繰り返していた。
もちろんそんな生活の中に、修行などという言葉は、まったく存在しなかった。
体が鈍って当然だろう。
これから、鍛え直さなきゃな。
そんなことを考えていると、不意に手前のドアがスーッと開き、中からブルマが出てきた。
「あら、もぅ修行終わったの?早いわねぇ。ベジータの奴いつもなら、腹が鳴るまでトレーニングルームにこもってるのに」
ブルマに聞かれ、トランクスは苦笑した。
「父さんはまだ修行してますよ。最近俺、修行をサボってたから、体が鈍ってしまったようで・・・。修行の邪魔だと追い出されたところです」
「あら、なら丁度良かったわ。ちょっとこっち来てくれない?」
「・・・・?」
頭に「?」を浮かべ、促されるままドアをくぐると、そこには大小様々な機械が埋め尽くされていた。
ブルマの研究室だ。
「ちょっとこれ見て」
ブルマは部屋の中央にある、台座に半球体のケースが多いかぶされた機械を指差した。
ケースの中を覗き込むと、ホコリと見間違えてしまいそうな、小さな物体がある。
「・・・これは?」
「美波ちゃんの爪に挟まってた細胞よ。手当てした時に、見つけたの」
「多分、あの子を襲った怪物のものですね。」
「えぇ。首を絞められた時に、引っ掻いたんだと思うんだけど・・・ちょっと妙なのよ」
「妙・・・?」
トランクスが怪訝そうな顔をすると、ブルマは台座のスイッチをつけて接続されたタッチパネルを操作し始めた。
すると目の前の画面に、その細胞の情報が表示される。
「これよ。この細胞、物凄く硬度が高いのよ。ダイヤモンドみたいな鉱山物よりずっとね。・・・こんな硬い皮膚を爪で引っ掻いて、剥がせるなんて、普通ありえないわよね・・・」
「・・・・」
「ねぇ。昨日、美波ちゃんを警戒してたベジータの態度って、ひょっとして美波ちゃんに何か強い力があるから?あんたなら、わかるわよね?」
いつに無く真剣な顔つきのブルマ。
トランクスは美波から感じている気を思い返した。
「・・・はい。確かにすごい気を感じます。ちょっと変わってますが・・・」
「変わってる?」
ブルマにどう伝えたらいいのか、トランクスは少し首をかしげた。
「たしかに強い気なんですが、ひどく小さいんです」
「・・・イマイチ解らないわねぇ。どういう意味?」
「俺も今まで感じたことがないから、うまく言えないんですけど・・・。密度が濃いのに、規模は小さいって表現が一番あってるかな?」
「ふーん。」
白い細胞を覆っている半球体のケースに手を添え、何か考え込むように、俯いてしまったブルマ。
それと同時に、トランクスはブルマを安心させようと、笑みを作る。
「でも心配しなくても大丈夫ですよ。俺も父さんもいるし・・・それに決して悪い気ではありませんから。」
「・・・・・まっ!そうね。美波ちゃんが悪い子には見えないし。むしろベジータの方が、よっぽど悪人ズラで、悪い感じじゃない?」
「えっ!?・・・・・。い、いや。俺からはなんとも・・・」
気に病んでるかと思えば
、あっけらかんと笑いだして自分の旦那の愚痴に走る母に、トランクスは、はははと引きつり笑いをした。
そしてふと美波の気を感じようと、意識を集中してみた。
すぐにでも見失ってしまいそうな、小さく弱々しい気。
それは、たしかに邪悪な気じゃない。
だが、良い気とも言いがたい・・・。
例えるなら、どこまでも続く海のような。
どこまでも澄んだ空のような気・・・・。
空や海の天候が変わるように、ふとした拍子ですべてが変わってしまいそうな・・・・そんな感じだ。
(本当にあの子は一体何者なんだ?・・・それにダイヤモンドより固い体の怪物か・・・)
よく解らないが、嫌な予感が、トランクスの体をつらぬいていった。
朝日の差し込んだ長い廊下を歩きながら、さっきベジータに言われたことを思い返す。
『お前、動きがてんで鈍いぞ! ちんたら遊んでないで、平和でも修行ぐらいしておけ!!』
遊んでいたわけではないが、ぐうの音もでない。
自分の世界の平和を取り戻し、闘う事がなくなったトランクスは、皆を恐がらせると思い、昼に睡眠をとり、皆が寝静まった頃に町の復旧作業の手伝いをする、フクロウ生活を繰り返していた。
もちろんそんな生活の中に、修行などという言葉は、まったく存在しなかった。
体が鈍って当然だろう。
これから、鍛え直さなきゃな。
そんなことを考えていると、不意に手前のドアがスーッと開き、中からブルマが出てきた。
「あら、もぅ修行終わったの?早いわねぇ。ベジータの奴いつもなら、腹が鳴るまでトレーニングルームにこもってるのに」
ブルマに聞かれ、トランクスは苦笑した。
「父さんはまだ修行してますよ。最近俺、修行をサボってたから、体が鈍ってしまったようで・・・。修行の邪魔だと追い出されたところです」
「あら、なら丁度良かったわ。ちょっとこっち来てくれない?」
「・・・・?」
頭に「?」を浮かべ、促されるままドアをくぐると、そこには大小様々な機械が埋め尽くされていた。
ブルマの研究室だ。
「ちょっとこれ見て」
ブルマは部屋の中央にある、台座に半球体のケースが多いかぶされた機械を指差した。
ケースの中を覗き込むと、ホコリと見間違えてしまいそうな、小さな物体がある。
「・・・これは?」
「美波ちゃんの爪に挟まってた細胞よ。手当てした時に、見つけたの」
「多分、あの子を襲った怪物のものですね。」
「えぇ。首を絞められた時に、引っ掻いたんだと思うんだけど・・・ちょっと妙なのよ」
「妙・・・?」
トランクスが怪訝そうな顔をすると、ブルマは台座のスイッチをつけて接続されたタッチパネルを操作し始めた。
すると目の前の画面に、その細胞の情報が表示される。
「これよ。この細胞、物凄く硬度が高いのよ。ダイヤモンドみたいな鉱山物よりずっとね。・・・こんな硬い皮膚を爪で引っ掻いて、剥がせるなんて、普通ありえないわよね・・・」
「・・・・」
「ねぇ。昨日、美波ちゃんを警戒してたベジータの態度って、ひょっとして美波ちゃんに何か強い力があるから?あんたなら、わかるわよね?」
いつに無く真剣な顔つきのブルマ。
トランクスは美波から感じている気を思い返した。
「・・・はい。確かにすごい気を感じます。ちょっと変わってますが・・・」
「変わってる?」
ブルマにどう伝えたらいいのか、トランクスは少し首をかしげた。
「たしかに強い気なんですが、ひどく小さいんです」
「・・・イマイチ解らないわねぇ。どういう意味?」
「俺も今まで感じたことがないから、うまく言えないんですけど・・・。密度が濃いのに、規模は小さいって表現が一番あってるかな?」
「ふーん。」
白い細胞を覆っている半球体のケースに手を添え、何か考え込むように、俯いてしまったブルマ。
それと同時に、トランクスはブルマを安心させようと、笑みを作る。
「でも心配しなくても大丈夫ですよ。俺も父さんもいるし・・・それに決して悪い気ではありませんから。」
「・・・・・まっ!そうね。美波ちゃんが悪い子には見えないし。むしろベジータの方が、よっぽど悪人ズラで、悪い感じじゃない?」
「えっ!?・・・・・。い、いや。俺からはなんとも・・・」
気に病んでるかと思えば
、あっけらかんと笑いだして自分の旦那の愚痴に走る母に、トランクスは、はははと引きつり笑いをした。
そしてふと美波の気を感じようと、意識を集中してみた。
すぐにでも見失ってしまいそうな、小さく弱々しい気。
それは、たしかに邪悪な気じゃない。
だが、良い気とも言いがたい・・・。
例えるなら、どこまでも続く海のような。
どこまでも澄んだ空のような気・・・・。
空や海の天候が変わるように、ふとした拍子ですべてが変わってしまいそうな・・・・そんな感じだ。
(本当にあの子は一体何者なんだ?・・・それにダイヤモンドより固い体の怪物か・・・)
よく解らないが、嫌な予感が、トランクスの体をつらぬいていった。