平和の事実

「すいません。勝手に使ってしまって」


しかも土足で椅子の上に立ってます私。


慌てて、椅子についた砂を手で払って座り直した。

「それは全然構わないけど・・・。それより、寝れなかった?」

「は、はい。それで少し風にあたろうと思って。あの・・・ひょっとして、起こしちゃいました?」

「いや。俺も起きてたんだ。美波ちゃんが部屋から出たのがわかったんだけど・・・。なかなか戻ってこないから、気になってね」

「そうだったんですか・・・。気を使わせてしまって、すいません」

うーん。どうもトランクスの前だと、極端に恐縮してしまう。

人見知りする性格じゃないはずなのにな。

謝ってうつむく私に、トランクスは何とも言えない優しい顔をして、そして一瞬だけ淋しそうに私を見た。

「気が付いてる?会った時から、ずっと謝ってばっかりだよ」

「・・・ご、ごめんなさい」


「ほら、また」


「・・・あ"っ!!」

無意識に謝る口を、パッと手で塞ぐ。



その姿にトランクスは、プッと吹き出し、そのまま笑いだしてしまった。

「わ、笑わないでください!」

「ははは。ごめん。ごめん。あんまりオチ通りに謝るから、つい。・・・でも、謝るのはもう禁止にしよう」

と子供をあやすように、真っ赤な顔をした私の頭を撫でた。


「後、俺に敬語を使うのも禁止。それにさんも付けなくていいから」


私の目が点になる。


「そ、それは無理です!」

そして思いっきり首をブンブンと横に振って拒否した。


「だってトランクスさんは大人じゃないですか。・・・・・・・・・まぁ、人のこと言えないけど」

「えっ?」

「い、いえ何でも・・・。とにかく、トランクスさんは目上の人何だから、無理です!」


「美波ちゃんに敬語使われると、自分がすごく年食った気になるんだよ。まだ若いつもりなんだけど・・・。美波ちゃんから見たら、もうおじさんなのかな?」


「そ、そんなことは・・・じゃぁ、・・・わ、わかった。うん。敬語やめる。さんも付けない」

「そうしてもらえるとありがたい」


ニコリと笑うトランクス。
私もその笑顔につられて、笑顔を向ける。


「でも、おじさんって・・・どう見ても若いのに・・・。トラ・・・お兄ちゃん一体いくつなの?」


さんは付けなくていいと言われても、呼び捨ては流石にだめだろう・・・。

一瞬迷ったけど、とりあえず、お兄ちゃんと呼んでみた。

トランクスは少し考えるように、目を上に泳がせる。


「22かな・・・自分的には。ただ精神と時の間って言う・・・1日が一年になる空間があるんだけど、そこに2日ほど修行してたから、ホントは24歳なんだけどね・・・」

微妙なボーダーラインだけど、ほぼ同じ年か・・・。


私は極力、驚いたような顔を見せた。

「へぇ~。精神と時の間かぁ。・・・じゃぁ、そこで修業して、ご飯の時に言ってた、人造人間って奴を倒したの?」


ホントはZ戦士達がどんな戦いを繰り広げてきたのか、何もかも知ってるんだけど・・・。


私が、それを知ってたら、やっぱり変だもんね。


とにかく知らないフリをして、トランクスに質問を投げ掛けた。


「うん。そうだよ。」


「うわぁ~。すごいなぁ!!じゃぁ、お兄ちゃんはあっちの世界じゃぁ、ヒーローなんだ」

「・・・・」

トランクスは無言で笑みを向ける。


「・・・・??」

なんだろう。


胸にモヤモヤとした、不安が立ちこめる。


トランクスの表情。


寂しそうだ。



「え、えっと。えーと・・・あっ!・・・・・・お兄ちゃん、彼女いるの?」


「・・・・・へっ!?な、何で??」

唐突な上、あまりにもストレートな質問にトランクスが、あんぐりと口を開けて固まる。


その姿を見て、私もしまったと後悔した。


いくら困惑してたとは言え、何て直球な質問をしたんだ私は。


で、でも・・・・。



ちょっと気になるかもしれない。


私は内心、手に汗を握りながら、軽く唇を尖らせてだ。


「だ、だってお兄ちゃん悪い奴倒したんでしょ。きっと女の子がほっておかないから」


おまけに顔よし!
性格よし!
スタイルよし!

スリーポイント景気よく入ってる。


トランクスは頬を少し赤くして、咳払いすると、ポソリとした小さい声で呟いた。


「・・・いません。残念ながら・・・」




よ、よかったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!



心の中でガッツポーズをする。


「っと言ういか。女の子と話すこと事態ないかな」


「うそっ!・・・そんな格好いいのに!?」

ポロリと本音をもらし、また口を塞ぐ。

トランクスは恥ずかしそうに笑い、そしてまたあの淋しそうな顔をした。


「・・・みんな俺を怖がって近寄らないからね」


「えっ・・・?」

予想外の言葉に、私の表情は固まる。



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