イラータ、気になります!
「わたし、気になります」
人造人間の一件が解決して、ようやく平凡な日常が戻りつつあるうららかな午後。
カプセルコーポレーションの優秀な科学者となったイラータが、携帯をチェックしながらポツリとつぶやいた。
科学者として働き出した数日の間は、人造人間を生み出した罪の意識があったせいで、萎縮しきっていたが、トランクスやブルマの努力のおかげで、本来の気質をとり戻しつつある。
そんな彼女の一言に、ブルマとトランクスが顔を見合わせた。
商品の案件会議が終了し、ちょっと休憩がてら、社長室でお茶を飲んでいた時だった。
「あの、さっきの会議に何か疑問点があるんですか?」
トランクスの声に我に返るイラータ。あわてて、頭と両手を器用に振った。
「あ、すみません。ちがうんです。会議じゃなくて、その、ルンルンさんのことで気になることがあって・・・・・・」
「ルンルンさん、ですか?」
イラータは両手を胸の前に組み、垂れた瞳をきゅっと吊った。
「前々からすっごく気になってたんですけど、ルンルンさんって、苦手なものとか、不得意なこととか、弱点とか、あと、この情報を握られたら、下手にでるしかないー!みたいなものないんでしょうか?」
「イラータちゃんおもしろいこと考えるわねぇ。でもそれ、わたしも気になる! ・・・・・・トランクス、何かしらない?」
「い、いえ。というか、まだ、つきあったばかりですし、プライベートなことは、ぜんぜん・・・・・・」
イラータがかわいらしく両手をにぎり、縦に一回ふる。
「気になりますよね! わたし、あの手、この手で調べてるんですよ!」
「感のするどい人ですから、あまり変なことすると怒られますよ」
トランクスは苦笑いする。
「ちなみになにを調べたの?」
ブルマが湯飲みをおいて、前のめりになった。それにつられてイラータも前のめりになる。
「この前は、料理が苦手かと思って、ルンルンさんと一緒に、料理教室に行ってきました」
「あー・・・・・・、それはないかな」
話を聞く前に、トランクスが首を振る。
「先日、孤児院に顔を見せたら、お昼を作ってくれましたが、見事なものでしたよ」
貧乏でもうまいものが食べてーの。そうしたら嫌でもできるようになるよ、料理くらい・・・・・・がルンルンの言い分だった。
イラータは胸に手をあて、しくしくなくジェスチャーをした。
「はい、すごく上手でしたし、逆に説教されちゃいました。料理教室は趣味の料理だって、男においしいもの食わせたいなら、場数を踏めだそうで・・・・・・」
「ははは、弱点を突くつもりが、突かれちゃったわけね」
ブルマが笑う。
「その前は、家電量販店に行ってきました」
「家電量販店?」
「はい、最近西の都の家電量販店で、カラオケ器具がおかれたんですよ。ワンコインで一曲歌えるんです」
「今度は音痴かどうか?」
ブルマがくすくす笑う。
「あとあがり症なんじゃないかなって。売場の前においてあるだけなんで、公衆の面前で歌わないといけないんですよ」
「イラータさん、結構、人を追い込みますね・・・・・・」
「それで? それで? どうだったの?」
イラータは口元を押さえて、うなだれた。
「うっかり泣いちゃうくらい美声でした。人だかりができて、大歓声ですよ。ルンルンさんもノリノリでアンコールに答えてるし・・・・・・」
「すごいわねぇ」
イラータは「あ」と言って、トランクスを見た。
「そう言えばルンルンさんが、おもしろそうだから、今度、社長を度胸試しに歌わせるって言ってましたよ!」
「、、、、、なんてことをしてくれたんですか」
トランクスの嘆きの声も聞こえてないのか、イラータは「うーん、いったいなんなんでしょう」とうなる。
「方向音痴とか?・・・・・・ちがうわねぇ」
「高所恐怖症。暗所恐怖症。先端恐怖症!」
「ルンルンさんの対義語じゃない。それ」
「あーん! 気になる! 美人で背が高くて、スタイル抜群で、すきがないなんて、おかしい! 弱みが知りたいぁーい!」
イラータが叫んだそのときだった。
「ほー、弱みねぇ」と居るはずのない第三者の声が聞こえ、三人が飛び上がった。
おそるおそる扉の方を見ると、ルンルンが両手を腰にあて、仁王立ちしていた。
「妙に人を連れ回すと思ったら、そういうことか」
「る、ルルルルンルンさん? どうしてここに?」
イラータの声がひっくりかえる。
「居ちゃあ、悪いかよ」
「こ、孤児院は?」
「用事で、こっちにいるの」
「ノックくらいしなきゃ!」
「したよ。中の奴らが話しに夢中で聞いてなかっただけだ」
「そ、それは・・・・・・すみません」
ルンルンはのしのしと歩き、手元の書類をたたきつけるようにトランクスの前においた。
「この前、言われた孤児院の経費報告書だ」
「あ、ありがとうございます」
ルンルンはまた両手を腰にあて、トランクス、ブルマ、イラータを順番ににらみ、肩をすくめた。
「・・・・・・泳げない」
「えっ?」
「わたし、泳げないよ。泳ぐとかの前に、水中で目が開けられない。水遊びはうきわ必須だ」
「い、意外だ・・・・・・」
トランクスがポツリとつぶやく。
「あと、ひとりで寝るのが苦手。寝つけねーし、眠りが浅くなる。昔はボスとよく寝てたけど、今は・・・・・・」
ルンルンは眉間にしわをよせ、目線をそらすと言いにくそうに、つぶやく。
「う、うさぎとクマのぬいぐるみと・・・・・・寝てる」
何か反応しなきゃいけないと思いつつ、気まずい間が、長く空く。
ルンルンはきびすを返すと、社長室の扉をあけた。
頭を動かし、三人を見る。
「とろくさい詮索してねーで、働け重役ども」
ドスの利いた短いセリフを残して、乱暴に扉がしめられた。
三人は顔を見合わせる。
「ルンルンさんも、ふつうの人なんですね」
「トランクス。あんたぬいぐるみの代わりに、早くルンルンさんと寝てあげなさい」
ブルマの言葉にトランクスは頬を赤くしながら、不覚にもそうしたいと思ってしまった。
人造人間の一件が解決して、ようやく平凡な日常が戻りつつあるうららかな午後。
カプセルコーポレーションの優秀な科学者となったイラータが、携帯をチェックしながらポツリとつぶやいた。
科学者として働き出した数日の間は、人造人間を生み出した罪の意識があったせいで、萎縮しきっていたが、トランクスやブルマの努力のおかげで、本来の気質をとり戻しつつある。
そんな彼女の一言に、ブルマとトランクスが顔を見合わせた。
商品の案件会議が終了し、ちょっと休憩がてら、社長室でお茶を飲んでいた時だった。
「あの、さっきの会議に何か疑問点があるんですか?」
トランクスの声に我に返るイラータ。あわてて、頭と両手を器用に振った。
「あ、すみません。ちがうんです。会議じゃなくて、その、ルンルンさんのことで気になることがあって・・・・・・」
「ルンルンさん、ですか?」
イラータは両手を胸の前に組み、垂れた瞳をきゅっと吊った。
「前々からすっごく気になってたんですけど、ルンルンさんって、苦手なものとか、不得意なこととか、弱点とか、あと、この情報を握られたら、下手にでるしかないー!みたいなものないんでしょうか?」
「イラータちゃんおもしろいこと考えるわねぇ。でもそれ、わたしも気になる! ・・・・・・トランクス、何かしらない?」
「い、いえ。というか、まだ、つきあったばかりですし、プライベートなことは、ぜんぜん・・・・・・」
イラータがかわいらしく両手をにぎり、縦に一回ふる。
「気になりますよね! わたし、あの手、この手で調べてるんですよ!」
「感のするどい人ですから、あまり変なことすると怒られますよ」
トランクスは苦笑いする。
「ちなみになにを調べたの?」
ブルマが湯飲みをおいて、前のめりになった。それにつられてイラータも前のめりになる。
「この前は、料理が苦手かと思って、ルンルンさんと一緒に、料理教室に行ってきました」
「あー・・・・・・、それはないかな」
話を聞く前に、トランクスが首を振る。
「先日、孤児院に顔を見せたら、お昼を作ってくれましたが、見事なものでしたよ」
貧乏でもうまいものが食べてーの。そうしたら嫌でもできるようになるよ、料理くらい・・・・・・がルンルンの言い分だった。
イラータは胸に手をあて、しくしくなくジェスチャーをした。
「はい、すごく上手でしたし、逆に説教されちゃいました。料理教室は趣味の料理だって、男においしいもの食わせたいなら、場数を踏めだそうで・・・・・・」
「ははは、弱点を突くつもりが、突かれちゃったわけね」
ブルマが笑う。
「その前は、家電量販店に行ってきました」
「家電量販店?」
「はい、最近西の都の家電量販店で、カラオケ器具がおかれたんですよ。ワンコインで一曲歌えるんです」
「今度は音痴かどうか?」
ブルマがくすくす笑う。
「あとあがり症なんじゃないかなって。売場の前においてあるだけなんで、公衆の面前で歌わないといけないんですよ」
「イラータさん、結構、人を追い込みますね・・・・・・」
「それで? それで? どうだったの?」
イラータは口元を押さえて、うなだれた。
「うっかり泣いちゃうくらい美声でした。人だかりができて、大歓声ですよ。ルンルンさんもノリノリでアンコールに答えてるし・・・・・・」
「すごいわねぇ」
イラータは「あ」と言って、トランクスを見た。
「そう言えばルンルンさんが、おもしろそうだから、今度、社長を度胸試しに歌わせるって言ってましたよ!」
「、、、、、なんてことをしてくれたんですか」
トランクスの嘆きの声も聞こえてないのか、イラータは「うーん、いったいなんなんでしょう」とうなる。
「方向音痴とか?・・・・・・ちがうわねぇ」
「高所恐怖症。暗所恐怖症。先端恐怖症!」
「ルンルンさんの対義語じゃない。それ」
「あーん! 気になる! 美人で背が高くて、スタイル抜群で、すきがないなんて、おかしい! 弱みが知りたいぁーい!」
イラータが叫んだそのときだった。
「ほー、弱みねぇ」と居るはずのない第三者の声が聞こえ、三人が飛び上がった。
おそるおそる扉の方を見ると、ルンルンが両手を腰にあて、仁王立ちしていた。
「妙に人を連れ回すと思ったら、そういうことか」
「る、ルルルルンルンさん? どうしてここに?」
イラータの声がひっくりかえる。
「居ちゃあ、悪いかよ」
「こ、孤児院は?」
「用事で、こっちにいるの」
「ノックくらいしなきゃ!」
「したよ。中の奴らが話しに夢中で聞いてなかっただけだ」
「そ、それは・・・・・・すみません」
ルンルンはのしのしと歩き、手元の書類をたたきつけるようにトランクスの前においた。
「この前、言われた孤児院の経費報告書だ」
「あ、ありがとうございます」
ルンルンはまた両手を腰にあて、トランクス、ブルマ、イラータを順番ににらみ、肩をすくめた。
「・・・・・・泳げない」
「えっ?」
「わたし、泳げないよ。泳ぐとかの前に、水中で目が開けられない。水遊びはうきわ必須だ」
「い、意外だ・・・・・・」
トランクスがポツリとつぶやく。
「あと、ひとりで寝るのが苦手。寝つけねーし、眠りが浅くなる。昔はボスとよく寝てたけど、今は・・・・・・」
ルンルンは眉間にしわをよせ、目線をそらすと言いにくそうに、つぶやく。
「う、うさぎとクマのぬいぐるみと・・・・・・寝てる」
何か反応しなきゃいけないと思いつつ、気まずい間が、長く空く。
ルンルンはきびすを返すと、社長室の扉をあけた。
頭を動かし、三人を見る。
「とろくさい詮索してねーで、働け重役ども」
ドスの利いた短いセリフを残して、乱暴に扉がしめられた。
三人は顔を見合わせる。
「ルンルンさんも、ふつうの人なんですね」
「トランクス。あんたぬいぐるみの代わりに、早くルンルンさんと寝てあげなさい」
ブルマの言葉にトランクスは頬を赤くしながら、不覚にもそうしたいと思ってしまった。
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