騒動

悲鳴と銃撃音がした場所は、カプセルコーポレーションの入口にある広間だった。
中央に受付のカウンターがあって、品のいい観葉植物が置いてある場所、、、だったよな。たしか。
普通だったら、あそこで客を出迎えたり、接客や取引をしたりするんだろうけど。



私は広間に飛びこもうとする集団から離れて、物陰に隠れた。

案の定。自動ドアが開かれたとたん銃撃音が鳴り、「さわぐな! 両手を上げてこっちに入れ」と怒鳴り声が響いた。

おもに男性社員ばかりだったが、背中を丸め、へっぴり腰で広間に入って行く。

口パクで「バーカ」と言うと、社員の中から、小さい人影がこっちにダッシュで走ってきた。

私の腰ほどしかない、頭がツルツルでタヌキみたいな顔したおっさん。
私の上司のマルタだ。

私が隠れている死角に飛び込んだタヌキじじいに、ニヤリと笑いかけた。

「よっ、マルタさん。体が小さくてよかったな。奴ら気づかなかったみたいだ」

タヌキじじいは目を丸め、震えた声で言った。

「ル、ルンルン君か。君は無事だったのかい?」

どうやら、恐怖で私の失礼な態度も気にならないみたいだ。

私はタヌキじじいに視線を合わせるように、しゃがむと小声でたずねた。

「マルタさん。広間の中チラッと見えた? 中はどうなってんの?」

タヌキじじいはさらに目を大きくすると、パサパサした声をだした。
「銃を持った連中が、子どもたちを取り囲んでた。トランクス社長とブルマ会長が対峙していたよ」

「はーん。子どもを人質にとって、金目のものを奪おうってことか。つーか、何で子どもがいんのよ」
「お客様のお子さんだよ。キッズコーナーで遊んでいたところを、狙われたんだろう」

「おっ、なんだ。意外と頭いいんだな」

さみしくなった頭をペシペシ叩くと、さすがに腹が立ったらしい。

「や、やめんか!バカモン!」

頭皮まで赤くなったタヌキじじいに人差し指を立てた。

「静かにしろって。見つかる」

あわてて口をふさぐタヌキじじいを見て、くちびるから指を外した。

なるほどねぇ。
私らアガサと、似たようなことを考える奴らはいるもんだ。

私はスッと立ち上がると、イラータ曰くのおじさんメガネを外し、タヌキじじいに投げてよこした。

「マルタさん、これあずかってよ。私、ひと肌脱いでくるから」

「はっ? なっ、ちょっと待て!」

私は口角を上げて振り返った。
とたんにタヌキじじいが、ポカンとした顔をする。

私はタヌキじじいに片目を閉じた。

「だいじょーぶ。まかせとけ」

悪いけど、カプセルコーポレーションを潰すのは私だからね。

横どりされちゃあ、たまらない。

動きにくいジャケットを脱ぎ捨てると、私は広間の入口へ歩いて行った。


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