こんがらがる事情
若社長の家にもどると、会長さんが元気いっぱいに迎え入れてくれた。
「おっかえりー! 朝食できてるわよ。 さあ、二人とも座ってちょうだい。あ、今日は会社は臨時休業にしたから、ゆっくりしてかまわないわよ。物品も壊れてるし、メンテナンスするまで、営業できる状態でもないしね」
キラッキラな目だな。
これからどうイジクり回してやろうか考えている目だ。
「やだ。お母様ったら、いい笑顔~」
わたしが冷やかし混じりに言うと、若社長が真っ赤になって、怒りだした。
「あなたが誤解されるような言い方、するからですよっ!」
「わざとだし。あつーい夜だったろ? おかげさまで、腹がこんなんだよ」
わたしはタンクトップをまくり上げた。
「わっ」とさけんで、目をつぶろうとした若社長が、途中で止まって、顔をこわばらせる。
ついでに会長さんも目を丸くした。
殴られた跡が、見事な青あざになってるんだ、これが。
「ここまでひどくなっていたんですか?」
「こちとら女だぞ。内蔵はイってないみたいだったから、いいんだけど・・・・・・」
「ちょ、ちょっと!? どうしたのこれ! まさかトランクスが!?」
眉をつり上げ、私のウエストをわしづかみする会長さん。
ははは。元気ぃ。
「まあ、まあ。会長さん、落ち着こーよ。事情は、若社長が説明するからさ。とりあえず、食いながら話さない? わたし、腹が減ってるんだ」
ツカツカとダイニングに歩いて、どっかりとイスに腰かける。
サラダに、目玉焼きに、パン。ベーコンもこんがり焼けてる。めちゃくちゃうまそうだ。
よだれを垂らしてまっていると、若社長が「実は」と話を切り出した。
「あのホームパーティーの後、ルンルンさんが、カプセルコーポレーションに強盗に入って・・・・・・」
「ご、強盗!? ルンルンさんが・・・・・・」
私は肘をイスの背に引っかけて、上半身だけで振り返った。
「そそ。昼間の連中とは、ちがうけどね。私も盗み目的で、カプセルコーポレーションの社員になったわけ。途中までは順調だったんだけどねぇ。真面目な息子さんに見つかっちまって、ひどい目にあったよ」
ニヤッと笑って、腹をさする。それから肩をすくめた。
「これだけだったら、シンプルでよかったんだけどな。ちょっと、複雑なことになっちまって」
「複雑って、すでに頭が大混乱よ!」
「とりあえず座りましょう。説明しますから」
若社長は昨日の夜から、今朝、会社の前で起きたことを順を追って、説明した。
「あのマーク」の入った銃弾も見せる。
会長は弾を受け取ると、深く息を吐いた。
「レッドリボン軍とは、なかなか縁が切れないわなね」
会長がうんざりした様子で、弾丸を手のひらで転がした。
私はストローを口にくわえながら、くるくる回す。
「わたしをナンパした男が言ってたよ。すげーのがバックにいるから、仲間になった方が身のためだとよ。おまけに世界征服もできるんだってさ」
「でも断ったのよね?」
会長はほほ笑みながら言った。
「強引な男は嫌いじゃないけど、ライフル付きの口説き文句にゃあ、グッとこないね」
「そうよねー。あたしも同感」
わたしはほおづえをついて、会長を見た。
「天才発明家の会長さんから見て、それ、どう思う?」
ブルマ会長は目線を手のひらに戻しながら、「うーん」とうなった。
「はったりで片づけちゃうのは、不安ねぇ。強盗の言っていた、バックにいるやつっての、が気になるわね」
「まさか、また人造人間が?」
社長の表情がゆがむ。
会長は「まだわからないわ」と首を振って、いきなり立ち上がる。
両手をテーブルについて、わたしにグイッと顔を近づけた。
「ねえ! ルンルンさん!」
「お、おう」
「さっきの話からして、裏とか闇の関係に、顔が利きそうよね? 強盗の男が何者なのか、調べることができない?」
キラッキラなうえに、大変お美しいのはいいんだけど・・・・・・。
「ちょ、ちょっと待ってよ。会長さん。話を折るようで悪いんだけど、わたしの処分はどうなるわけ? 」
会長は目をパチパチと瞬きして、「あら、そうだったわねぇ」とあごに指をおいて、考えた。
「じゃあ、この一件に全面協力してくれたら、チャラにしてあげるわ。もちろん解決するまでよ」
わたしは「ふーん」と言いながら、足を組む。
「ありがたい話だけど、そんなユルく決めちゃって、大丈夫? わたしだって、負けず劣らず極悪人だからね。解決した瞬間、会長さんの頭に風穴が空くかもよ?」
親指と人差し指でピストルの形を作って、会長に突き立てると、怒りで顔をゆがませた若社長が立ち上がった。
会長はそれを手で制した。
「いいわよ。いつでもいらっしゃい。・・・・・・でも、あなたが根っからの悪い子には、見えないけどね」
「なんだそりゃ」
「女の感よ。感」
バチコーンとウインクする会長に、わたしは吹き出して、爆笑した。
「あははは。好きだよ、会長さんの性格」
目尻ににじんだ涙をふく。
「わたしから条件を追加していいかな?」
「なぁに?」
「この件を解決したら、わたしはまたカプセルコーポレーションを、潰しにくる。その時、わたしがヘマするまで、私のグループを潰さないでほしい」
会長はうなずいた。
「わかったわ。約束する」
わたしはニヤリと笑った。
「交渉成立だな。全面協力させてもらうよ。あの強盗については、仲間を使って、調べさせる」
会長は「やりぃ!」とガッツボーズした。
「ならこれも返却ってことね」
会長は、イスの横に置いてあった麻の袋を私によこした。
「お、わかってる~!」
私は二カッと笑って、袋を受け取った。
「おっかえりー! 朝食できてるわよ。 さあ、二人とも座ってちょうだい。あ、今日は会社は臨時休業にしたから、ゆっくりしてかまわないわよ。物品も壊れてるし、メンテナンスするまで、営業できる状態でもないしね」
キラッキラな目だな。
これからどうイジクり回してやろうか考えている目だ。
「やだ。お母様ったら、いい笑顔~」
わたしが冷やかし混じりに言うと、若社長が真っ赤になって、怒りだした。
「あなたが誤解されるような言い方、するからですよっ!」
「わざとだし。あつーい夜だったろ? おかげさまで、腹がこんなんだよ」
わたしはタンクトップをまくり上げた。
「わっ」とさけんで、目をつぶろうとした若社長が、途中で止まって、顔をこわばらせる。
ついでに会長さんも目を丸くした。
殴られた跡が、見事な青あざになってるんだ、これが。
「ここまでひどくなっていたんですか?」
「こちとら女だぞ。内蔵はイってないみたいだったから、いいんだけど・・・・・・」
「ちょ、ちょっと!? どうしたのこれ! まさかトランクスが!?」
眉をつり上げ、私のウエストをわしづかみする会長さん。
ははは。元気ぃ。
「まあ、まあ。会長さん、落ち着こーよ。事情は、若社長が説明するからさ。とりあえず、食いながら話さない? わたし、腹が減ってるんだ」
ツカツカとダイニングに歩いて、どっかりとイスに腰かける。
サラダに、目玉焼きに、パン。ベーコンもこんがり焼けてる。めちゃくちゃうまそうだ。
よだれを垂らしてまっていると、若社長が「実は」と話を切り出した。
「あのホームパーティーの後、ルンルンさんが、カプセルコーポレーションに強盗に入って・・・・・・」
「ご、強盗!? ルンルンさんが・・・・・・」
私は肘をイスの背に引っかけて、上半身だけで振り返った。
「そそ。昼間の連中とは、ちがうけどね。私も盗み目的で、カプセルコーポレーションの社員になったわけ。途中までは順調だったんだけどねぇ。真面目な息子さんに見つかっちまって、ひどい目にあったよ」
ニヤッと笑って、腹をさする。それから肩をすくめた。
「これだけだったら、シンプルでよかったんだけどな。ちょっと、複雑なことになっちまって」
「複雑って、すでに頭が大混乱よ!」
「とりあえず座りましょう。説明しますから」
若社長は昨日の夜から、今朝、会社の前で起きたことを順を追って、説明した。
「あのマーク」の入った銃弾も見せる。
会長は弾を受け取ると、深く息を吐いた。
「レッドリボン軍とは、なかなか縁が切れないわなね」
会長がうんざりした様子で、弾丸を手のひらで転がした。
私はストローを口にくわえながら、くるくる回す。
「わたしをナンパした男が言ってたよ。すげーのがバックにいるから、仲間になった方が身のためだとよ。おまけに世界征服もできるんだってさ」
「でも断ったのよね?」
会長はほほ笑みながら言った。
「強引な男は嫌いじゃないけど、ライフル付きの口説き文句にゃあ、グッとこないね」
「そうよねー。あたしも同感」
わたしはほおづえをついて、会長を見た。
「天才発明家の会長さんから見て、それ、どう思う?」
ブルマ会長は目線を手のひらに戻しながら、「うーん」とうなった。
「はったりで片づけちゃうのは、不安ねぇ。強盗の言っていた、バックにいるやつっての、が気になるわね」
「まさか、また人造人間が?」
社長の表情がゆがむ。
会長は「まだわからないわ」と首を振って、いきなり立ち上がる。
両手をテーブルについて、わたしにグイッと顔を近づけた。
「ねえ! ルンルンさん!」
「お、おう」
「さっきの話からして、裏とか闇の関係に、顔が利きそうよね? 強盗の男が何者なのか、調べることができない?」
キラッキラなうえに、大変お美しいのはいいんだけど・・・・・・。
「ちょ、ちょっと待ってよ。会長さん。話を折るようで悪いんだけど、わたしの処分はどうなるわけ? 」
会長は目をパチパチと瞬きして、「あら、そうだったわねぇ」とあごに指をおいて、考えた。
「じゃあ、この一件に全面協力してくれたら、チャラにしてあげるわ。もちろん解決するまでよ」
わたしは「ふーん」と言いながら、足を組む。
「ありがたい話だけど、そんなユルく決めちゃって、大丈夫? わたしだって、負けず劣らず極悪人だからね。解決した瞬間、会長さんの頭に風穴が空くかもよ?」
親指と人差し指でピストルの形を作って、会長に突き立てると、怒りで顔をゆがませた若社長が立ち上がった。
会長はそれを手で制した。
「いいわよ。いつでもいらっしゃい。・・・・・・でも、あなたが根っからの悪い子には、見えないけどね」
「なんだそりゃ」
「女の感よ。感」
バチコーンとウインクする会長に、わたしは吹き出して、爆笑した。
「あははは。好きだよ、会長さんの性格」
目尻ににじんだ涙をふく。
「わたしから条件を追加していいかな?」
「なぁに?」
「この件を解決したら、わたしはまたカプセルコーポレーションを、潰しにくる。その時、わたしがヘマするまで、私のグループを潰さないでほしい」
会長はうなずいた。
「わかったわ。約束する」
わたしはニヤリと笑った。
「交渉成立だな。全面協力させてもらうよ。あの強盗については、仲間を使って、調べさせる」
会長は「やりぃ!」とガッツボーズした。
「ならこれも返却ってことね」
会長は、イスの横に置いてあった麻の袋を私によこした。
「お、わかってる~!」
私は二カッと笑って、袋を受け取った。