良いこと
結局、感動感動感動! みたいな状態で、集まった社員を全員まねき、パーティーがはじまった。
今までしゃべれなかったぶんを、埋め合わせるように、社員が、社長をかこう。
しゃべる。笑う。うれし涙をこぼす。
ブルマ会長は「しばらくは質素な生活ね! もう、じゃんじゃん食べちゃいなさい」と良いながら、惜しみなく料理をだしていった。
わたしは一番大きいとり皿にありったけの料理を確保すると、静かな場所を求めて、テラスにあった白いイスとテーブルに腰かけた。
せいぜい盛り上がってるといいよ。カプセルコーポレーションの財産がなくなれば、あんたら全員、路頭に迷う羽目になるんだ。
チラリとイラータの笑った顔を見て、すぐ目をそらして、ワイングラスをあおった。
「ルンルンさん。どうぞ」
グラスが空になると、いいタイミングで酒瓶を持った若社長がやってきた。
「お、気が利く」
わたしはニヤッと笑って、お酌を受けた。ふつう逆だろ? と言う、野次の声は無視しとく
「ルンルンさん。ありがとうございました。お礼のために招いたはずなのに、またお礼をしないといけないですね」
わたしは赤みの残ったステーキをほおばって、「たいしたこと、してねーよ」と言った。
部屋にいる社員を一瞥して、グラスをかたむける。
「あんたのカリスマ性と、善行のたまものだろ? そこのイラータなんて、思い出を美化しすぎて、あんたが空を飛んでたなんて言ってたぜ」
「あ、あはは・・・・・」
「なに?」
「い、いえ! 別に。・・・・・・ただ、おれもみんなに大したことなんて、してないんです。結果的にそうなっただけで」
トランクス社長は空を仰ぐ。
「みんなに向けた励ました言葉の半分は、俺自身に言っていたもんですから。救援活動をしていたのも、きっと絶望しないためです。俺があきらめてしまわないように」
私は片眉をあげて、若社長を横目に見る。意味不明だけど、ツッコミはよしとくか。
「じゃあ、持ちつ持たれづでいいじゃねーの? あんたはあいつらに助けられて、みんなはあんたに救われたんだ。あの頃にはレアな話だよ。自分が生きるのに精一杯で、相手のことなんざ二の次の世界だったんだ。運が良かった。それだけだよ」
トランクス社長が整った笑みと一緒に「はい」とうなずく。
「ところでルンルンさんは、どこで武術を習ったんですか? 見事な立ち回りでおどろきました」
「我流」
私はきっぱりと言った。
「正式に習ったことはねーよ。人を殴るのも蹴るのも、生きるために必要だったから、覚えただけだ」
私は肩をすくめた。
「あいにく、私は運が悪い人間でね。自分の身は自分で守るしかなかった」
ワインを一口のんで、若社長を見る。どう返答を返して良いか困っているようだった。
「気にすんなよ。めずらしくない話だ」
チーズにかじりついてから、足を組み直した。
「わりぃな。酒のせいだから」
「いえ、俺の方こそすみません」
申し訳なさそうな顔をする若社長の背後に、みんなの姿が見える。
腹が立つくらい、まぶしく思える。
私は若社長をにらんだ。頭のてっぺんから、足の先まで視線を動かし、目を見て、ふっと笑う。
「でもちょっと思うよ。わたしも、もしあんたに出会っていたら、すこし人生が変わっていたかもな」
若社長が目を見開いて、口を開きかけた時だった。
甘ったるいピンクのワンピースが、すっげーいきおいで私につっこんできた。
「うわっ!」
「ルンルンしゃん大好きぃ~! あーいーしーてーるぅー!」
なんていって、腕にほおづりしてくる。おいおい。
「あんた、見かけどーりの酒癖だな。・・・・・・おい、だれだ! こんなになるまで酒のませたのは!」
部屋の奥をにらみつけると、ブルマ会長が「はあーい! わたしでぇーす!」と陽気に手をあげた。
こいつもそうとうできあがってんな。
周りの男性社員も赤ら顔で「ちょっとルンルンちゃん、お酌してよー。今日、初出勤でしょ? 先輩に、挨拶しないとー」と手をふってくる。
ああ、くそうっぜー。
「うるせーよ! 私にお酌してもらいたかったら、まず寝癖と加齢臭を直しやがれ!」
怒鳴ってから、トランクス社長にガンを飛ばす。
「おい、若社長! 責任持って、こいつを家まで送り届けろよ! こいつ恐ろしく脇が甘いから、他の男にぜったいまかすな!」
「は、はい! わかりました」
「怠慢犯したら、ぶっ飛ばすぞ!」
「は、はいっ!」
ブルマ会長がゲラゲラ笑う。
「もうルンルンさん最高! 私も抱きついていーい? ちゅーしちゃう!」
こっちの返事なんてまたずに、ブルマ会長が両手を広げてせまってくる。
「うわあああ、待て待て待て! 口を突き立てるなっての!」
「か、母さん! 飲み過ぎですよ!」
「うふふふ・・・・・・、ルンルンしゃーん。むにゃ」
「おい、寝るな! 重てぇ・・・・・・」
こうして社長邸のホームパーティーは盛り上がっていった。
今までしゃべれなかったぶんを、埋め合わせるように、社員が、社長をかこう。
しゃべる。笑う。うれし涙をこぼす。
ブルマ会長は「しばらくは質素な生活ね! もう、じゃんじゃん食べちゃいなさい」と良いながら、惜しみなく料理をだしていった。
わたしは一番大きいとり皿にありったけの料理を確保すると、静かな場所を求めて、テラスにあった白いイスとテーブルに腰かけた。
せいぜい盛り上がってるといいよ。カプセルコーポレーションの財産がなくなれば、あんたら全員、路頭に迷う羽目になるんだ。
チラリとイラータの笑った顔を見て、すぐ目をそらして、ワイングラスをあおった。
「ルンルンさん。どうぞ」
グラスが空になると、いいタイミングで酒瓶を持った若社長がやってきた。
「お、気が利く」
わたしはニヤッと笑って、お酌を受けた。ふつう逆だろ? と言う、野次の声は無視しとく
「ルンルンさん。ありがとうございました。お礼のために招いたはずなのに、またお礼をしないといけないですね」
わたしは赤みの残ったステーキをほおばって、「たいしたこと、してねーよ」と言った。
部屋にいる社員を一瞥して、グラスをかたむける。
「あんたのカリスマ性と、善行のたまものだろ? そこのイラータなんて、思い出を美化しすぎて、あんたが空を飛んでたなんて言ってたぜ」
「あ、あはは・・・・・」
「なに?」
「い、いえ! 別に。・・・・・・ただ、おれもみんなに大したことなんて、してないんです。結果的にそうなっただけで」
トランクス社長は空を仰ぐ。
「みんなに向けた励ました言葉の半分は、俺自身に言っていたもんですから。救援活動をしていたのも、きっと絶望しないためです。俺があきらめてしまわないように」
私は片眉をあげて、若社長を横目に見る。意味不明だけど、ツッコミはよしとくか。
「じゃあ、持ちつ持たれづでいいじゃねーの? あんたはあいつらに助けられて、みんなはあんたに救われたんだ。あの頃にはレアな話だよ。自分が生きるのに精一杯で、相手のことなんざ二の次の世界だったんだ。運が良かった。それだけだよ」
トランクス社長が整った笑みと一緒に「はい」とうなずく。
「ところでルンルンさんは、どこで武術を習ったんですか? 見事な立ち回りでおどろきました」
「我流」
私はきっぱりと言った。
「正式に習ったことはねーよ。人を殴るのも蹴るのも、生きるために必要だったから、覚えただけだ」
私は肩をすくめた。
「あいにく、私は運が悪い人間でね。自分の身は自分で守るしかなかった」
ワインを一口のんで、若社長を見る。どう返答を返して良いか困っているようだった。
「気にすんなよ。めずらしくない話だ」
チーズにかじりついてから、足を組み直した。
「わりぃな。酒のせいだから」
「いえ、俺の方こそすみません」
申し訳なさそうな顔をする若社長の背後に、みんなの姿が見える。
腹が立つくらい、まぶしく思える。
私は若社長をにらんだ。頭のてっぺんから、足の先まで視線を動かし、目を見て、ふっと笑う。
「でもちょっと思うよ。わたしも、もしあんたに出会っていたら、すこし人生が変わっていたかもな」
若社長が目を見開いて、口を開きかけた時だった。
甘ったるいピンクのワンピースが、すっげーいきおいで私につっこんできた。
「うわっ!」
「ルンルンしゃん大好きぃ~! あーいーしーてーるぅー!」
なんていって、腕にほおづりしてくる。おいおい。
「あんた、見かけどーりの酒癖だな。・・・・・・おい、だれだ! こんなになるまで酒のませたのは!」
部屋の奥をにらみつけると、ブルマ会長が「はあーい! わたしでぇーす!」と陽気に手をあげた。
こいつもそうとうできあがってんな。
周りの男性社員も赤ら顔で「ちょっとルンルンちゃん、お酌してよー。今日、初出勤でしょ? 先輩に、挨拶しないとー」と手をふってくる。
ああ、くそうっぜー。
「うるせーよ! 私にお酌してもらいたかったら、まず寝癖と加齢臭を直しやがれ!」
怒鳴ってから、トランクス社長にガンを飛ばす。
「おい、若社長! 責任持って、こいつを家まで送り届けろよ! こいつ恐ろしく脇が甘いから、他の男にぜったいまかすな!」
「は、はい! わかりました」
「怠慢犯したら、ぶっ飛ばすぞ!」
「は、はいっ!」
ブルマ会長がゲラゲラ笑う。
「もうルンルンさん最高! 私も抱きついていーい? ちゅーしちゃう!」
こっちの返事なんてまたずに、ブルマ会長が両手を広げてせまってくる。
「うわあああ、待て待て待て! 口を突き立てるなっての!」
「か、母さん! 飲み過ぎですよ!」
「うふふふ・・・・・・、ルンルンしゃーん。むにゃ」
「おい、寝るな! 重てぇ・・・・・・」
こうして社長邸のホームパーティーは盛り上がっていった。