良いこと

 弾丸があたって、ガラスは広間のあちこちに散らばっているし、防犯装置のたぐいはしこたま壊されたわけで。
 ・・・・・・当然、仕事になるわけもなく、カプセルコーポレーションは臨時休業をとることになった。
 
 あとはひたすら、みんなでガラスの破片や破損した物品をかたづけだ。

 それでも早めに終わったから、よし、か。
 仕事が終わると、わたしは、いったんアガサのアジトに帰った。

 西の都じゃあ、治安が悪すぎて、ふつうの人間はだれも寄りつかない場所にある。
 復旧も遅れていて、人造人間があばれまわっていたころと、ほとんどかわっていない。
 無人だらけのビルディングには、なにもないっつーのに、ビル風がチリもほこりも、ぜんぶもっていっちまう。

 私はひからびたツタ植物がはりつく自動ドアをくぐり、今日の強盗の件。防犯のたぐいは全部破壊した件を、ボスと仲間に報告した。

「おまえは仕事が早いな」

 ボスが感心したようすで言う。

「運良く、バカが強盗に入ってくれたおかげだよ。これで金が盗めれば、カプセルコーポレーションとはおさらばだ」

 腕を組んで、ゴツい体をしたボスを見上げていると、ボスはゲジゲジの眉を垂らした。

「なあ。ルンルン。もしもの話だがな。もしもだぞ? もし、カプセルコーポレーションをつぶすことができなかったら、おめぇ、アガサから抜けて、そのまま働いたらどうだ?」
「はっ? なんだそりぁ」  
「俺たちは、顔もガラも悪りぃからな。今さら全うに生きるなんて無理だ。でも、おめぇは見てくれがいい。ふつうに生きていけるなら、それにこしたことはねーんだよ」
「かんべんしてくれよ」

 仲間をぐるりと見回すと、ボスと似たり寄ったりな顔をしている。そろいもそろって、バカばかりだ。
 わたしはボスに背を向けた。

「わたしだって、全うに生きるなんて、無理だね。今日一日で、よくわかったよ」
 
鼻で笑って「じゃあ、出かけてくるよ」と手をふった。
 
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