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「───さん!ヒヅキさん!!」
朦朧とした意識の中、大好きな声が聞こえた。どうやら私を呼んでいるみたいだ。でもその声はいつもより焦っていて、それが気になって口を開こうとするが思うように力が入らない。
「うぅん…?」
意識がはっきりしてくると、次第に消毒液と薬が混ざったような匂いが鼻の奥をくすぐった。
ゆっくり目を開けると見慣れた診療所の天井。私は何故か病衣を着ていて、左腕には点滴の針が刺さっている。混乱しながら先程の声が聞こえた方向に目を動かすと、そこには先生が。
「ああ、良かった!ヒヅキさん、昨日の昼からずっと眠っていたのですよ」
眠っていた?昨日の昼から?そういえば先生の診療所に手作りのドーナツを差し入れに持ってきたような…。
「…診療所の玄関でぶっ倒れたの、覚えてます?」
先生のその一言で全部思い出した。
いつも通り先生に差し入れを持って行こうとしたら、外が思ったよりも暑くて。いつの間にか汗が止まらなくなって、喉の乾きも酷くなっていた。でもタオルも水も持っていなかったし、診療所は既に見えていたから辛さに耐えながら歩を進めた。そしてやっと診療所に着いた時──────────。
『先生、差し入れで…す…』
診療所のドアを開けると、奥の方で作業している先生が居た。暑さのせいか視界がぼんやりとしていて、私の方を振り向く先生はいつもよりかっこよく見えた。
そして診療所に着いた事に安心したと同時に、足に力が入らず床に座り込んでしまった。
『おや、ありがとうございます。今は手が離せないのでそこの机に……ってヒヅキさん!?ヒヅキさん!!』
先生、そんなに大声出すと患者さん達がびっくりしますよ。
そんな事を言おうとしたけれど、完全に身体中の力が抜けていたので一言も発することができなかった。
(近くで見ると…もっとかっこいいなぁ…)
なんて思いながら、私は意識を手放したのだった──────────。
「その節はご迷惑をおかけしました…」
「いえいえ、迷惑だなんて…。そんなに気にしないでください」
先生の為に差し入れを持ってきたはずが、先生に助けられてしまった。その事実に恥ずかしさと申し訳なさが込み上げてきた。
先生の手伝いをして、一緒にドーナツを食べて…そんな計画もあったのに。…ん?ドーナツ?
「あー!先生、私が持ってきたドーナツは!?」
あんな猛暑の中持ってきたんだから、痛むどころか腐っていてもおかしくない。
「ドーナツ…?ああ、あの差し入れならもう食べちゃいました!」
「え!?お腹壊してないですか?傷んでたり腐ってたりしませんでした…?」
「無問題!ヒヅキさんが保冷バッグに入れてましたから、いつも通り美味しかったですよ。わざわざありがとうございます」
「良かったぁ…」
私はほっと胸を撫でおろした。そういえば氷と一緒に保冷バッグに入れてたんだっけ。
「…もう少し体調が落ち着いたら、二人でドーナツ作りましょう」
「良いんですか!?あ、でも先生は診察とか調剤とかオペとか、色々忙しくないですか…?」
過去の罪を償う為に人を救っている今の先生には、休日という概念があるのだろうか。前に診療所に来た時なんて徹夜で患者さんのカルテを書いていたし…。
「それなら大丈夫!ヒヅキさんが眠っている間に終わらせましたから」
「え?ぜ、全部ですか?」
「はい、全部」
「……」
なんて人なんだ…。戦闘時に到底人間業とは思えない技を披露してる先生なら、この程度はおかしくはないのかもしれないが。
試しに受付の方を見てみると、お昼なのに患者さんはもう誰も居なかった。先生の机の上にあるカルテも綺麗に束ねられている。どうやら先生が言った事は本当らしい。
「そろそろ点滴も終わりそうですね。もう元気そうですし、一度お水飲んでみましょうか」
さっき聞いた事が衝撃的過ぎて呆然となっている私を他所に、先生は水を取りに行った。
まあ、先生の事だし…これぐらいで動揺してたらキリが無いか…。これ以上深く考えないようにしようと決めた時、先生が戻ってきた。
「お水持ってきました~。自分で飲めますか?口移ししましょうか?」
「自分で飲めます!」
「まだ回復途中なので、無理しなくても良いんですよ?」
「大丈夫ですから!!」
先生は頑なに口移しを提案してきたが、私自分で飲むの一点張りで対抗した。きっと私の反応を見て楽しんでいるのだろう。
先生の手から水の入ったコップを半強制的に奪って水を飲み込もうとすると、先生は何かを思い出したように「そういえば、」と口を開いた。
「ヒヅキさん、診療所に来た時に私の方を見てかっこいいとか言いませんでした?」
「ぶはっ!!…ゲホッ!ゲホッ…」
突然の事でむせ込んでしまった。
そんな事は言った記憶なんて……あっ。
(近くで見ると…もっとかっこいいなぁ…)
あれだろうか。決して声に出したつもりは無いけど。
「『近くで見ると…もっとかっこいいなぁ…』とか何とか言ってた気がするのですが」
どうやら言っていたらしい。
「それは…気の所為ですよ」
「あら、それは失敬。私の勘違いでしたか」
台詞とは裏腹に、袋越しからも分かるほどに嬉しそうな表情をしている先生。心做しか声も楽しそうである。
恥ずかしさを紛らわそうと、また改めて水を口に含んだ。ここは一つ、仕返ししてやりたい。
水を飲み込み、私は再び口を開いた。
「先生は紙袋被ったままで息苦しくないですか?他に患者さん居ませんし、今ぐらい外しても良いと思いますよ」
「気持ちは有難いのですが、そういう訳にもいきません」
ですよね。先生はそう答えますよね。じゃあ、仕返しさせてもらいますよ。
「そうですか…。せっかくかっこいい顔してるのに、勿体ない…」
「え?ヒヅキさん、いつ私の顔を…?」
「さぁ?いつでしょうね?」
そう言って微笑むと、先生は途端に慌て出した。その姿は本当に見ていて面白い。
勿論私は先生の顔全体は知らない。食べる時にちらりと見える口元と袋の穴から片目を見た程度で、今言った事も仕返しの為の嘘である。
「まだ体がだるいので私はもう寝ますね。先生、おやすみなさ~い」
私は再びベッドに仰向けに横たわり、目を閉じた。
「ちょ、ちょっと!ヒヅキさん!?」
先生の声は私が起きた時よりも焦っていて、気を抜くと笑いそうになってしまう。
これはからかった先生への仕返しだし、起きた時に嘘だって伝えればいいよね。私はそう思いながら眠りについた。
起きた時に先生に顔の事を問い詰められたのは、また別の話である。
「───さん!ヒヅキさん!!」
朦朧とした意識の中、大好きな声が聞こえた。どうやら私を呼んでいるみたいだ。でもその声はいつもより焦っていて、それが気になって口を開こうとするが思うように力が入らない。
「うぅん…?」
意識がはっきりしてくると、次第に消毒液と薬が混ざったような匂いが鼻の奥をくすぐった。
ゆっくり目を開けると見慣れた診療所の天井。私は何故か病衣を着ていて、左腕には点滴の針が刺さっている。混乱しながら先程の声が聞こえた方向に目を動かすと、そこには先生が。
「ああ、良かった!ヒヅキさん、昨日の昼からずっと眠っていたのですよ」
眠っていた?昨日の昼から?そういえば先生の診療所に手作りのドーナツを差し入れに持ってきたような…。
「…診療所の玄関でぶっ倒れたの、覚えてます?」
先生のその一言で全部思い出した。
いつも通り先生に差し入れを持って行こうとしたら、外が思ったよりも暑くて。いつの間にか汗が止まらなくなって、喉の乾きも酷くなっていた。でもタオルも水も持っていなかったし、診療所は既に見えていたから辛さに耐えながら歩を進めた。そしてやっと診療所に着いた時──────────。
『先生、差し入れで…す…』
診療所のドアを開けると、奥の方で作業している先生が居た。暑さのせいか視界がぼんやりとしていて、私の方を振り向く先生はいつもよりかっこよく見えた。
そして診療所に着いた事に安心したと同時に、足に力が入らず床に座り込んでしまった。
『おや、ありがとうございます。今は手が離せないのでそこの机に……ってヒヅキさん!?ヒヅキさん!!』
先生、そんなに大声出すと患者さん達がびっくりしますよ。
そんな事を言おうとしたけれど、完全に身体中の力が抜けていたので一言も発することができなかった。
(近くで見ると…もっとかっこいいなぁ…)
なんて思いながら、私は意識を手放したのだった──────────。
「その節はご迷惑をおかけしました…」
「いえいえ、迷惑だなんて…。そんなに気にしないでください」
先生の為に差し入れを持ってきたはずが、先生に助けられてしまった。その事実に恥ずかしさと申し訳なさが込み上げてきた。
先生の手伝いをして、一緒にドーナツを食べて…そんな計画もあったのに。…ん?ドーナツ?
「あー!先生、私が持ってきたドーナツは!?」
あんな猛暑の中持ってきたんだから、痛むどころか腐っていてもおかしくない。
「ドーナツ…?ああ、あの差し入れならもう食べちゃいました!」
「え!?お腹壊してないですか?傷んでたり腐ってたりしませんでした…?」
「無問題!ヒヅキさんが保冷バッグに入れてましたから、いつも通り美味しかったですよ。わざわざありがとうございます」
「良かったぁ…」
私はほっと胸を撫でおろした。そういえば氷と一緒に保冷バッグに入れてたんだっけ。
「…もう少し体調が落ち着いたら、二人でドーナツ作りましょう」
「良いんですか!?あ、でも先生は診察とか調剤とかオペとか、色々忙しくないですか…?」
過去の罪を償う為に人を救っている今の先生には、休日という概念があるのだろうか。前に診療所に来た時なんて徹夜で患者さんのカルテを書いていたし…。
「それなら大丈夫!ヒヅキさんが眠っている間に終わらせましたから」
「え?ぜ、全部ですか?」
「はい、全部」
「……」
なんて人なんだ…。戦闘時に到底人間業とは思えない技を披露してる先生なら、この程度はおかしくはないのかもしれないが。
試しに受付の方を見てみると、お昼なのに患者さんはもう誰も居なかった。先生の机の上にあるカルテも綺麗に束ねられている。どうやら先生が言った事は本当らしい。
「そろそろ点滴も終わりそうですね。もう元気そうですし、一度お水飲んでみましょうか」
さっき聞いた事が衝撃的過ぎて呆然となっている私を他所に、先生は水を取りに行った。
まあ、先生の事だし…これぐらいで動揺してたらキリが無いか…。これ以上深く考えないようにしようと決めた時、先生が戻ってきた。
「お水持ってきました~。自分で飲めますか?口移ししましょうか?」
「自分で飲めます!」
「まだ回復途中なので、無理しなくても良いんですよ?」
「大丈夫ですから!!」
先生は頑なに口移しを提案してきたが、私自分で飲むの一点張りで対抗した。きっと私の反応を見て楽しんでいるのだろう。
先生の手から水の入ったコップを半強制的に奪って水を飲み込もうとすると、先生は何かを思い出したように「そういえば、」と口を開いた。
「ヒヅキさん、診療所に来た時に私の方を見てかっこいいとか言いませんでした?」
「ぶはっ!!…ゲホッ!ゲホッ…」
突然の事でむせ込んでしまった。
そんな事は言った記憶なんて……あっ。
(近くで見ると…もっとかっこいいなぁ…)
あれだろうか。決して声に出したつもりは無いけど。
「『近くで見ると…もっとかっこいいなぁ…』とか何とか言ってた気がするのですが」
どうやら言っていたらしい。
「それは…気の所為ですよ」
「あら、それは失敬。私の勘違いでしたか」
台詞とは裏腹に、袋越しからも分かるほどに嬉しそうな表情をしている先生。心做しか声も楽しそうである。
恥ずかしさを紛らわそうと、また改めて水を口に含んだ。ここは一つ、仕返ししてやりたい。
水を飲み込み、私は再び口を開いた。
「先生は紙袋被ったままで息苦しくないですか?他に患者さん居ませんし、今ぐらい外しても良いと思いますよ」
「気持ちは有難いのですが、そういう訳にもいきません」
ですよね。先生はそう答えますよね。じゃあ、仕返しさせてもらいますよ。
「そうですか…。せっかくかっこいい顔してるのに、勿体ない…」
「え?ヒヅキさん、いつ私の顔を…?」
「さぁ?いつでしょうね?」
そう言って微笑むと、先生は途端に慌て出した。その姿は本当に見ていて面白い。
勿論私は先生の顔全体は知らない。食べる時にちらりと見える口元と袋の穴から片目を見た程度で、今言った事も仕返しの為の嘘である。
「まだ体がだるいので私はもう寝ますね。先生、おやすみなさ~い」
私は再びベッドに仰向けに横たわり、目を閉じた。
「ちょ、ちょっと!ヒヅキさん!?」
先生の声は私が起きた時よりも焦っていて、気を抜くと笑いそうになってしまう。
これはからかった先生への仕返しだし、起きた時に嘘だって伝えればいいよね。私はそう思いながら眠りについた。
起きた時に先生に顔の事を問い詰められたのは、また別の話である。
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