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私たちも大人になりました。



保田「今日から5階南病棟で働かせていただきます、保田美優と申します。ご指導、よろしくお願いいたします!」


そう元気に挨拶してくれた新人ナースの保田さんは、私の指導担当の子だ。とてもハキハキしていて元気もいい。

「こちらこそ、よろしくお願いしますね、保田さん!」

先輩らしくできるだろうか…そんな不安をもちながら保田さんに業務について説明していく。


病院内はオリエンテーション時に一通り回っているようなので、病棟内を詳しく案内しながら、すれ違う患者さんに新人さんの紹介をしていった。


一通り終えたところでナースステーションへ戻ると、かなちゃんがすごい剣幕で迫ってきた。

かな「きいてきいて‼︎さっきものすーっごいイケメンの研修医が来たの‼︎もうやばかったんだから!」

「へ、へぇ〜。それはよかったね。」

かな「何その反応。ほんっと三月ってイケメンに興味ないよね?ってか男に興味あるの?」

「別に興味がないわけじゃないんだけどね」

かな「三月は可愛いのにもったいないなぁ。そんなんだから何年も彼氏できないんだよ?」

「ちょっと!こんなところでやめてよー!」

ナースステーションでこんな話をしているから、周りの先輩や保田さんにまでくすくす笑われる始末だ。でも、事実だから言い返せない。




私はまだ高校生のころからなにも変わっていないんだ。彼ら以上にカッコいい人達はいない。あんなにバスケに真剣に向き合う彼らの顔が忘れられなくて、それを超える人なんていなかった。




「さぁ、続き説明するね!」

私は考えないようにしていた。
あの頃の思い出に蓋をしていた。
それなのに…




?「…っ‼︎まって‼︎‼︎」

ナースステーションを出てすぐのところで勢いよく腕を掴まれたかと思うと、くるりと体が後ろに向いて、そのまま誰かの腕の中に収まっていた。



「?!!!」

?「会いたかったよ、三月」



周りからの悲鳴ともとれる黄色い声にかき消されそうになったが、その声はよく知っている声だった。



「なん、で?あや…ちゃん?」

あや「俺のこと、忘れちゃったの?」

そこにいたのは神山亞哉だった。
忘れるわけないよ。そう言いかけたとき、かなちゃんや周りにいた看護師仲間にあやちゃんから引き剥がされて取り囲まれた。


かな「どうゆうことなの三月!さっき言ってたイケメンドクターってあの人の事よ!!」

看護師A「きゃー!どんな関係?!三月ちゃん男の子との話とか聞いたことなかったからびっくりよ!」

看護師B「どーゆうことか説明してよー!」

ありとあらゆる声が届く中、そこへ師長の大きな声が響く。


師長「はいはい、仕事をまずしなさい!神山先生も、ここはアメリカじゃないんだからいきなり抱きついたら周りがびっくりしますよ?」

あや「すみません。でも、アメリカ帰りだからとかじゃありませんよ。僕は挨拶だけの関係でそんなこと、絶対しません。」

全員「「きゃーーーっ‼︎」」

師長は横で呆気にとられている中、周りの看護師たちはアイドルでも見たかのようにしばらくあやちゃんの周りで騒いでいた。


しばらくして師長が医局まであやちゃんを送っていった。
私たちもさっきの騒ぎで仕事ができていなかった為、聞きたいことはあるが後にしといてやろう、とでも言わんばかりの目で見られながら各自仕事に戻った。



あやちゃんが去り際に「また後でね」と言った。


私はまだ夢の中なのだろうか…
心臓の音が、うるさい。



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