short
「アオイ、チリちゃんアオイの事ごっつ好きやで」
それはチリの切実な心の声でもあった。しかし、幼い少女に言うにはあまりにも大きすぎる感情で、できればいつものように「私もチリちゃんのことだーい好きだよ!」と無邪気に返してくれたら、適当に流せてしまってくれたらと思わずにはいられなかった。
しかし、チリの声があまりにも切実に絞り出すように言葉を出すものだからか、アオイの返事はなく、チリはアオイの顔を見られないまま、自分の爪先を見つめているしかなかった。
「チリちゃん。しゃがんでくれますか?」
比較的明るい声だった。ああ、これはいつものように笑って何事もなく通りすぎるんだとチリは内心ほっとして、言われるがままにしゃがむ。ちょうどアオイの胸辺りに目線が行った。
アオイはそっとチリの両頬に手を添えるとクイと自分の方へ上向かせた。
「チリちゃんそれはね、大人の勘違いだよ」
チリは呆気に取られた。大人の自分がアオイに"それは子供の勘違いだ"と言うならまだしも、逆を言われるとは思いもしなかった。
「きっとチリちゃんは、小さくて後をちょこちょこ着いてくる子供に愛着がわいただけなの、だからねそんな悲しそうな顔しなくていいんだよ」
アオイは事も無げにそう言い放った。穏やかな声音のはずなのに、その視線はどこか冷たく感じて、チリは焦燥から言い募る。
「大人の勘違いってなんやの…チリちゃんが女やから嫌?それともからかわれてるって思うとるん?ちゃうよ、ほんとにアオイの事…」
言葉を続けようとすると、アオイの手がチリから離れていく。そのままアオイの手を追っていくと、制服のネクタイを首に掛けてシャツの第三ボタンから下を一つ一つ外していく。
そして下まで開き終えると大きくシャツを開いた。
「チリちゃんはさ、小さい私だから、子供の私だから好きなんでしょ?いつも会う度言ってくれるよね。"小さくて可愛い""まるっこくて可愛い""急いで大人にならなくてもいいのに"って…ねえ見てよ。私どんどん子供じゃなくなっちゃうんだよ」
衝撃でなにも言えないでいるチリをよそにアオイは続けた。
「チリちゃんと初めてバトルしてからもう2センチも背が伸びちゃって、胸だって膨らんできて…それに先月初めて生理も来たの…私どんどんチリちゃんの好きな私から離れてっちゃう…子供じゃなくなっちゃう…大きくなった私をチリちゃんはそれでも好きでいてくれるの?」
言葉の最後までくると、アオイの声はどんどん震え涙声になっていく。チリはアオイが無邪気な笑顔の裏でそんな事を思っていたなんて気付きもしなかった。それがとても恥ずかしくて情けなかった。ただただ愛しくてかけていた言葉が、突然大人びてしまって自分の知らない所で成長してしまうのが怖くて言った言葉が、ここまでアオイを追い詰めていただなんて。
チリはアオイのさらけ出した身体を包むように抱き締めてその背を撫でる。
「アオイ…ごめんな。そんな風に思わせてごめんな…チリちゃんな、アオイが自分の知らんところで大人になるんが怖かったんや。チリちゃんの側で大人になってほしかった…!本当やで!アオイが会わん間にどんどん綺麗になって…それがチリちゃん以外からもらった成長や思うと怖かった!大人になって欲しくないなんてこれっぽっちも思ってないんよ!信じて?」
アオイの膨らみかけた胸に顔を埋め、離してなるものかとチリはアオイの背に回した腕の力を強める。
「チリちゃん…私が大人になっても好きでいてくれるの?可愛いって、好きって言ってくれるの?」
頭の上から時おり雫が降ってきてチリの首に当たる。
「当たり前やろ!大きなってもその先もずっと!ずっと好き…アオイがおばあちゃんになってもずっとずぅぅっと好き…愛してる!」
「本当に?」
アオイが確かめるようにチリの肩に腕を回して抱き締め返す。
「お腹痛なったら手当てて暖める、成長痛が苦しかったらわからんぐらいギュッて抱き締める!後アオイのブラジャーも選びに行こ、チリちゃんはシンプルなんが好きやけど、アオイはどんなんがええ?チリちゃん色のやったらええな」
後半はもはやチリの欲だったが、この際なんでもよかった。とにかく信じてもらいたい。何があっても大丈夫だと思って欲しい。その一心だった。
「ふふ、ブラジャー一緒に選んでくれるの?」
涙声のなかでようやく笑い声が聞こえて、チリはほっとアオイの顔を見上げる。目元を真っ赤にして泣きながら笑うアオイの顔がそこにあった。
「後なピアス開ける時はチリちゃんにやらしてな?一個のピアスはんぶんこして着けよ?お酒飲めるようになったら一緒に飲みたいお酒あんねん…それから、それから」
「チリちゃん、もう良いよチリちゃんの気持ちちゃんと伝わったよ…私も怖かったけど同じだけチリちゃんも怖かったんだね。私もね大好きだよ」
改めてアオイがチリを胸に抱き寄せる。ほんの少し湿っているのはアオイの涙かチリの涙かはわからない。
「アオイはチリちゃんがおばちゃんになっても好きって言ってくれる?」
「ずっと好きだよ…私の最後をあげたいくらい大好き」
チリはアオイに抱き締められたままアオイの膝裏を掬うと抱き上げてギュッと抱き締めた。
「チリちゃんの最期も貰ってもらわな困るわ。アオイ…ずっと一緒にいよな」
「うん、これからもずっとよろしくお願いします」
顔を上げた時、雨上がりの虹のような笑顔の二人がそこに在った。
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次回「チリちゃんこの透け透けのブラジャー私には似合わないんじゃ(めっちゃ似合うから試しに着て見せて?な?」
それはチリの切実な心の声でもあった。しかし、幼い少女に言うにはあまりにも大きすぎる感情で、できればいつものように「私もチリちゃんのことだーい好きだよ!」と無邪気に返してくれたら、適当に流せてしまってくれたらと思わずにはいられなかった。
しかし、チリの声があまりにも切実に絞り出すように言葉を出すものだからか、アオイの返事はなく、チリはアオイの顔を見られないまま、自分の爪先を見つめているしかなかった。
「チリちゃん。しゃがんでくれますか?」
比較的明るい声だった。ああ、これはいつものように笑って何事もなく通りすぎるんだとチリは内心ほっとして、言われるがままにしゃがむ。ちょうどアオイの胸辺りに目線が行った。
アオイはそっとチリの両頬に手を添えるとクイと自分の方へ上向かせた。
「チリちゃんそれはね、大人の勘違いだよ」
チリは呆気に取られた。大人の自分がアオイに"それは子供の勘違いだ"と言うならまだしも、逆を言われるとは思いもしなかった。
「きっとチリちゃんは、小さくて後をちょこちょこ着いてくる子供に愛着がわいただけなの、だからねそんな悲しそうな顔しなくていいんだよ」
アオイは事も無げにそう言い放った。穏やかな声音のはずなのに、その視線はどこか冷たく感じて、チリは焦燥から言い募る。
「大人の勘違いってなんやの…チリちゃんが女やから嫌?それともからかわれてるって思うとるん?ちゃうよ、ほんとにアオイの事…」
言葉を続けようとすると、アオイの手がチリから離れていく。そのままアオイの手を追っていくと、制服のネクタイを首に掛けてシャツの第三ボタンから下を一つ一つ外していく。
そして下まで開き終えると大きくシャツを開いた。
「チリちゃんはさ、小さい私だから、子供の私だから好きなんでしょ?いつも会う度言ってくれるよね。"小さくて可愛い""まるっこくて可愛い""急いで大人にならなくてもいいのに"って…ねえ見てよ。私どんどん子供じゃなくなっちゃうんだよ」
衝撃でなにも言えないでいるチリをよそにアオイは続けた。
「チリちゃんと初めてバトルしてからもう2センチも背が伸びちゃって、胸だって膨らんできて…それに先月初めて生理も来たの…私どんどんチリちゃんの好きな私から離れてっちゃう…子供じゃなくなっちゃう…大きくなった私をチリちゃんはそれでも好きでいてくれるの?」
言葉の最後までくると、アオイの声はどんどん震え涙声になっていく。チリはアオイが無邪気な笑顔の裏でそんな事を思っていたなんて気付きもしなかった。それがとても恥ずかしくて情けなかった。ただただ愛しくてかけていた言葉が、突然大人びてしまって自分の知らない所で成長してしまうのが怖くて言った言葉が、ここまでアオイを追い詰めていただなんて。
チリはアオイのさらけ出した身体を包むように抱き締めてその背を撫でる。
「アオイ…ごめんな。そんな風に思わせてごめんな…チリちゃんな、アオイが自分の知らんところで大人になるんが怖かったんや。チリちゃんの側で大人になってほしかった…!本当やで!アオイが会わん間にどんどん綺麗になって…それがチリちゃん以外からもらった成長や思うと怖かった!大人になって欲しくないなんてこれっぽっちも思ってないんよ!信じて?」
アオイの膨らみかけた胸に顔を埋め、離してなるものかとチリはアオイの背に回した腕の力を強める。
「チリちゃん…私が大人になっても好きでいてくれるの?可愛いって、好きって言ってくれるの?」
頭の上から時おり雫が降ってきてチリの首に当たる。
「当たり前やろ!大きなってもその先もずっと!ずっと好き…アオイがおばあちゃんになってもずっとずぅぅっと好き…愛してる!」
「本当に?」
アオイが確かめるようにチリの肩に腕を回して抱き締め返す。
「お腹痛なったら手当てて暖める、成長痛が苦しかったらわからんぐらいギュッて抱き締める!後アオイのブラジャーも選びに行こ、チリちゃんはシンプルなんが好きやけど、アオイはどんなんがええ?チリちゃん色のやったらええな」
後半はもはやチリの欲だったが、この際なんでもよかった。とにかく信じてもらいたい。何があっても大丈夫だと思って欲しい。その一心だった。
「ふふ、ブラジャー一緒に選んでくれるの?」
涙声のなかでようやく笑い声が聞こえて、チリはほっとアオイの顔を見上げる。目元を真っ赤にして泣きながら笑うアオイの顔がそこにあった。
「後なピアス開ける時はチリちゃんにやらしてな?一個のピアスはんぶんこして着けよ?お酒飲めるようになったら一緒に飲みたいお酒あんねん…それから、それから」
「チリちゃん、もう良いよチリちゃんの気持ちちゃんと伝わったよ…私も怖かったけど同じだけチリちゃんも怖かったんだね。私もね大好きだよ」
改めてアオイがチリを胸に抱き寄せる。ほんの少し湿っているのはアオイの涙かチリの涙かはわからない。
「アオイはチリちゃんがおばちゃんになっても好きって言ってくれる?」
「ずっと好きだよ…私の最後をあげたいくらい大好き」
チリはアオイに抱き締められたままアオイの膝裏を掬うと抱き上げてギュッと抱き締めた。
「チリちゃんの最期も貰ってもらわな困るわ。アオイ…ずっと一緒にいよな」
「うん、これからもずっとよろしくお願いします」
顔を上げた時、雨上がりの虹のような笑顔の二人がそこに在った。
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次回「チリちゃんこの透け透けのブラジャー私には似合わないんじゃ(めっちゃ似合うから試しに着て見せて?な?」
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