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short

チリとアオイは付き合っている。
付き合い始めたのはアオイのアカデミー卒業後からで、それまではお互い好きだと知っていながら友人の体で会う事が殆どだった。
ようやくお付き合いができるようになり、チリはここぞとばかりに外でアオイに口付けたりするようになった。勿論ある程度の時と場所は考えている。
アオイが恥ずかしがるのもあり、外では額や頬といった場所にする事が多いが、人目がなければ唇に口付けてもアオイは怒らない。むしろちょっと嬉しそうである。だからチリもついついひと気のない場所にアオイを連れ込んでしまうのだが、今は割愛する。
そんな二人の様子を傍から見ている他人から、たまに変な野次が飛んできたりするのだ。
全く余計なお世話なのだが"チリはそれで満足なのか""自分なら好きな時にキスさせてやれる""我慢なんてさせない"そう言ってくる人間が一定数現れたのだ。
勿論チリはそんなもの相手にしない。それに他人が思うよりも何百倍もチリは満足しているのだ。

それはチリの家かアオイの家どちらかに泊まった夜。
夕飯を食べて、談笑しながら温い風呂で長湯をして同じ布団に入って寝る。チリの準備はこれで良い。
そうして暫く目を閉じていると、隣でアオイがのそのそと動き始める。
チリが寝ているのを確認して、ちゅっと唇に一つ口付けると優しく頬や額に口付けてきて、最後に隣り合わせになっている方のチリの手を取って指先に口付けてそのまま手を繋いでくる。そして繋いだ手を抱き締めるようにしてアオイは寝に入るのだ。ちなみに言うと、いつもアオイがチリの右側に寝ているので必然的に繋ぐのはアオイを色んな意味で可愛がっている方の右手である。
これに気付いた時の昂りといったらない。普段は恥ずかしがりやなアオイがまるで甘えるように口付けてくるのだから。
しかもだ。

「えへへ…次は起きてる時に…!」

と意気込む姿も希に見る。そうした発言の後の昼間にはアオイが一生懸命自分から口付けようと奮闘してくれるので、その一連の流れも込みでついついジグザグマ寝入りを決め込んでしまう。
こんな可愛いアオイに満足しないわけがないのだ。
そして今夜もまた寝たふりをしていたのだが、いつものようにワクワクウキウキしながら待ち構えていてもアオイが一向に動き出さない。
おかしいぞ?と思って耳で様子を窺っていると、不意にアオイが呟いた。

「やっぱり寝てる間にするなんてずるいよね…うん」

そう一人で納得して寝ようとしているので思わずチリは起き上がってしまった。

「アオイのお休みのチュー楽しみにしとったんよ!」

そこまで言ってしまった!と思ったが時既に遅し。
暗がりでもアオイが驚いた表情をしているのがありありと分かる。

「チ、チリさん…起きてたんですか…?まさか、ずっと?」

せっかくしくじりなくやっていたジグザグマ寝入りがばれた瞬間であった。

「アオイが一生懸命チューしてくれんのが可愛くて可愛くてつい…嬉しそうに手繋いでくるんもそら愛らしくてな…寝たふりしてん」

ばれてしまったからにはとそう伝えると、以外にもアオイは取り乱す事はなかった。
ただやはり恥ずかしいのか、少しだけ俯いた後ポツリと一言。

「こっそりすることしかできなくてごめんなさい…」

そう言ったのだった。

「うーん。確かにこっそりされんのは悲しいな。起きとらんとチューしてくれたんも気付かれへん。それでもアオイが勇気出してしてくれとるんが分かるから寝たふりしとったんよ…かわええし」

チリがそう言うと目に見えてアオイがしょんぼりとしてしまう。

「なぁアオイ。今ならチリちゃん起きてんで。お休みのチューすんなら今やで!」

そう言ってチリがアオイの上に覆い被さる。
アオイは一瞬躊躇ったが、それでもおずおずとチリの首に縋るように腕を回して触れるだけの口付けをした。
それを皮切りに、チリの方からも何度も口付けの雨を降らせていく。
徐々に深くなる口付け、チリに身を委ねてくれるアオイ。アオイからの口付けは"お休みのチュー"にはなりそうになかった。
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