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私はきっと生まれた時から人生の負け組なのだろう。
ヤクザの娘として生まれ毎日バーで飲んだくれる日々。誰か救ってと願ってもこんな自分を受けいれてくれる人なんているわけが無い。そう思いタバコをふかす。

「またタバコ?」
マラカイト姉妹の姉の方、メラニーが言う。

「美味しいよ。1本吸う?」

「要らないわ。キスする時臭いが気になるじゃない?」

「本当はそんな相手いないくせに」
馬鹿にしたような不敵な笑みを浮かべる

「そんなんだから死んだ目になるのよ」

「別に気にしてないわ」
私の目はいつの間にか曇っていた。いつからだろう、人生に絶望した頃からだろうか。
ヤクザの娘なんてどこに行っても居場所なんてない。父の権力を振りかざし今日も未成年ながら酒とタバコをふかす。

「ヨモギ、カウンターに座るのはやめなさい」
髭面のおっさん、ジュニアが言う

「うるさいわねおっさん。誰がこのクラブに出資してると思ってんのよ」
出資しているのは私の父なのだがまさに虎の威を借る狐である。

「はぁ...わかったよお姫様。程々にしろよな」

「いえーい!追い払い成功〜!アイツうるさいわよね〜今日も飲みましょ、ヨモギ」
マラカイト姉妹の妹の方、赤いドレスのミリシャと乾杯をする。
ここはいい所だ。口煩いヤツも何人かいるけれど誰も私を冷たく突き放したりしないのだから。自分が自分でいられる場所だ。

「ちょっと外で吸ってくるわ」
そう言い残してクラブの外に出た。

キーッ!とバイクのブレーキ音が鳴り響く。
ライダーがヘルメット外した下には宝石のような黄金の長い髪があった。
「綺麗...」
思わず見とれてしまう。
彼女は自分に目もくれずクラブに入っていく。ちょうど同い年くらいだろうか。

ちょうどタバコを2本吸い終わった頃なにやらクラブの中が騒がしいことに気づく。

「ねえ、ちょっとジュニア、うるさいんだけど」

すると中であの金髪の美少女がマラカイト姉妹と闘っていた。
もちろん金髪の美少女の圧勝。そして今度はジュニアが応戦する。

「あの子...」
心の中にふつふつと湧き上がるこの感情はなんだろう。彼女を見ると胸がドクドク鳴って血の巡りが早くなるのを感じる。

いつものようにカウンターに座りジュニア対金髪の美少女の闘いを見る。

「あ、目が赤くなった」
これは彼女のセンブランスなのだろうか。勢いよくジュニアを殴る。そしてジュニアは彼女の髪を引っ張り持って行ってしまう。
黄金の炎が燃え盛る。彼女の怒りは頂点に達しジュニアをぶちのめす。

「ふぅ...」
彼女が汗を拭い大きくため息をつく。

「ねぇ...」
ヨモギは彼女に声をかける

「なに?アンタもやる気?」

「違うわ。ただ...」

「ただ...?」

「貴女に一目惚れしたわ!あなたをもっと知りたいの!」
一世一代の告白を金髪の美少女にぶつける。

「は?」
突然の出来事に彼女が身構える。
別に変な意味じゃないのにね

「人に名を尋ねる時はまず自分から、よね。私はヨモギ・オリベ。貴女は?」

「私は...ヤン・シャオロン」
警戒しながらもポツポツと喋り出すヤン

「どうしてここに来たの?」
早く彼女の全てを知りたいが焦らずゆっくり警戒されないように話す。

「探し物をしに。」

「探し物は見つかった?」

「いや、ここはハズレだね。君、ここの常連?」

「うん。君は...見たところ未成年って感じだけど、どっかのアカデミーの生徒?」

「うん、シグナルアカデミーの生徒だよ。これからここ、ヴェイルのビーコンに入ることになったんだ!」
ガッツポーズをし、楽しそうに話してくれるヤン

「そう...決めた!私もビーコンに入る!」

「は?マジで言ってんの?」
ヤンが目を真ん丸くしてこっちを見る。

「マジよ。だって貴女のこともっと知りたいから」

「はぁ...そっかぁ...」
ヤンは厄介なのに好かれたなと思いながらもヨモギに別れを告げクラブを後にした。


「ねぇ、ルビー」

「なに、お姉ちゃん」

「私、告白されちゃった」

「本当!?おめでとう!」

「ただ相手がなぁ...」

そんなヤンの独り言は音を立てずに空へと消えた。
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