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「はぁ…もう秀継のやつ…すまねぇな」

秀継が去っていった通路を見ながらカインに詫び、その横で闇子も軽く頭を下げる。そんな二人を見、シスはクスリと笑い、未だオドオドと後ろに隠れているカインを引っ張り出しながらサラリという。

「いいですのよ、強ち間違えではございませんから」

引っ張り出されたカインはばつの悪そうな顔をしつつホッと胸を撫で下ろし、光姫と闇子の様子を伺う。そんなカインに気付いたのか光姫はカインに近づき肩を軽く叩いた。

「んまぁ気にすんな、秀継の野郎いつもあんな感じなんだ」

「ふふっこちらもいつもこんな感じですわ」

カインが答える前にシスが返事をする。文句を言おうとカインが口を開いた時-

「ちょっとシスターシ《緊急事態発生、緊急事態発生、直ちに魔者、魔武器使用登録者は戦闘体制に入ってください。繰返します-》えっ?」

けたたましいサイレンの音と共に無機質なアナウンスが流れる、そのアナウンスの内容を理解するや否や、光姫と闇子は同時に身に付けていたアクセサリーを頭上に投げた。

「魔武器展開、禍鎌」
「魔武器展開、禍書」

二人の声が重なる。投げたアクセサリーは二人の手元に落ちていく最中にそれぞれ大鎌と古めかしい書物にかわっていた。
【魔武器】と呼ばれるそれを手に取るや否や、闇子は先程秀継が去っていった通路へ走る、光姫はカインとシスをチラリと見ると「あっちを頼む」と逆の通路を指しながら言い残し闇子の後を追っていった。

「カイン、何をボケッとしているのですか!私達も行きますわよ!」

光姫達を惚けたように見ていたカインに喝をいれ、シスはシスター服の下に仕込まれていた重火器を取り出す、カインはハッとした様に自らもキャソックの中から細身の剣を取り出した。

「シスターすみませんっ!急ぎましょう!」

「ええ、第7通路へ!」

声を掛け合いながら先程光姫に指された通路へ向かう、何処かからか悲鳴や銃声が聞こえカインは顔を青くした。
隣で走るシスも普段の余裕のある表情ではなく、焦りと困惑からか表情が固い。
途中すれ違った別のギルドの人達も皆、シスと同じような表情をしていた。
この先、第7通路の奥は日々、魔武器や魔具を研究している技術者達のラボがあったはず…守りが優先的である場所はそこのはずだが、他のギルドの人達は何故そちらへ行かないのだろう?カインが疑問に思った時だった。

「おい!あんたら教会の人か!?」

今から向かう先から逃げて来たであろう5名の技術者達の一人が二人に問う。

「そうでございます」

足を止めシスが短く答える、とたん回答を聞いた技術者達は涙を浮かべながら、シスとカインの手をとった。

「…この先で20人はやられてる…ラボはもう…すまん、浄化を頼む……」

20人…予想より多い人数に、精々数人が怪我をした程度だと思っていたシスが固まる、他ギルドの者が他の場所に向かっていたのは、もう救助等が必要ないからだと悟った。
そして浄化は教会の者や一部の魔者や魔武器使用登録者しか出来ない、カインはゴクリと唾を飲み込み技術者の手を握り返す。

「…わかりました。皆さん安全な所へ避難を、後の事は任せてください」

自分でも驚くほど冷静に声を掛ける。いつも頼りになるシスが固まっているからだろうか、技術者が手を離すとシスに近づき軽く肩を叩く。

「シスターシス、行きましょう。浄化してあげないと」

ハッとした様にシスはカインの顔を見、技術者達を見渡す、そして何か決心した様にコクりと頷きすぅーっと深呼吸をした。

「すまん、君たちだけに押し付けて…俺達も魔武器が使えたら…」

技術者達はそれぞれ思い詰めた様に拳を固く握る、カインは安心させるため、軽く微笑みながら「いいえ」と言う。
最初に声を掛けてきた技術者が、涙を拭いながらカインに礼を言うと「これを」と、小さなビー玉の様な物を手渡した。

「君たちは魔者だな、これは魔力を封じた玉だ、よかったら使ってくれ…仲間がノイザーにならないよう……頼む…」

「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」

言葉を交わすと、近くを走っていた他ギルドの人を呼び止め、技術者達を託しまた奥へと向かう通路へ走り出した。
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