The Unowned Soul
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それからの日々は、目が回るほどに忙しかった。霊術院ではトップの成績といえど、ここでは赤子も同然。間合いを取る間もなく稽古場の端まで吹き飛ばされた挙句に昏倒した私は、下っ端として書類仕事を仰せつかった。見舞いに来た長次郎殿の、剣を振るうだけが死神ではないという大変ありがたいお言葉を胸に、滲む視界をなんとか誤魔化しながら今日も書類に目を通す。一番隊では、毎日膨大な量の書類を処理する必要がある。他隊で書かれたものはすべて、最終的にここでまとめられるからだ。とはいえ、全ての書類が期日までに届くわけではない。多くの場合、こちらから出向かないと書類が来ないのだ。四番隊や五番隊、六番隊は心配いらないが、十一番隊にいたっては書類の存在すら忘れられている。というか、なんか隊舎が血生臭い。それに加えて他の隊での出し忘れに記入漏れが重なり、まさに塵も積もればなんとやらである。おかげで、私は毎日書類の回収と確認で廷内を走り回っている。斬拳走鬼だとか言っていた学生時代が懐かしい。今となっては、走走走走である。もちろん、上官とすれ違う時に頭を下げるのも忘れない。ちなみに今日だけで京楽隊長と5回はすれ違ったが、あのお方はいつ仕事をしておられるのだろうか。と、まぁこんな感じで毎日超重要な任務に奔走している私であるが、最近は二番隊に出向くことが多い。なにやら機密書類が多いだとかで、こちらが受け取りに行く必要があるのだとか。正確には他人の仕事を押し付けられているだけだが。というのも、どうやら隠密機動というのは他隊にあまりよく思われていないそうなのだ。それは一番隊の新人も例外ではないようで、他の隊士が渋るものだから私が引き受けることになった。隠密機動の分隊は二番隊の席官が務めており、主に処刑や暗殺、咎人の管理をしているという。二番隊隊長である四楓院夜一隊長は、隠密機動総司令官及び同第一分隊「刑軍」統括軍団長を兼任しておられる。最初はどんな恐ろしい隊なのかと怯えていたが、実際に行ってみるとなかなか良い場所であった。綺麗に手入れされているし、隊士の対応もよい。他の隊では、書類を受け取りに来ただけで若干嫌そうな顔をされることもあるが、二番隊は違う。大半の隊士が顔を覆っているので表情が分からないし、無駄がなく仕事が早い。誰と話しているか分からないのは難点だが、探している相手を伝えればすぐに本人が飛んでくるのは助かっている。耳が良いのだろうか。
──そんなある日、書類の受け取りに出向いた時のことだ。
廊下の向こうから、瞬歩で風のように走り抜けていく四楓院夜一隊長の姿が見えた。この時間に行くと、決まってあの場所にいる。屋根の上を軽やかに跳びまわっている。その猫を彷彿とさせる姿に、つい見とれてしまった。
「あれだけ速く動けたら、きっと気持ちがいいだろうなぁ。」
「お前もそう思うか⁉」
「うわぁっ‼」
ひとり言のつもりが、不意に背後から声をかけられ、縮みあがった。 驚いて振り返ると、同年代くらいの小柄な女隊士が息を荒げて距離を詰めてきていた。なにが起きているのだろうか。
「お前も、あのお方の速さに憧れるか⁉」
「え、あぁ、もちろん?」
「やはり、前からお前は見込みのあるやつだと思っていたんだ。」
「見込み……?」
いや、誰だっけこの子。綺麗な目鼻立ちをしているけれど。どうにか記憶を掘り起こそうとする私を置き去りにして、彼女は言葉を畳みかけてくる。
「以前から夜一様を目で追っていただろう。どうだ、共に夜一様に憧れるもの同士、鍛錬でもするか!」
夜一様……二番隊隊長の四楓院夜一隊長。なんで憧れていることになっているんだろう。いや、確かにかっこいいとは思うが、正直あまり詳しくない。というか、他隊が隠密機動に詳しかったら問題じゃないのか。隠密してるわけだし。しかし、ここは話に乗るべきだろうな。この書類仕事から抜け出すためにも、私に必要なのは強さだ。
「う、うん。したいかも、隊長さんみたいに速くなるための練習。」
「そうと決まれば話が早い。次の非番はいつだ?」
これが砕蜂との出会いだ。彼女との出会いは、私の運命を大きく変えることになる。
──そんなある日、書類の受け取りに出向いた時のことだ。
廊下の向こうから、瞬歩で風のように走り抜けていく四楓院夜一隊長の姿が見えた。この時間に行くと、決まってあの場所にいる。屋根の上を軽やかに跳びまわっている。その猫を彷彿とさせる姿に、つい見とれてしまった。
「あれだけ速く動けたら、きっと気持ちがいいだろうなぁ。」
「お前もそう思うか⁉」
「うわぁっ‼」
ひとり言のつもりが、不意に背後から声をかけられ、縮みあがった。 驚いて振り返ると、同年代くらいの小柄な女隊士が息を荒げて距離を詰めてきていた。なにが起きているのだろうか。
「お前も、あのお方の速さに憧れるか⁉」
「え、あぁ、もちろん?」
「やはり、前からお前は見込みのあるやつだと思っていたんだ。」
「見込み……?」
いや、誰だっけこの子。綺麗な目鼻立ちをしているけれど。どうにか記憶を掘り起こそうとする私を置き去りにして、彼女は言葉を畳みかけてくる。
「以前から夜一様を目で追っていただろう。どうだ、共に夜一様に憧れるもの同士、鍛錬でもするか!」
夜一様……二番隊隊長の四楓院夜一隊長。なんで憧れていることになっているんだろう。いや、確かにかっこいいとは思うが、正直あまり詳しくない。というか、他隊が隠密機動に詳しかったら問題じゃないのか。隠密してるわけだし。しかし、ここは話に乗るべきだろうな。この書類仕事から抜け出すためにも、私に必要なのは強さだ。
「う、うん。したいかも、隊長さんみたいに速くなるための練習。」
「そうと決まれば話が早い。次の非番はいつだ?」
これが砕蜂との出会いだ。彼女との出会いは、私の運命を大きく変えることになる。
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