魔界編
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結果として魔界で行われたトーナメントは
煙鬼という妖怪が優勝した
どうやら温厚な性格のようで
人間界に迷惑をかけないことを法律とした
これで魔界から妖怪が押し寄せてくる可能性は極めて少なくなった
ここには妖怪達に名の知れたばぁちゃんも氷女の雪菜もいる
魔界のトーナメント次第では最悪の場合、そのまま妖怪達が流れ込んでくるケースも予想された
いい奴みたいで良かった
それならトーナメント見に行けばよかったな
▽
蔵馬と幽助は人間界に戻ってきた
飛影は魔界にいて迷いこんだ人間を送り返しているらしい
霊界では閻魔大王ら霊界の上層部をコエンマが告発し
霊界、魔界と人間界との間にある結界は完全に解除された
行こうと思えばいつでも魔界へ行けるようになった
私は相変わらずばぁちゃんの家でのんびり…とはいかなくて
人間界に慣れることも必要だと言われ
週に数回蔵馬が紹介してくれた喫茶店で働いている
理解のあるマスターで、そこで働きながら
霊関係の相談を請け負ったり霊波動を使ってケガ人や病人を治したりして
ばぁちゃんの真似事をしながらのんびり生活するようになった
▽
それからある事件が起こった
霊界の審判の門が占拠されコエンマやぼたんが人質にされた
首謀者は武装教団正聖神党
人間界からの妖怪の排除と結界の再設置を要求し
受け入れられない場合は人間界に対し異次元砲の使用を強行する、と
幽助に呼ばれて、家に行くと
桑原と蔵馬と魔界から呼ばれた飛影も来ていた
久しぶりに5人そろっての任務だ
霊界にたどり着くと作戦を立て、さっそく決行した
桑原が次元刀で切り裂き内部に入り
蔵馬がコントロール室で敵に見つからないよう細工をする
人質のいる真下の部屋に行き天井を破って人質の中に紛れる
タイミングを合わせて私が人質全体を覆う結界を作り出し
みんなが素早く敵を仕留めた
みんなにかかればあっという間だった…
だが捕まえた敵は自害してしまい
皿屋敷市に向けられた異次元砲を止めるボタンを知る手がかりはなくなった
幽助はみんなに知り合いを避難させるように伝え
一人でボタンの前に留まった
『どれにする?』
「うわ!なんでいるんだよ翼!早く避難しろよ」
『どこにいたって危ないのは同じ…
だったら最後まで一緒にいるよ、幽助と』
いざとなったらこの身を呈してでも幽助を守れるように
「プ。」
「プー!?バッカ野郎残ってたのかオメーまで!!
翼連れてさっさと逃げろ!!早く」
プーは悲しげな表情を見せた
それを見た幽助の頭をぽんと撫でると
弱音を吐き始めた
「情けねーよなマジでビビってんだ
どのボタン押しても発射しそーな気がしてよ」
「ちっバカ助が!!ホントに小便たれだねしょーもない
さっきのタンカはうそっぱちかい!?」
「その声は」
『ばぁちゃん!?』
「気軽に押しな…ゲンでもかついでさ
ドジ踏んだらあたしも一緒に謝ってやるよ」
「…うん」
振り返ると飛影とコエンマの気配を感じた
一緒に死にたい奴はまだいた
こんな状況なのに込み上げくる笑いを我慢しながら
幽助の左手を握りしめる
『幽助の選択ならみんな悔いなんてないよ』
「あぁ…ありがとな
時間だ、よし…やるぜ」
幽助がボタンに向き直り一息ついたとき
ばぁちゃんが入ったプーからの視線を感じ
目を向けると微かに声が聞こえた
「ーーーーー…」
『ぇ…?』
ボタン押したと同時にフルパワーで幽助とプーとその後ろも覆える結界を出した
しかしそれを使うことなく何事も起こらず事件は幕を閉じた
プーに目を向けるとばぁちゃんの気配はなく元に戻っていた
嫌な予感に幽助達を置いて人間界に急いだ
頭から離れない
ばぁちゃんの声が
▽
こんなに賑やかな家は久しぶりだ
ばぁちゃんのためにみんなが集まってくれた
事件のあと、家に帰るとばぁちゃんは息を引き取っていた
暗黒武術会の時のように取り乱すこともなく
私はばぁちゃんを見送ることができた
そして静流が受け取っていた遺言状をみんなで聞いた
「みんなへ
この手紙が公開される頃には
一人くらいあの世に来てるかもしれないが
全員元気でやってるものとして話をすすめる
早速だが生前あたしが住んでいた寺の周りの土地を
お前たちに区分けして譲る
詳細は○△銀行□×支店の貸金庫の中の資料に書いてある
一番近い町まで車で数時間
とても人が住める所でもないが
妖怪達の隠れ家にはもってこいだろう
できれば自然のまま残しておいてくれ
寺は翼に譲る
ここに住まわなくてもいい
好きに生きな」
みんなが帰ったあと遺言状を見ながら呆けていたから
近付く気配に気付かなかった
「疲れた?」
『!く、蔵馬…、帰ったんじゃなかったの?』
「みんなはね、オレは気になって…」
『そっか…お茶、淹れ…』
気配を感じとれず不意をつかれて久々に驚いた
それを掻き消すように机に手をついて立とうとすると
私の腕を蔵馬が掴んだ
「翼」
『な、なに?』
「一緒に暮らさないか」
『…え?』
「師範のいないこの家は広いでしょう
喫茶店の仕事もあるしオレも家を出るつもりだから
街で一緒に、二人で暮らそう」
『蔵馬…』
「今すぐじゃなくていいから、考えて」
『蔵馬、無理しなくていいよ』
「え?」
掴まれていた蔵馬の腕を離して机の上に置いた
蔵馬の表情は少し曇って見えて心に違和感を感じた
『大丈夫だからそこまで迷惑かけられない』
「翼…あなたもオレが同情で気にかけてると思ってる?」
『蔵馬は優しいから』
「優しさでこんなこと言ったりしないさ」
『じゃぁ、どうして?』
「オレは翼が好きだよ」
『……え?』
「翼のことが好きだから
側にいたいし側にいてほしい、ずっと
翼、オレと一緒に生きて」
蔵馬の目は真っ直ぐで、再び掴まれた手は温かかった
働かない頭をなんとか動かし口を開いた
『…好きなんて、分からない』
「うん」
『人間の世界のこともよく知らない』
「うん」
『蔵馬は私の知らないことたくさん教えてくれる
けど私は蔵馬に何もできない』
「側にいてくれたらそれでいい…
オレのこと、嫌い?」
『……蔵馬が側にいると胸の辺りがあたたかくて安心する』
「安心するならオレと一緒にいて…
いつかオレのこと好きにさせてみせるから」
『………わかった、蔵馬と一緒にいる』
「!!……翼!!」
蔵馬は掴んでいた私の腕を引っ張った
そのまま蔵馬の方に倒れこみ抱き締められた
やっぱり蔵馬はあったかい
心臓の鼓動がいつもより大きく感じる気がする
しばらくそのままでいたけど微かに気配を感じ
蔵馬の顔を見ようともぞもぞ動いて見上げた
すると優しい目をした蔵馬と目があった
『蔵馬…』
蔵馬の顔が少しずつ近付いてくる
口と口が触れそうになった
『戻ってきたみたい…』
「……へ?」
視線を襖に向けると
蔵馬もならって視線を動かした
ガラッ
「なんだよしねーのかよ!!」
「早くしろよな!!」
「じれったいねぇ!ほんとに!」
「キスの一つや二つさっさとやっちまいなよ」
「ちょっとみんな…邪魔しちゃダメよ」
「すみません、覗くつもりは……」
『みんな、どうしたの?』
帰ったはずのみんながうちに戻ってきていた
変ににやにやしている幽助と桑原が蔵馬と肩を組みヒソヒソ話している
『みんな濡れてる…』
「実はみんなで海に入ってしまって」
「一泊させてもらおうかと思いまして」
『どうして海に?』
「こっちのカップルが熱くてねー」
「ぼたんさん!!」
「いやー邪魔しちゃって悪いね」
『邪魔?なんの?』
「いや…気にしないで!」
「蔵馬くんにしては珍しいね
私らに気付いてなかったなんて」
「そりゃ目の前に美味しそうな翼ちゃんがいたらね♡」
『?』
「いやー蔵馬くん!邪魔しちゃったかなぁ!」
「蔵馬の驚く顔ときたらサイコーだったぜ」
「残念だなーまだ お あ ず け だな」
「まさか俺らに気付かないなんてなぁ!」
「(不覚…)
……魔界で新種の花を見つけてね
試させてもらおうか」
「「ぎゃぁぁぁぁやめろぉぉぉ!!」」
幽助と桑原の声が響く中
それをみんな笑って見ている
なぜか分からないけど自然と私も笑いが込み上げた
きっと大丈夫だよ
ばぁちゃんの最後の言葉
≪しあわせになりな≫
きっとこれが…
もう十分幸せだよ
_
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