夏の予選
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暁くんの投球練習は陽が傾いてからすることにした
もともとスタミナも多くはないから夏を乗り切れるか心配だ…
そして今からは楊舜臣さんを想定した打撃練習
レギュラー陣に向けてもう一度相手投手の説明をするクリス先輩
「翼」
『なに?』
振り向くとキャッチャーの装備をつけた一也
手には私のグローブを持っていた
「肩作るぞ」
『どうして?』
合宿中はレギュラー以外の選手がバッティングピッチャーをするから私がする必要はない
一也が後ろを差すと
クリス先輩の言葉でみんなこっちを向いていた
「楊舜臣を想定して翼に投げてもらう」
『へ?』
「翼ちゃんが投げるの?」
「バッティングピッチャーならともかく練習になるのか?」
「翼はもともと投手で制球力は抜群にいいからな」
「まぁ球速は物足りないけど変化球も多いしコースの見極めの練習にはなりますよ」
「よっしゃぁ!かかってこいオラァ!」
「手加減はしないぞ」
『わー断れない雰囲気…』
「先輩達を抑えてやろうぜ」
『こんなすごい先輩達相手に女の私なんか…』
「"男も女も関係ない"んだろ?」
『……いつの話よ…』
「監督の許可はもらっている
思いっきり投げてこい」
『分かりました…当てても怒らないでくださいね…!』
グローブを受け取り肩を回した
制球力に自信はあるものの
この青道打線相手に抑えるなんて…
キャッチャーは一也
一也のリードがあれば…
▽
何度か投球練習をすると肩が温まってきた
楊舜臣さんの球威も制球力も私にはない
でも皆さんが割いてくれたこの時間を無駄なものにはしたくない
球威を補うためにマウンドから少し前に出た
ふーっと息を吐くと一也が来た
「調子いいじゃねぇか」
『うん、みんなの役に立てるよう頑張らなきゃ』
「おいおい、固いぞー」
一也はけたけたと笑いながら
私の肩に腕を回した
「翼とバッテリー組むの久しぶりだな
なんも気負わず楽しもうぜ!」
そうだ…
昔はリトルリーグで男の子達に混じって野球ができた
それでも勝てば女だから手加減したなんて言われて
悔しかったんだ、本当に
誰よりも練習したし誰よりも野球が好きだった
でも男じゃない私は野球ができなくなった
だからどんな形でも野球に携わりたかった
それが今、マウンドに立ててる
楽しまなきゃ損だ
相手はあの青道打線…燃えなきゃ嘘だ
『頼りにしてるよ!一也!』
互いのミットを合わせて笑い合う
「ボール1個分な」
『2個でも許してよー』
二人とも持ち場につくと
バッターボックスに立ったのは
キャプテンで4番の結城先輩
「哲ー!!勝手に入んな!じゃんけんだろ!」
「そうだよ、俺だって早く翼とヤりたい」
「兄貴の発言はもうアウトだよ…」
「早く代わってくださいよ哲さん!後がつかえてんすから」
「うがっ!」
「もうバッターボックスに入ってしまったから出れんな…」
「哲さん、お手柔らかにお願いします」
「お前の眼は真剣勝負する眼だ…気は抜かん」
『結城先輩!よろしくお願いします!』
初っぱなから結城先輩とか心折れ…いや、わくわくする…!
▽
楊舜臣さんの持ち球はカウントを取るためのカーブとフォークが少し
真ん中の甘い球はなくてストライクゾーンの四隅に投げ分ける
よし、行こう!
まずは初球
結城先輩相手に無駄な球は意味がないから
アウトローギリギリにカーブを入れる
結城先輩は見送ってストライク
なにこのプレッシャー
たまらない
次は対角線を狙ってインハイにストレート
ギリギリバットには当たらなかった
これでツーストライク
次はボール1個分上に
この釣り球を打ちあぐねてフライに出来たらベスト
キンッ
ファール
さすがに結城先輩は簡単に抑えられないか
でも追い込んでるのはこっちだ
インハイをたくさん見せてのアウトローか
それを意識させてのインハイか
一也もちょっと悩んでるな
サインはもう一度インハイへの釣り球
いやいや、結城先輩に3球連続はさすがに見極められる気がする
一也のサインに首を振ると
ニヤリと笑ってからアウトローへのサインを出した
結果は空振りの三振
ギリギリのコース、我ながら良い球だった
「翼、ナイスボール!」
『やったね!』
するとバッターボックスの結城先輩から闘志がメラメラと見えた
「桜井…良いボールだった…
もう一打席…!!」
「ずりーぞ!哲!!
次だ次!代われ!」
「翼ちゃんすごい…本当に結城先輩を抑えちゃった…」
「まさかここまで良い球投げられるなんて知らなかったなぁ…本当楽しみ
いじめてあげるよ」ニコニコ
「ヒャハッ!あいつらマジになりすぎてねぇか?潰しがいがあるな…!」
「フッ、どうやら衰えてはいないようだな」
「あれ、マネジの桜井さん?」
「結城先輩抑えるとかありえねーだろ」
「やっべ!かっこいー」
「ほとんどミット動いてなかったぞ」
「女にしとくのもったいねーな」
ざわざわ
周りがざわざわしてるのも気にならないかくらい心臓がドキドキしてる
やっぱり野球って楽しい
投手って楽しい!!
それから他のレギュラー陣も順番にバッターボックスに入り
抑えたり次は結城先輩に思いっきり打たれたり
私のスタミナが切れるまで続いた
その日から練習後の自主練の時間
いろんな選手から戦いを挑まれるようになったのは別のお話
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