太四老編
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34【庵家】
久しぶりにお邪魔した庵家
昔と変わらず おかえり、って迎えてくれた
庵奈は抱き締めてくれた
庵樹里華は頭を抱えておでこをぶつけた
遊里庵は頭を撫でてくれて
紀里庵は背中をさすってくれた
絵里庵はうつむく私をのぞきこんで
里々庵と真里庵は手を握ってくれた
失ってたはずの記憶が嘘のように
みんなのことや、この家で起きたことが思い出された
『みんな、ありがとう…』
「翼もケイコクもまた来てくれて嬉しいよ!」
「今までどこにいたの?」
『記憶をなくしてて…
みんなのことは今思い出せたよ』
「記憶って何があったんだよ!」
「てかケイコク以外の人達だれ?あ、辰伶だ」
「翼の彼氏どれ?
ケイコク?それともこの人?」
「やだ、庵曽新泣いちゃうよー!かわいそー!」
「翼ますます綺麗になったよな」
口を、挟む隙がない(・н・;)
「ほらほら、翼が困ってんだろ!
いろいろ聞くのは後にしな!
とりあえず片付けと洗濯しておいで」
「「「「「えーっ?!!」」」」」
「さっさとしな!!
みんな起きたらメシにすんだから!」
『庵奈、私にもお料理手伝わせてくれる?』
「あぁ、頼んだよ!」
変わらずここは温かい
▽
4人とも起きたのでご飯をいただくことになった
大きな机に大きなお皿
お茶碗にはほたるとお揃いのヒヨコ(♀)
辰伶とアキラとトラさんは呆然としている
『庵奈のごはん、美味しいよ?
お味噌汁がオススメ。食べないの?』
「翼まで馴染みすぎてませんか?」
『そう言われても…』
「『ね、』」
一時期、太四老・遊庵の家である庵家にお世話になっていたほたる
私も遊庵に連れられて庵家にお邪魔していた
居心地がいいものだからつい長居してしまうんだよね
『そういえば、遊庵ってどんな人?』
「翼覚えてないの?兄貴かわいそー!」
「私達の方が早く思い出してもらったんだねー」
「先程陰陽殿の門の前で相対しただろう」
「短髪にながーいハチマキしてるよ」
『あの人が遊、庵…しっくりこないな…』
「翼、ゆんゆんだよ」
『あ、ゆんゆん!思い出した!ゆんゆんか!』
「独特な思い出し方やなぁ」
「なんですか、そのパンダみたいな呼び名は…」
他愛もない話をしていると庵奈が真剣な表情で話始めた
「…なあケイコク
本当に遊庵とやる気?
遊庵と闘ったりしたら無事ですまないことくらいわかってるだろ?
そんな危ないことはやめてここに戻っておいでよ」
「庵奈…」
「翼もさ、
仲間のあんたらだって同じさ
1人や2人増えたってかまいやしないさ」
みんな優しい言葉をかけてくれる
本当にほたるを家族として考えてくれてるのが伝わる
「ケイコクと翼が戻ったらきっと庵曽新が一番喜ぶなっ」
「それそれまちがいない」
「きまりね」
「庵曽新!?まだいるのか?」
「うちの三男だよ
ケイコクみたいな五曜星になるんだって猛勉強してたんだ」
「そういやあケイコクも翼もいつもあのガリ勉の部屋の隅に入り浸ってたっけ」
「翼用の昼寝布団用意してあったよね」
噂をすれば庵曽新が帰ってきて大食い対決を始めた
ほたるも庵曽新も嬉しそう
庵曽新も遊庵と闘うなとほたるに言った
闘うということは敵になること
隊士である庵家全員を敵にまわすということ
その隊士が反逆者である私達を匿うのが庵家にとってどんなに危ないことか、と
それでもほたるは譲らなかった
「お前とは闘いたくねーんだよ!!
"家族"なんだからよ!!
いい加減わかれや!!」
「…ありがとう庵曽新
…でも必要なんだ
オレにとってどうしても
どうしても何があってもオレは遊庵を越えなきゃならないんだ
必要なんだ オレがオレであるために
『四聖天のほたる』としてーーー」
ほたると庵曽新の覚悟をお互いが感じ
2人は闘うことになった
▽
ほたると庵曽新の闘い
ほたるは簡単に庵曽新の攻撃を避けているように見せているけど
ギリギリの状態でかわしている
庵曽新をおちょくり、怒らせて隙を作り攻撃をしかけた
でも庵曽新は簡単にかわし攻撃した
針師としての本気をみせると
自らの肩に針を施し潜在能力を引き出した
そこからの庵曽新は段違いの速さをみせつけた
それでもほたるは倒れることなく
まばゆい光を放ち庵曽新に切っ先を突き立てた
少しだけ自ら潜在能力を引き出すことができたらしい
▽
「…庵曽新
オレね…あの『ひよこの茶碗』あんまり好きじゃなかったんだよね
"家族"とか…
当たり前のイミもわからなかったしわかろうともしなかった
…出ていく時だって庵曽新の言う通り
みんなのことなんて考えもしなかった…
戻るつもりもなかったし」
「ケイコク…」
「でも今日 この家に戻ってきた時
なんだか…なんだかとても懐かしくて…
いつの間にかこの家に居て
この茶碗で飯喰うことがあたり前になっていたから
こんな身近なことにさえ気づかずにいたんだーー
あのヒヨコ…好きじゃなかったのに
今は…消えてほしくない」
『ほたる…』
いつだってがむしゃらに道を駆けているときは気がつかないんだ
でも…進んだ道の途中でふと振り返ると
自分の足跡と共にたしかにそこにあったもの
離れてしまったからこそ気づくんだ
そこがどんなにか暖かくて
自分にとって大切な場所だったかってことにーーー
オレは…「ほたる」はもう"独り"じゃないから「ケイコク」に戻ることはできないけれど
できることなら変わらずに
ずっとそのままでいて…
「ケイコク…」
「…オレにもこんな感情があるってこと
教えてくれたのは狂なんだ
だから…「ほたる」の居場所なんとしても守りたい
オレはもう"独り"じゃないから
だから
遊庵を越える"強さ"を手に入れなきゃならないんだ」
「ケイコク…」
「「ほたる」か…
じゃぁ「ほたる」みてーにそのケツ光らしとけよ!!」
庵曽新はオレのケツに針を刺した…
痛い…
「オレの"家族"に手ェ出す奴はどんな奴でも許さねえ…
だが弟子が師匠に手合わせ願うのはしょうがねーだろ
勝手にしな」
「庵曽新…」
「かわらねーよなケイコク…
結局お前は昔からそういう奴なんだよ
オレが憧れ目指したのはお前が"五曜星"だったからじゃない
ムチャクチャだけど…
がむしゃらに前に進んで"最強"を目指す
自分の心に正直で真っ直ぐな
お前のようになってみるのもいいかと思ったからなんだよ」
庵曽新もみんなもそこまで思ってくれてたなんて
思いもしなかった…
「それにね、ケイコク…
黙って出ていったこと誰も怒っちゃいねーよ」
「え、どうして?」
「あんたの知らない所で翼が来てくれたのさ」
「翼が?」
『私?』
「そっか、覚えてないのね
あれはあんた達が壬生を出る前…」
▽
バタンッ!
「翼だー!」
「どうしたの急いで…」
『あのね、私とケイコク…
壬生の外に任務で出ることになったの
いつ帰ってこれるか分からない』
「えっ?!そんな急に…」
「嘘だろ?」
「ケイコクは?!」
『ケイコクは、もう先に壬生を出てる…』
「「…」」
『みんなのお陰でケイコクは
大切な何かを取り戻せた気がするの
代わりにはならないけど、お礼を言わせてほしい
本当にありがとう…』
「翼…」
『きっといつかケイコクも気付けると思う
みんながくれた温かさ…
だからどうか…』
「…」
『どうか、この次もケイコクをこの家に…迎えてほしい…
お願いしますっ』
頭をさげた翼
その頭にそっと手が乗せられた
「あたり前じゃないか…
だって"家族"なんだから
それに帰ってくるときは一緒に
翼も無事で帰ってくるんだよ」
『庵奈…』
「たしかにおせっかいしたのは私達だけど
あの手負いの獣のようなケイコクの
心を溶かしたのは翼だよ
まだ側についててやんなよ」
『庵樹里華…』
「何も言わずに行っちゃうのは悲しいけど」
「それがケイコクの選んだ道なんだろ」
「ケイコクらしいよ」
「お土産話待ってるね」
「話しに来てくれてありがとう!」
「翼、気を付けていけよ」
『うん!ありがとう!』
▽
知らなかった
あの時はそんなこと気にもとめてなかったから
翼は吹き出して笑ってた
『私すごいおせっかいだね
そんなこと言わなくてもみんなもほたるも分かってるのに』
「翼、ありがと」
『今みんなとこうして過ごせてるならなんだっていっか!』
きっとオレは"強く"なりたかった
"強く"なったら翼を壬生から解放できると思った
あの頃からすでに、オレの心を支配していた
周りが見えていなかったのはきっと
あまりに大きい存在がオレの頭を占めていたからかもしれない
▽
再び庵家に戻った私達
トラさんは潜在能力を解放させる針を施してもらった
私はよくわからないけどしなくていいみたい
記憶が戻れば自ら解放できるかも、ってことらしい
辰伶は隙をついて針を刺されていた
そのお陰か時人の近衛隊士を一瞬で返り討ちにした
アキラも、と思ったけど
庵曽新はアキラに
これ以上"強く"なれない、と
今が"強さ"の『最高』で『限界』だと言った
そしてアキラは部屋を飛び出してしまった
『アキラ…っ』
ぎゅっ
『ほたる、離して…』
「だめ、行かない方がいい
翼ならわかってるでしょ?」
『だって、』
「今までだってどんな壁にあたっても手を差しのべたりしなかったでしょ」
『でも、側にいることはできるよ…』
「翼が行く方がアキラに堪えることだってあるんだよ」
「たしかに、漢はそういうとこあるかもしれへんな…」
『アキラ…
アキラの気持ちを考えると、辛いね』
「アキラは必ず追いついてくる
いつもそうだったようにーー」
『そうだね、アキラを信じる…』
「立て込んでる所悪ィんだがケイコク…
針を施してやったかわりに1つ頼みがある」
「…頼み?」
「頼む!!遊庵を…助けてやってくれ!!」
「庵曽新!?」
「…頼める義理じゃねえのはわかってる…
だけどオレ達じゃ遊庵は救えねぇんだ…
頼む…!!」
「庵曽新…どういうこと?」
「遊庵は…兄キはよ…
オレ達"家族"の犠牲者なんだ…
助けてやってくれーー!!」
庵家は、前太四老である母の伊庵が企てたとされる謀反により
裏切り者の"家族"として処刑されるはずだった
しかし遊庵が太四老の吹雪に、自分が太四老となり壬生に尽くすことで
母の罪を償うことを掛け合ったのだと
「遊庵はオレ達のためにたった"独り"で
今も周りと闘っている…!
そんな兄キを…遊庵をもう"自由"にしてやってくれ!!
それができるのはケイコク…
お前だけなんだ!!頼むーー!!」
庵曽新の悲痛な叫びが部屋を覆う
それを切り裂くかのように遊庵が現れた
「我が家に反逆者が来たっつーからよ
いっちょ始末しに来たぜ」
「ゆんゆん」
「とうとう来ちまったかケイコク…
少しは"強く"なったのか?
お前の居場所とやらを守るためによ」
「…絶対勝つ
勝たなきゃならない理由がもう1つ増えたし」
そうしてほたると遊庵の闘いが始まろうと
「ちょっとたんま」
ほたるの待ったが入った
「トラと辰伶と翼先に行って」
『どうして…』
突っかかる辰伶に容赦なく襲いかかる遊庵
その攻撃を防いだほたる
「はやく行って」
「ケンカを売られたのはオレだ
アイツとはオレが…」
「だめ ゆんゆんはオレが斃す」
みんなの会話をきいていると遊庵が私の頭に腕を乗せた
「話してるとこ悪ィが翼はだめだ」
『ゆんゆんっ!』
「どうして?」
「翼の責務のため
ここでケイコクをぶっ飛ばして情を消さなきゃならねぇ
お前達が一緒にいられるのもあとわずかだ」
『私の責務?』
「何それ…」
「翼に一体何が…!!」
「わかった、じゃぁゆんゆん斃してあとで翼と行く
だから、トラ
アキラのこと頼む…
あと梵のこともね
頼む」
「よっしゃ!!わかった先行くで!!
後ろから翼はんとゆっくりきてや
ほたるはん!!」
「ケイコク…
無様な姿をさらすなよ」
「お前もね」
「…どんなツラでまたオレの前に現れるか楽しみだな」
トラさんと辰伶が去り庵奈が遊庵に考え直すよう話した
「オレは常に"強く"ありてぇ…
ただそれだけのために太四老になったーー
それを邪魔する奴はたとえ"家族"であろうとブッ殺すーー!!」
「ゆんゆん…行くよ」
ほたるの負けられない
みんなの想いを背負った
師匠との一戦が始まる
_
久しぶりにお邪魔した庵家
昔と変わらず おかえり、って迎えてくれた
庵奈は抱き締めてくれた
庵樹里華は頭を抱えておでこをぶつけた
遊里庵は頭を撫でてくれて
紀里庵は背中をさすってくれた
絵里庵はうつむく私をのぞきこんで
里々庵と真里庵は手を握ってくれた
失ってたはずの記憶が嘘のように
みんなのことや、この家で起きたことが思い出された
『みんな、ありがとう…』
「翼もケイコクもまた来てくれて嬉しいよ!」
「今までどこにいたの?」
『記憶をなくしてて…
みんなのことは今思い出せたよ』
「記憶って何があったんだよ!」
「てかケイコク以外の人達だれ?あ、辰伶だ」
「翼の彼氏どれ?
ケイコク?それともこの人?」
「やだ、庵曽新泣いちゃうよー!かわいそー!」
「翼ますます綺麗になったよな」
口を、挟む隙がない(・н・;)
「ほらほら、翼が困ってんだろ!
いろいろ聞くのは後にしな!
とりあえず片付けと洗濯しておいで」
「「「「「えーっ?!!」」」」」
「さっさとしな!!
みんな起きたらメシにすんだから!」
『庵奈、私にもお料理手伝わせてくれる?』
「あぁ、頼んだよ!」
変わらずここは温かい
▽
4人とも起きたのでご飯をいただくことになった
大きな机に大きなお皿
お茶碗にはほたるとお揃いのヒヨコ(♀)
辰伶とアキラとトラさんは呆然としている
『庵奈のごはん、美味しいよ?
お味噌汁がオススメ。食べないの?』
「翼まで馴染みすぎてませんか?」
『そう言われても…』
「『ね、』」
一時期、太四老・遊庵の家である庵家にお世話になっていたほたる
私も遊庵に連れられて庵家にお邪魔していた
居心地がいいものだからつい長居してしまうんだよね
『そういえば、遊庵ってどんな人?』
「翼覚えてないの?兄貴かわいそー!」
「私達の方が早く思い出してもらったんだねー」
「先程陰陽殿の門の前で相対しただろう」
「短髪にながーいハチマキしてるよ」
『あの人が遊、庵…しっくりこないな…』
「翼、ゆんゆんだよ」
『あ、ゆんゆん!思い出した!ゆんゆんか!』
「独特な思い出し方やなぁ」
「なんですか、そのパンダみたいな呼び名は…」
他愛もない話をしていると庵奈が真剣な表情で話始めた
「…なあケイコク
本当に遊庵とやる気?
遊庵と闘ったりしたら無事ですまないことくらいわかってるだろ?
そんな危ないことはやめてここに戻っておいでよ」
「庵奈…」
「翼もさ、
仲間のあんたらだって同じさ
1人や2人増えたってかまいやしないさ」
みんな優しい言葉をかけてくれる
本当にほたるを家族として考えてくれてるのが伝わる
「ケイコクと翼が戻ったらきっと庵曽新が一番喜ぶなっ」
「それそれまちがいない」
「きまりね」
「庵曽新!?まだいるのか?」
「うちの三男だよ
ケイコクみたいな五曜星になるんだって猛勉強してたんだ」
「そういやあケイコクも翼もいつもあのガリ勉の部屋の隅に入り浸ってたっけ」
「翼用の昼寝布団用意してあったよね」
噂をすれば庵曽新が帰ってきて大食い対決を始めた
ほたるも庵曽新も嬉しそう
庵曽新も遊庵と闘うなとほたるに言った
闘うということは敵になること
隊士である庵家全員を敵にまわすということ
その隊士が反逆者である私達を匿うのが庵家にとってどんなに危ないことか、と
それでもほたるは譲らなかった
「お前とは闘いたくねーんだよ!!
"家族"なんだからよ!!
いい加減わかれや!!」
「…ありがとう庵曽新
…でも必要なんだ
オレにとってどうしても
どうしても何があってもオレは遊庵を越えなきゃならないんだ
必要なんだ オレがオレであるために
『四聖天のほたる』としてーーー」
ほたると庵曽新の覚悟をお互いが感じ
2人は闘うことになった
▽
ほたると庵曽新の闘い
ほたるは簡単に庵曽新の攻撃を避けているように見せているけど
ギリギリの状態でかわしている
庵曽新をおちょくり、怒らせて隙を作り攻撃をしかけた
でも庵曽新は簡単にかわし攻撃した
針師としての本気をみせると
自らの肩に針を施し潜在能力を引き出した
そこからの庵曽新は段違いの速さをみせつけた
それでもほたるは倒れることなく
まばゆい光を放ち庵曽新に切っ先を突き立てた
少しだけ自ら潜在能力を引き出すことができたらしい
▽
「…庵曽新
オレね…あの『ひよこの茶碗』あんまり好きじゃなかったんだよね
"家族"とか…
当たり前のイミもわからなかったしわかろうともしなかった
…出ていく時だって庵曽新の言う通り
みんなのことなんて考えもしなかった…
戻るつもりもなかったし」
「ケイコク…」
「でも今日 この家に戻ってきた時
なんだか…なんだかとても懐かしくて…
いつの間にかこの家に居て
この茶碗で飯喰うことがあたり前になっていたから
こんな身近なことにさえ気づかずにいたんだーー
あのヒヨコ…好きじゃなかったのに
今は…消えてほしくない」
『ほたる…』
いつだってがむしゃらに道を駆けているときは気がつかないんだ
でも…進んだ道の途中でふと振り返ると
自分の足跡と共にたしかにそこにあったもの
離れてしまったからこそ気づくんだ
そこがどんなにか暖かくて
自分にとって大切な場所だったかってことにーーー
オレは…「ほたる」はもう"独り"じゃないから「ケイコク」に戻ることはできないけれど
できることなら変わらずに
ずっとそのままでいて…
「ケイコク…」
「…オレにもこんな感情があるってこと
教えてくれたのは狂なんだ
だから…「ほたる」の居場所なんとしても守りたい
オレはもう"独り"じゃないから
だから
遊庵を越える"強さ"を手に入れなきゃならないんだ」
「ケイコク…」
「「ほたる」か…
じゃぁ「ほたる」みてーにそのケツ光らしとけよ!!」
庵曽新はオレのケツに針を刺した…
痛い…
「オレの"家族"に手ェ出す奴はどんな奴でも許さねえ…
だが弟子が師匠に手合わせ願うのはしょうがねーだろ
勝手にしな」
「庵曽新…」
「かわらねーよなケイコク…
結局お前は昔からそういう奴なんだよ
オレが憧れ目指したのはお前が"五曜星"だったからじゃない
ムチャクチャだけど…
がむしゃらに前に進んで"最強"を目指す
自分の心に正直で真っ直ぐな
お前のようになってみるのもいいかと思ったからなんだよ」
庵曽新もみんなもそこまで思ってくれてたなんて
思いもしなかった…
「それにね、ケイコク…
黙って出ていったこと誰も怒っちゃいねーよ」
「え、どうして?」
「あんたの知らない所で翼が来てくれたのさ」
「翼が?」
『私?』
「そっか、覚えてないのね
あれはあんた達が壬生を出る前…」
▽
バタンッ!
「翼だー!」
「どうしたの急いで…」
『あのね、私とケイコク…
壬生の外に任務で出ることになったの
いつ帰ってこれるか分からない』
「えっ?!そんな急に…」
「嘘だろ?」
「ケイコクは?!」
『ケイコクは、もう先に壬生を出てる…』
「「…」」
『みんなのお陰でケイコクは
大切な何かを取り戻せた気がするの
代わりにはならないけど、お礼を言わせてほしい
本当にありがとう…』
「翼…」
『きっといつかケイコクも気付けると思う
みんながくれた温かさ…
だからどうか…』
「…」
『どうか、この次もケイコクをこの家に…迎えてほしい…
お願いしますっ』
頭をさげた翼
その頭にそっと手が乗せられた
「あたり前じゃないか…
だって"家族"なんだから
それに帰ってくるときは一緒に
翼も無事で帰ってくるんだよ」
『庵奈…』
「たしかにおせっかいしたのは私達だけど
あの手負いの獣のようなケイコクの
心を溶かしたのは翼だよ
まだ側についててやんなよ」
『庵樹里華…』
「何も言わずに行っちゃうのは悲しいけど」
「それがケイコクの選んだ道なんだろ」
「ケイコクらしいよ」
「お土産話待ってるね」
「話しに来てくれてありがとう!」
「翼、気を付けていけよ」
『うん!ありがとう!』
▽
知らなかった
あの時はそんなこと気にもとめてなかったから
翼は吹き出して笑ってた
『私すごいおせっかいだね
そんなこと言わなくてもみんなもほたるも分かってるのに』
「翼、ありがと」
『今みんなとこうして過ごせてるならなんだっていっか!』
きっとオレは"強く"なりたかった
"強く"なったら翼を壬生から解放できると思った
あの頃からすでに、オレの心を支配していた
周りが見えていなかったのはきっと
あまりに大きい存在がオレの頭を占めていたからかもしれない
▽
再び庵家に戻った私達
トラさんは潜在能力を解放させる針を施してもらった
私はよくわからないけどしなくていいみたい
記憶が戻れば自ら解放できるかも、ってことらしい
辰伶は隙をついて針を刺されていた
そのお陰か時人の近衛隊士を一瞬で返り討ちにした
アキラも、と思ったけど
庵曽新はアキラに
これ以上"強く"なれない、と
今が"強さ"の『最高』で『限界』だと言った
そしてアキラは部屋を飛び出してしまった
『アキラ…っ』
ぎゅっ
『ほたる、離して…』
「だめ、行かない方がいい
翼ならわかってるでしょ?」
『だって、』
「今までだってどんな壁にあたっても手を差しのべたりしなかったでしょ」
『でも、側にいることはできるよ…』
「翼が行く方がアキラに堪えることだってあるんだよ」
「たしかに、漢はそういうとこあるかもしれへんな…」
『アキラ…
アキラの気持ちを考えると、辛いね』
「アキラは必ず追いついてくる
いつもそうだったようにーー」
『そうだね、アキラを信じる…』
「立て込んでる所悪ィんだがケイコク…
針を施してやったかわりに1つ頼みがある」
「…頼み?」
「頼む!!遊庵を…助けてやってくれ!!」
「庵曽新!?」
「…頼める義理じゃねえのはわかってる…
だけどオレ達じゃ遊庵は救えねぇんだ…
頼む…!!」
「庵曽新…どういうこと?」
「遊庵は…兄キはよ…
オレ達"家族"の犠牲者なんだ…
助けてやってくれーー!!」
庵家は、前太四老である母の伊庵が企てたとされる謀反により
裏切り者の"家族"として処刑されるはずだった
しかし遊庵が太四老の吹雪に、自分が太四老となり壬生に尽くすことで
母の罪を償うことを掛け合ったのだと
「遊庵はオレ達のためにたった"独り"で
今も周りと闘っている…!
そんな兄キを…遊庵をもう"自由"にしてやってくれ!!
それができるのはケイコク…
お前だけなんだ!!頼むーー!!」
庵曽新の悲痛な叫びが部屋を覆う
それを切り裂くかのように遊庵が現れた
「我が家に反逆者が来たっつーからよ
いっちょ始末しに来たぜ」
「ゆんゆん」
「とうとう来ちまったかケイコク…
少しは"強く"なったのか?
お前の居場所とやらを守るためによ」
「…絶対勝つ
勝たなきゃならない理由がもう1つ増えたし」
そうしてほたると遊庵の闘いが始まろうと
「ちょっとたんま」
ほたるの待ったが入った
「トラと辰伶と翼先に行って」
『どうして…』
突っかかる辰伶に容赦なく襲いかかる遊庵
その攻撃を防いだほたる
「はやく行って」
「ケンカを売られたのはオレだ
アイツとはオレが…」
「だめ ゆんゆんはオレが斃す」
みんなの会話をきいていると遊庵が私の頭に腕を乗せた
「話してるとこ悪ィが翼はだめだ」
『ゆんゆんっ!』
「どうして?」
「翼の責務のため
ここでケイコクをぶっ飛ばして情を消さなきゃならねぇ
お前達が一緒にいられるのもあとわずかだ」
『私の責務?』
「何それ…」
「翼に一体何が…!!」
「わかった、じゃぁゆんゆん斃してあとで翼と行く
だから、トラ
アキラのこと頼む…
あと梵のこともね
頼む」
「よっしゃ!!わかった先行くで!!
後ろから翼はんとゆっくりきてや
ほたるはん!!」
「ケイコク…
無様な姿をさらすなよ」
「お前もね」
「…どんなツラでまたオレの前に現れるか楽しみだな」
トラさんと辰伶が去り庵奈が遊庵に考え直すよう話した
「オレは常に"強く"ありてぇ…
ただそれだけのために太四老になったーー
それを邪魔する奴はたとえ"家族"であろうとブッ殺すーー!!」
「ゆんゆん…行くよ」
ほたるの負けられない
みんなの想いを背負った
師匠との一戦が始まる
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