短編
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佐野万次郎と私は、幼馴染だった。
いや、本当は幼馴染に過去形もなにもないので、今でもその事実は変わらないのだけど。
かつては一緒に道場で空手を習ったし、どこに行くにもマイキーは私を当たり前のように誘ったし、どんな時も一緒にいたと思う。
そんな日々がこれからも当然続くと思っていたけれど、マイキーが他の幼馴染と東卍を結成した時に変化が訪れた。
マイキーは変なとこで鈍いから正式にチームになった後も、別に私がいることを気にしてなかった。
だけど喧嘩が増えるにつれ、私を一緒に連れ出すことに他のメンバーが難色を示したのだ。
特にもう一人の幼馴染である場地の反対はすごかった。
喧嘩になるかもしれない場に女がくるんじゃねぇ、東卍で集まってない時に顔出すくらいにしとけ。とそれはもう耳にタコができるほど聞いた。
場地は場地なりに、私を大切に思ってくれてるのは痛いほどわかるし、何より私自身が総長の時のマイキーはとても遠い存在に思えて、絶対に乗り越えられない壁があると感じ始めていた。
それをきっかけに、場地の言うとおりしようと思うとマイキーに話した時、絵に描いたようなきょとん顔でこう言われたのだ。
「なんで?ナマエがいることでなんか変わる?」
まるでいてもいなくても何も変わらないといった口ぶりにさすがに私も驚いた。
すかさず、ドラケンや場地が危ないだろうがと言ってくれたが、「どこが?」とマイキーは聞き返していた。
場地やドラケンなどに出会うにつれ、マイキーの中の私の立ち位置は低くなっているとは感じていたが、これほどまでに軽んじられていたとは。私が傷つこうがどうでもいいということなのか。
ショックを受ける前にあまりのいい草に腹が立ってしまった。
「変わることがないなら、別にいなくてもいいよね?だったらもう来ないから。」
自分でも驚くほどの低い声で言い放ち、キレた私にビビりながらも送るか?と声をかけてくれたドラケンと場地を無視してその日、初めて1人で家に帰った。
後ろから「感じ悪っ。」ってふざけた声が聞こえたが私は振り返らなかった。
家についてからも怒りの治まらない私は、お風呂に浸かりながらずっとマイキーに腹を立てていた。
だけど軽く扱われて腹が立つのは私がマイキーを好きだからだと気づいてしまい、そのままお湯に沈み込んで泣いた。
自分でも気づいてなかった初恋はこうして、デリカシーのない鈍い幼馴染によって、あっけなく砕かれてしまった。
中学生なったばかりにして、失恋を経験した私は翌日、腫れた目をなんとか化粧でごまかし学校に行こうとした。
玄関を開けると、そこにはいつもと変わらないマイキーと若干気まずそうな顔をしたドラケンがいた。
朝の変わらない光景のはずだけど、なぜそうも普通なのかにまたしても腹が立ってくる。
「なんでいんの?」
「なんでってなにが?え?今日学校休みじゃねーよな?」
給食の献立表にメニュー書いてあったから、休みじゃねーよ?っと訳の分からないことを言いながらマイキーは歩き出してしまう。
デリカシーのなさに唖然としていると何故かドラケンが謝ってくれた。本当に顔に似合わず苦労性だよね。
「そうじゃなくて!昨日の話覚えてないわけ?」
「は?昨日のは東卍の話だろ?しかもお前が勝手に言い出しただけじゃん。」
わけわかんねーこと言ってると遅刻すんぞ。せっかく朝起きたのに。と言いながら歩いていく背中をなんとも言えない感情で眺めていた。
いや、気にしないにもほどがあるだろう・・。
そして、失恋から立ち直れない私をよそにマイキーはその後も本当になにも変わらなかった。
そんなマイキーの様子を見ると、私のことなど本当にどうでもいいんだと感じてしまいさらに傷ついた。
このままじゃいつまでも引きずってしまうと思った私はマイキー達と距離を置くように努力したが、まったく気にすることないマイキーのせいでなかなか上手くいかず、放課後、玄関で待ち構えているマイキーと一緒に帰るのも、そのまま集会に連れていかれるのも変わりなかった。
その様子を見た場地は呆れつつも、もう口出しはしてこなかった。
いや、こっちとしては助けて欲しいんだけど。
それからも私の悩みは解決することはなく、気づけば私たちは2年生になっていた。
このままだと台無しになってしまう私の青春を思い溜息が出た時、友達に話かけられた。
「なんか、おっもい溜息だけど、大丈夫?」
「いや、このままなにもなく私の青春が終わってしまうと思うと思わずね。」
「は?あんだけいつも仲良くしててなんか不満があるの?」
「なにが?」
「だから、彼氏の佐野君と!いつも仲よさそうなのに、なんか不満があるの?」
「え?マイキーとは付き合ってないよ。ただ幼馴染。」
むしろもはや腐れ縁だよ、と言いたいのを我慢する。
「は?!あんたたち付き合ってなかったの?!!」
友達の絶叫が響き渡り、教室がざわつく。
あっちこっちから驚きの声が上がっている。
え?付き合ってると思われてたの?
勘違いされ続けていたことに私も驚いてしまう。
こんなんじゃ、彼氏ができるのなんて夢のまた夢になってしまう。
早急に現状を打開するため、私はとりあえず学校が一緒の頼れる存在であるドラケンを屋上に呼び出した。
「なんだよ。急に呼び出して。サボらすんじゃねーよ。」
「どうせ真面目に授業受けてなんてないでしょ。むしろこっちの一大事に協力してよ。」
するとドラケンは心底嫌そうな顔して「とりあえず聞くだけだからな。」と言った。
一応、友達のはずなのに、ひどい扱いだ。
「マイキー離れしたい。」
「は?!」
「私、マイキーと付き合ってると思われてたらしいの。これは努力してるけど、マイキーと距離が置けてないせいだと思う。このまま真っ暗な青春時代を過ごすのもごめんだし、ちゃんとマイキー離れしたい。それには絶対ドラケンの協力が必要だと思う。」
「なんで俺だよ。」
「ドラケンがマイキーのこと野放しにせず、ちゃんとの捕まえててくれれば私は自由になれるでしょ。そのまま集会でもなんでも連れてっちゃってほしい。」
俺はアイツの飼育係がなんかか!とキレるドラケンを何とか宥めて懇願する。
「はぁ。お前の考えはわかったけどよ。本当にそれでいいのか?」
「私だっていつまでも報われない恋をしてるは辛いんだよ。それよりは他の人に彼氏になってもらえるように頑張る方が前向きな努力でいいと思わない?」
「苦労するな」と言われたので、頑張るよって答えたら「お前じゃねーよ」と返され意味が分からなかった。
「とりあえず、今日は早めに集まるつもりだったし、放課後すぐ捕まえとくわ。その隙に前向きな努力とやらでもしとけ。」
「うん。ありがと!」
とはいったものの、今日の今日で何もできないだろうなと思いつつ、マイキーがいない放課後自体が久しぶりなので、友達を誘って寄り道でもしようかと考えていた。
「あ、ミョウジ!」
「ん?」
振り返るとそこには最近、さわやかでカッコいいと騒がれているサッカー部のエース君がいた。
確か同じ小学校だった気がする。
「あのさ、さっき教室で言ってた、佐野と付き合ってないって話本当?」
「うん。本当だけど。」
すると、少し嬉しそうな顔をしてこう続けた。
「実は前からミョウジと仲良くなりたいなって思ってて。もしよかったら放課後どっか行かない?今日部活休みなんだ。」
「え?!うん。行きたい!ありがとう。」
早速モテ期到来か?と嬉しくなる。
さわやかだし、なんか憎めないキャラに好感が持てる。
日直だから少し待っててほしいと言われ、たいした化粧はしてないがチェックと直しの時間が欲しいと思っていたところなので快諾する。
「じゃあ、放課後に」と少し照れたような顔して、去っていった彼をみてこちらもドキドキしてしまう。
放課後大急ぎで化粧を直し、髪型チェックをした後、急いで昇降口まで向かう。
「待たせてごめんなさい。」
「全然。こっちも今来たとこだから。」
まるで少女漫画のようなやりとりにむず痒くなってくる。
でもいつも、待ち合わせしてるわけでもないのに、遅いだの、待ちすぎてお腹空いただの言ってくるマイキーのことを考えると大違いだ。
駅まで歩いた後にクレープを買い食いして、その後は気になっていた雑貨店に付き合ってもらう。
その間も彼は私がが疲れたり退屈しないように気配りをしてくれた。
タメだというのに感心してしまう。
モテると騒がれるわけだ。
通りかかったショップのウィンドウに飾ってあるヘアピンに目が留まる。
すると横から
「あのピン、ミョウジに似合いそうだね。」
「え?そうかな?」
「うん。つけてるとこ見てみたいな。今日の記念にプレゼントしてもいいかな?」
「そんな悪いし、いいよ。」
「遠慮しないで、俺が何か残ることしたくなっただけだし。」
そのピンは確かにデザインは好みなのだが、色が少し自分には派手に思えてそこまで興味をそそられないというのが正直な気持ちなのだ。
それにさすがに今日、出かけたのが初めて相手に買ってもらうのは遠慮したい。
「とりあえずちょっと中入ってみようよ。」
「いや、本当大丈夫だから。」
「本当にそんなに遠慮しなくても・・「ナマエはそんな派手な色、好きじゃねーんだよ。もっと淡いのが好みなの。」」
突然の声に驚き振り返るとそこには不機嫌な顔をしたマイキーがいた。
「え?マイキーなんでここに?」
「なんでじゃねーよ。お前こそこんなとこで何やってんの?」
質問で返されてしまい、言葉に詰まる。というか本当にどうしてここに?集まりってことは集会かなんかじゃないのだろうか?
疑問に思いながら携帯に目をやるとドラケンからのメールが来ていた。
内容は「わりぃ。マイキーがいなくなった」とあった。
いや、遅いし!なんでちゃんと見てないんだと面と向かって言うには勇気がいることを毒づく。
「俺から誘って、ミョウジに付き合ってもらってたんだよ。」
私を庇う様に少し前に立ち、説明をしてくれた。
そのとたんマイキーの眉間には深い皺が刻まれ、まずいと思った。
「あ?勝手に連れてかれると困んだけど。」
底を這うようなマイキーの低い声が聞こえ、空気が凍りつく。
それでも彼は庇う様に言ってくれた。
「佐野とミョウジは付き合ってないって聞いたんだけど。俺が誘うのに問題あった?」
「付き合うも何もコイツは俺のなの。外野が横やり入れてんじゃねーよ。」
なにかすごいことを言われた気がして、驚いていると行くよっと強く腕を引っ張られた。
せっかく誘ってくれた彼は茫然と立っていて聞こえているかは疑問だが、ごめんね!と大きな声で伝えた。
その間もマイキーの歩く速度は変わらず、引きずられるまま、気づけば佐野家内のマイキーの部屋にたどり着いていた。
怒っているのは分かるが何も言わないマイキーにどうしたもんかと思い、困ってしまう。
そもそもなんでこんなに怒ってるんだろうか。
意を決して口を開こうとした時、顔のすぐの横でドンっとものすごい音がした。
見ると私の顔の横の壁にマイキーの拳があって、普通ならときめくはずの壁ドンもキレたマイキーがやると、ただの暴力シーンだなと他人事のように思った。
「さっきの何?まさかアイツと付き合うつもりなわけ?」
マイキーの迫力に押されつつも何とか反論する。
「それマイキーに関係あるの?」
「本気で言ってんのか?」
怒りながらも少し傷ついた顔になったマイキーに戸惑うが、ここで折れるわけにはいかない。
私だってもうこの苦しい状態から解放されたい。
「なんでそんなに怒ってるの?私のことなんかどうでもいいんでしょ?もうお願いだからほっといてよ。」
「はあ?」
意味がわからないといった顔のマイキーに怒りを覚えた私はさらに続けた。
「前に!東卍の時に一緒にいるのは危ないってみんなが言った時、私がいても変わらないって言ったじゃん!私が傷つくとかどうでもいいように、どこが危ないの?って言ったじゃん!
マイキーにとってはどうでもいいかもしれない。何とも思ってないなら仕方ないことかもしれないけど。
それでも!私は傷ついたし、ずっと苦しいの。
マイキーが好きだから!
好きな人にそんな風に言われたら私だって傷つくの。
だからもう終わりにしたいの!
ねぇ・・お願いだからほっといてよ。もう疲れたよ。」
ここまで言うつもりはなかったのに、両想いになれないとしても大事な幼馴染でいたかったのに。
けど、自分の気持ちを話し始めたら止まらなくて、気づけば泣きながら感情にまかせてマイキーに当たっていた。
「言いたいことはそれだけ?」
今までとは打って変わって静かな声でたずねられた。
「うん。ごめんね、こんな幼馴染で。でもいつもずっと苦しかったの。マイキーがそばにいてくれても、私と違う気持ちなのわかってたから。
嫉妬する権利なんかないのに、違う女の子といるのを見るのも辛かった。
私が勝手に好きなだけなのに、こんなこと言って、八つ当たりしてごめんなさい。」
もう帰るね、と言って部屋を出ようとした瞬間、また強い力に引っ張られ、気づけばマイキーに抱きしめられていた。
「離してよ・・」
「絶対やだ。
てか、本当に何言ってんの?
ナマエのことがどうでもいいわけないじゃん。
勝手な思い込みで離れようとしてんじゃねーよ。」
「だって、だから前に!」
「ナマエがいたところで何も変わらないのは本当だろ。
危ねー時は俺が守るだけ。
喧嘩とかになった時は、俺の後ろにいりゃいいよ。
誰にも傷つけさせたりしないから、そばにいて。」
あまりの驚きに都合のいい夢を見てるんじゃないかと不安になる。
「マイキーそれって・・」
「まさか、ここまで言って伝わらないわけ?
てか、それこそ今更だろ。お前、昔、俺の嫁になるって言ったの忘れたの?」
は?いや確かに子供の時にエマを含めておままごとに無理矢理付き合わせた時にそんなことよく言ってた気がするけど・・
「え?あれは子供の頃の話で」
「俺はずっと本気だったけど。
つーか、そもそも俺の気持ちなんてとっくに伝わってるもんだと思ってたけど。
あんだけ毎日、変な虫がつかないように牽制してんのに。
鈍い幼馴染もつと苦労が絶えねーわ。」
日に日に可愛くなるし本当に厄介だわ、お前。なんて言われて、ひどい言い草なのに顔が赤くなったいくのが鏡を見なくてもわかる。
「なっ。マイキーに鈍いとか言われたくないよ。ずっとどんな気持ちだったと・・・!」
言い返してる途中で、マイキーの顔がドアップになった。
唇をふさがれ、言葉の続きを言えなくなってしまう。
無理矢理、黙らせるとか本当に信じらんない。
「ごめん。
言葉で言わなくても大丈夫だと勝手に思ってた。
悩ませて、苦しませて、気づかなくてごめん。
ナマエのことが好きだよ。」
いよいよ、ダムにが決壊したように涙が止まらくなった私をマイキーは笑いながらさらに強く抱きしめてくれた。
「お前は俺のだから。もう浮気禁止な。」
してねーわ!!と泣きながら言い返す私の頬をつまんだマイキーは、今度はちょっと長めの優しいキスをしてくれた。
今までのこと思いながら甘えるようにマイキーに抱き着く私は、幸せの絶頂にいて、次の日学校と東卍中に「正式に俺の嫁になった!」と言いふらされ、経験したことないような恥ずかしい目にあうことをまだ知らないのだった。
いや、本当は幼馴染に過去形もなにもないので、今でもその事実は変わらないのだけど。
かつては一緒に道場で空手を習ったし、どこに行くにもマイキーは私を当たり前のように誘ったし、どんな時も一緒にいたと思う。
そんな日々がこれからも当然続くと思っていたけれど、マイキーが他の幼馴染と東卍を結成した時に変化が訪れた。
マイキーは変なとこで鈍いから正式にチームになった後も、別に私がいることを気にしてなかった。
だけど喧嘩が増えるにつれ、私を一緒に連れ出すことに他のメンバーが難色を示したのだ。
特にもう一人の幼馴染である場地の反対はすごかった。
喧嘩になるかもしれない場に女がくるんじゃねぇ、東卍で集まってない時に顔出すくらいにしとけ。とそれはもう耳にタコができるほど聞いた。
場地は場地なりに、私を大切に思ってくれてるのは痛いほどわかるし、何より私自身が総長の時のマイキーはとても遠い存在に思えて、絶対に乗り越えられない壁があると感じ始めていた。
それをきっかけに、場地の言うとおりしようと思うとマイキーに話した時、絵に描いたようなきょとん顔でこう言われたのだ。
「なんで?ナマエがいることでなんか変わる?」
まるでいてもいなくても何も変わらないといった口ぶりにさすがに私も驚いた。
すかさず、ドラケンや場地が危ないだろうがと言ってくれたが、「どこが?」とマイキーは聞き返していた。
場地やドラケンなどに出会うにつれ、マイキーの中の私の立ち位置は低くなっているとは感じていたが、これほどまでに軽んじられていたとは。私が傷つこうがどうでもいいということなのか。
ショックを受ける前にあまりのいい草に腹が立ってしまった。
「変わることがないなら、別にいなくてもいいよね?だったらもう来ないから。」
自分でも驚くほどの低い声で言い放ち、キレた私にビビりながらも送るか?と声をかけてくれたドラケンと場地を無視してその日、初めて1人で家に帰った。
後ろから「感じ悪っ。」ってふざけた声が聞こえたが私は振り返らなかった。
家についてからも怒りの治まらない私は、お風呂に浸かりながらずっとマイキーに腹を立てていた。
だけど軽く扱われて腹が立つのは私がマイキーを好きだからだと気づいてしまい、そのままお湯に沈み込んで泣いた。
自分でも気づいてなかった初恋はこうして、デリカシーのない鈍い幼馴染によって、あっけなく砕かれてしまった。
中学生なったばかりにして、失恋を経験した私は翌日、腫れた目をなんとか化粧でごまかし学校に行こうとした。
玄関を開けると、そこにはいつもと変わらないマイキーと若干気まずそうな顔をしたドラケンがいた。
朝の変わらない光景のはずだけど、なぜそうも普通なのかにまたしても腹が立ってくる。
「なんでいんの?」
「なんでってなにが?え?今日学校休みじゃねーよな?」
給食の献立表にメニュー書いてあったから、休みじゃねーよ?っと訳の分からないことを言いながらマイキーは歩き出してしまう。
デリカシーのなさに唖然としていると何故かドラケンが謝ってくれた。本当に顔に似合わず苦労性だよね。
「そうじゃなくて!昨日の話覚えてないわけ?」
「は?昨日のは東卍の話だろ?しかもお前が勝手に言い出しただけじゃん。」
わけわかんねーこと言ってると遅刻すんぞ。せっかく朝起きたのに。と言いながら歩いていく背中をなんとも言えない感情で眺めていた。
いや、気にしないにもほどがあるだろう・・。
そして、失恋から立ち直れない私をよそにマイキーはその後も本当になにも変わらなかった。
そんなマイキーの様子を見ると、私のことなど本当にどうでもいいんだと感じてしまいさらに傷ついた。
このままじゃいつまでも引きずってしまうと思った私はマイキー達と距離を置くように努力したが、まったく気にすることないマイキーのせいでなかなか上手くいかず、放課後、玄関で待ち構えているマイキーと一緒に帰るのも、そのまま集会に連れていかれるのも変わりなかった。
その様子を見た場地は呆れつつも、もう口出しはしてこなかった。
いや、こっちとしては助けて欲しいんだけど。
それからも私の悩みは解決することはなく、気づけば私たちは2年生になっていた。
このままだと台無しになってしまう私の青春を思い溜息が出た時、友達に話かけられた。
「なんか、おっもい溜息だけど、大丈夫?」
「いや、このままなにもなく私の青春が終わってしまうと思うと思わずね。」
「は?あんだけいつも仲良くしててなんか不満があるの?」
「なにが?」
「だから、彼氏の佐野君と!いつも仲よさそうなのに、なんか不満があるの?」
「え?マイキーとは付き合ってないよ。ただ幼馴染。」
むしろもはや腐れ縁だよ、と言いたいのを我慢する。
「は?!あんたたち付き合ってなかったの?!!」
友達の絶叫が響き渡り、教室がざわつく。
あっちこっちから驚きの声が上がっている。
え?付き合ってると思われてたの?
勘違いされ続けていたことに私も驚いてしまう。
こんなんじゃ、彼氏ができるのなんて夢のまた夢になってしまう。
早急に現状を打開するため、私はとりあえず学校が一緒の頼れる存在であるドラケンを屋上に呼び出した。
「なんだよ。急に呼び出して。サボらすんじゃねーよ。」
「どうせ真面目に授業受けてなんてないでしょ。むしろこっちの一大事に協力してよ。」
するとドラケンは心底嫌そうな顔して「とりあえず聞くだけだからな。」と言った。
一応、友達のはずなのに、ひどい扱いだ。
「マイキー離れしたい。」
「は?!」
「私、マイキーと付き合ってると思われてたらしいの。これは努力してるけど、マイキーと距離が置けてないせいだと思う。このまま真っ暗な青春時代を過ごすのもごめんだし、ちゃんとマイキー離れしたい。それには絶対ドラケンの協力が必要だと思う。」
「なんで俺だよ。」
「ドラケンがマイキーのこと野放しにせず、ちゃんとの捕まえててくれれば私は自由になれるでしょ。そのまま集会でもなんでも連れてっちゃってほしい。」
俺はアイツの飼育係がなんかか!とキレるドラケンを何とか宥めて懇願する。
「はぁ。お前の考えはわかったけどよ。本当にそれでいいのか?」
「私だっていつまでも報われない恋をしてるは辛いんだよ。それよりは他の人に彼氏になってもらえるように頑張る方が前向きな努力でいいと思わない?」
「苦労するな」と言われたので、頑張るよって答えたら「お前じゃねーよ」と返され意味が分からなかった。
「とりあえず、今日は早めに集まるつもりだったし、放課後すぐ捕まえとくわ。その隙に前向きな努力とやらでもしとけ。」
「うん。ありがと!」
とはいったものの、今日の今日で何もできないだろうなと思いつつ、マイキーがいない放課後自体が久しぶりなので、友達を誘って寄り道でもしようかと考えていた。
「あ、ミョウジ!」
「ん?」
振り返るとそこには最近、さわやかでカッコいいと騒がれているサッカー部のエース君がいた。
確か同じ小学校だった気がする。
「あのさ、さっき教室で言ってた、佐野と付き合ってないって話本当?」
「うん。本当だけど。」
すると、少し嬉しそうな顔をしてこう続けた。
「実は前からミョウジと仲良くなりたいなって思ってて。もしよかったら放課後どっか行かない?今日部活休みなんだ。」
「え?!うん。行きたい!ありがとう。」
早速モテ期到来か?と嬉しくなる。
さわやかだし、なんか憎めないキャラに好感が持てる。
日直だから少し待っててほしいと言われ、たいした化粧はしてないがチェックと直しの時間が欲しいと思っていたところなので快諾する。
「じゃあ、放課後に」と少し照れたような顔して、去っていった彼をみてこちらもドキドキしてしまう。
放課後大急ぎで化粧を直し、髪型チェックをした後、急いで昇降口まで向かう。
「待たせてごめんなさい。」
「全然。こっちも今来たとこだから。」
まるで少女漫画のようなやりとりにむず痒くなってくる。
でもいつも、待ち合わせしてるわけでもないのに、遅いだの、待ちすぎてお腹空いただの言ってくるマイキーのことを考えると大違いだ。
駅まで歩いた後にクレープを買い食いして、その後は気になっていた雑貨店に付き合ってもらう。
その間も彼は私がが疲れたり退屈しないように気配りをしてくれた。
タメだというのに感心してしまう。
モテると騒がれるわけだ。
通りかかったショップのウィンドウに飾ってあるヘアピンに目が留まる。
すると横から
「あのピン、ミョウジに似合いそうだね。」
「え?そうかな?」
「うん。つけてるとこ見てみたいな。今日の記念にプレゼントしてもいいかな?」
「そんな悪いし、いいよ。」
「遠慮しないで、俺が何か残ることしたくなっただけだし。」
そのピンは確かにデザインは好みなのだが、色が少し自分には派手に思えてそこまで興味をそそられないというのが正直な気持ちなのだ。
それにさすがに今日、出かけたのが初めて相手に買ってもらうのは遠慮したい。
「とりあえずちょっと中入ってみようよ。」
「いや、本当大丈夫だから。」
「本当にそんなに遠慮しなくても・・「ナマエはそんな派手な色、好きじゃねーんだよ。もっと淡いのが好みなの。」」
突然の声に驚き振り返るとそこには不機嫌な顔をしたマイキーがいた。
「え?マイキーなんでここに?」
「なんでじゃねーよ。お前こそこんなとこで何やってんの?」
質問で返されてしまい、言葉に詰まる。というか本当にどうしてここに?集まりってことは集会かなんかじゃないのだろうか?
疑問に思いながら携帯に目をやるとドラケンからのメールが来ていた。
内容は「わりぃ。マイキーがいなくなった」とあった。
いや、遅いし!なんでちゃんと見てないんだと面と向かって言うには勇気がいることを毒づく。
「俺から誘って、ミョウジに付き合ってもらってたんだよ。」
私を庇う様に少し前に立ち、説明をしてくれた。
そのとたんマイキーの眉間には深い皺が刻まれ、まずいと思った。
「あ?勝手に連れてかれると困んだけど。」
底を這うようなマイキーの低い声が聞こえ、空気が凍りつく。
それでも彼は庇う様に言ってくれた。
「佐野とミョウジは付き合ってないって聞いたんだけど。俺が誘うのに問題あった?」
「付き合うも何もコイツは俺のなの。外野が横やり入れてんじゃねーよ。」
なにかすごいことを言われた気がして、驚いていると行くよっと強く腕を引っ張られた。
せっかく誘ってくれた彼は茫然と立っていて聞こえているかは疑問だが、ごめんね!と大きな声で伝えた。
その間もマイキーの歩く速度は変わらず、引きずられるまま、気づけば佐野家内のマイキーの部屋にたどり着いていた。
怒っているのは分かるが何も言わないマイキーにどうしたもんかと思い、困ってしまう。
そもそもなんでこんなに怒ってるんだろうか。
意を決して口を開こうとした時、顔のすぐの横でドンっとものすごい音がした。
見ると私の顔の横の壁にマイキーの拳があって、普通ならときめくはずの壁ドンもキレたマイキーがやると、ただの暴力シーンだなと他人事のように思った。
「さっきの何?まさかアイツと付き合うつもりなわけ?」
マイキーの迫力に押されつつも何とか反論する。
「それマイキーに関係あるの?」
「本気で言ってんのか?」
怒りながらも少し傷ついた顔になったマイキーに戸惑うが、ここで折れるわけにはいかない。
私だってもうこの苦しい状態から解放されたい。
「なんでそんなに怒ってるの?私のことなんかどうでもいいんでしょ?もうお願いだからほっといてよ。」
「はあ?」
意味がわからないといった顔のマイキーに怒りを覚えた私はさらに続けた。
「前に!東卍の時に一緒にいるのは危ないってみんなが言った時、私がいても変わらないって言ったじゃん!私が傷つくとかどうでもいいように、どこが危ないの?って言ったじゃん!
マイキーにとってはどうでもいいかもしれない。何とも思ってないなら仕方ないことかもしれないけど。
それでも!私は傷ついたし、ずっと苦しいの。
マイキーが好きだから!
好きな人にそんな風に言われたら私だって傷つくの。
だからもう終わりにしたいの!
ねぇ・・お願いだからほっといてよ。もう疲れたよ。」
ここまで言うつもりはなかったのに、両想いになれないとしても大事な幼馴染でいたかったのに。
けど、自分の気持ちを話し始めたら止まらなくて、気づけば泣きながら感情にまかせてマイキーに当たっていた。
「言いたいことはそれだけ?」
今までとは打って変わって静かな声でたずねられた。
「うん。ごめんね、こんな幼馴染で。でもいつもずっと苦しかったの。マイキーがそばにいてくれても、私と違う気持ちなのわかってたから。
嫉妬する権利なんかないのに、違う女の子といるのを見るのも辛かった。
私が勝手に好きなだけなのに、こんなこと言って、八つ当たりしてごめんなさい。」
もう帰るね、と言って部屋を出ようとした瞬間、また強い力に引っ張られ、気づけばマイキーに抱きしめられていた。
「離してよ・・」
「絶対やだ。
てか、本当に何言ってんの?
ナマエのことがどうでもいいわけないじゃん。
勝手な思い込みで離れようとしてんじゃねーよ。」
「だって、だから前に!」
「ナマエがいたところで何も変わらないのは本当だろ。
危ねー時は俺が守るだけ。
喧嘩とかになった時は、俺の後ろにいりゃいいよ。
誰にも傷つけさせたりしないから、そばにいて。」
あまりの驚きに都合のいい夢を見てるんじゃないかと不安になる。
「マイキーそれって・・」
「まさか、ここまで言って伝わらないわけ?
てか、それこそ今更だろ。お前、昔、俺の嫁になるって言ったの忘れたの?」
は?いや確かに子供の時にエマを含めておままごとに無理矢理付き合わせた時にそんなことよく言ってた気がするけど・・
「え?あれは子供の頃の話で」
「俺はずっと本気だったけど。
つーか、そもそも俺の気持ちなんてとっくに伝わってるもんだと思ってたけど。
あんだけ毎日、変な虫がつかないように牽制してんのに。
鈍い幼馴染もつと苦労が絶えねーわ。」
日に日に可愛くなるし本当に厄介だわ、お前。なんて言われて、ひどい言い草なのに顔が赤くなったいくのが鏡を見なくてもわかる。
「なっ。マイキーに鈍いとか言われたくないよ。ずっとどんな気持ちだったと・・・!」
言い返してる途中で、マイキーの顔がドアップになった。
唇をふさがれ、言葉の続きを言えなくなってしまう。
無理矢理、黙らせるとか本当に信じらんない。
「ごめん。
言葉で言わなくても大丈夫だと勝手に思ってた。
悩ませて、苦しませて、気づかなくてごめん。
ナマエのことが好きだよ。」
いよいよ、ダムにが決壊したように涙が止まらくなった私をマイキーは笑いながらさらに強く抱きしめてくれた。
「お前は俺のだから。もう浮気禁止な。」
してねーわ!!と泣きながら言い返す私の頬をつまんだマイキーは、今度はちょっと長めの優しいキスをしてくれた。
今までのこと思いながら甘えるようにマイキーに抱き着く私は、幸せの絶頂にいて、次の日学校と東卍中に「正式に俺の嫁になった!」と言いふらされ、経験したことないような恥ずかしい目にあうことをまだ知らないのだった。
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