短編
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昔から私の表情筋の動きは鈍かった。
そのせいで感情がわかりにくいのか、小学校の高学年ですでに、よくてクールな人、悪い時は鉄仮面と呼ばれていた。
中学生になり、学校一ひいてはこの辺一帯で一番の不良と言われているマイキーの隣の席になった時はそれはそれは驚いたし、なぜか話しかけられ付きまとわれるようになった時は、途轍もなく恐怖を感じた。
なのに、動かない表情筋のせいでそれらの感情は相手に伝わることなく、どんどんマイキーのペースのみ込まれていった。
そしてしばらくして不良なんて言われてるけど、優しいマイキーに惹かれている自分に気づいた。
けど、ただの気まぐれと物珍しさからの私を気にかけてるんだと思っていたから付き合おうと言われた時は信じられなかったし、今でも何かの間違いじゃないかと思っている。
すごく嬉しかったのに、笑顔を作ることもできず、うなずくだけの私をマイキーは抱きしめてくれたが、私がどれだけ嬉しかったかは伝わってないと思う。
集会に連れていかれて「嫁のナマエ!」と紹介された時も恥ずかしくて俯いてばかりだった。
顔を上げた時、それを見ていたみんなも浮かない顔をしていた。
本当はとても嬉しかったのに。
マイキーは意外にも恋人に甘いタイプで、優しく甘やしてくれる。
ただその度に嬉しさを表現できず、下を向いてばかりの自分に嫌気さしていて、こんなんじゃ近いうちフラれるなというが最近の私の悩みだ。
「ナマエ~!!今日どっか行こうか?家までバブ取りにいこう!」
放課後になった瞬間、マイキーは私の手を引いて教室を出る。
授業が終わったとたんの元気になる様子に、本当にいつも給食のためだけに登校してるんだなと呆れつつも、子供みたいな笑顔にこちらまで笑顔になる。おそらくは伝わってないけど。
最近は朝から教室にいることも多くてなぜか、ドラケン君に感謝されたっけ?
「今日は何か用があるんじゃなったの?」
「大した用じゃないし、ナマエと出かけたい気分になったから、ケンチンにお願いした。」
「そっか。」
ここで、嬉しいとかせめて笑顔でありがとうとか言えよ自分!と思うがそんなこと絶対できない。もう、本当に自己嫌悪だ。
返事をしたあと下を向きそのまま繋がれた手を頼りに歩いていく。
「とりあえずたい焼き買いたいな。そのあと海にでも行く?」
「昨日、どら焼き食べてなかった?」
「まったく別物じゃん。ナマエの分もいれて5個かなー?」
どういう配分?というか形が違うだけじゃない?と思いつつ楽しくなってくる。
これがもっと伝わるように表現出来たらなと我に返って、かぶったヘルメットに隠れてため息をつきながら、マイキーの腰に手を回す。
そんな表情すべてがミラーに映っていてマイキーに見られていたとも知らずに。
「もうこの時間は少し冷えるな。」
呟くマイキーに、反応しつつ夕日を眺めながら散歩する。
なんか雰囲気たっぷりのデートのはずなのに、最近は例の悩みが頭から離れないせいか、いまいち心が盛り上がらない。
そんな私を見るのに飽きたのかマイキーは突然しゃがみ込み砂遊びを始めた。
黙ってるばっかりだし、つまらなかったかな?と思いながらも、夕日をそのまま眺めていた。
怒ると怖いし、総長な時は近寄りがたいけど、顔はいいし、女の子には優しいからモテると思う。
なんで私なのかは、付き合ってしばらくたつけど本当に謎だ。
やっぱり何かの間違い?それとも罰ゲームかな?
まあ、マイキーが勝負事に負けて罰ゲームを受けるとか想像できないけど。
そんなことをぐるぐる考えていたら突然マイキーに呼ばれた。
「ナマエみてー。理想の大きさのたい焼き!」
そこには砂で作られた、なかなかの大きさでクオリティの高いたい焼きがあった。
「何これ・・?」
「だからたい焼き!1個がこれくらいの大きさとか理想じゃない?」
さっきから何もしゃべらないと思ってたらこんな物つくってたの?
暴走族の総長でいろんな人に恐れられてるマイキーが??
「ふっ!ふふ!何を真剣やってるのかと思ったら、、吹き出しちゃったじゃない。」
思わず笑いが込み上げてきた私をマイキーは満足そうな笑顔で見ていた。
「やった。やっと笑ったね。ナマエのその顔ひさびさ!」
なんか最近元気なさそうだったからさー、なんて何でもないように続けながらマイキーはゆっくりしたペースで歩いていく。
え?もしかして今日ここに来たのは、私のため?悩んでるの気づかれてたの?
普段、家族にさえ感情が伝わらないことがあるのに、マイキーの言葉に驚きを隠せなかった。
「なに?その顔。そりゃ彼女が元気なければ気づくでしょ。」
そっか。マイキーは気づいてくれたのか、本当に優しいな。
そして話を聞き出すわけでもわけでもなく、私のことを考えてここまで連れてきてくれたんだ。
そのことに気づくと嬉しい気持ちがあふれ出す。
「ね、マイキー」
「んー?」
「ありがとう。」
あふれ出した嬉しさで自分でも笑顔になったのでは?と思うくらい気持ちを込めてお礼を言う。
だけど、やっぱりうまく表情筋が動いてないのか、伝わらなかったようで、ちょっとだけ不機嫌そうな顔をしたマイキーが「もう帰ろっか。」と言って、バブが置いてある方に歩いて行ってしまった。
あぁここまでしたのに、可愛い笑顔でお礼一つちゃんと言えない奴にあきれてるんだな。
せっかく楽しそうにしてくれてたのに、失敗しちゃったな。
膨らんだ気持ちが、しぼんでいくのを感じながらその日はそのまま帰途についた。
次の日、昨日ことを引きずりながら学校に向かう。
ついてないことにその日は日直で、昼休みを使って授業で使った教材を資料室に返却しにいく。
そういえば、今日はまだマイキーの顔みてない。給食、揚げパンじゃないしパスしたのかな?
なんてことを思って歩いていると、ちょっと派手な格好の女子に呼び止められる。
「ミョウジさん、今日マイキー君って学校来てるの?」
「いや、教室でも見てないし、今日は来てないと思うよ。」
適当に答えて教室に戻ろうとしたところ
「てかさ、最近やたら一緒にいるよね?まさか付き合ってるとかじゃないよね?」
「え?」
なんて答えようか考えているとその間が気に障ったのか、少し苛立ったようにさらに続けて聞かれる。
「そんなことないよね?マイキー君、可愛い子がタイプって言ってたし。」
ああ、そんなこと聞きたくないんだけど。と心の中で悪態をつきながらもやっぱりと思う。
私がマイキーのタイプなわけないか。
「まさか好きな人とか言わないよね。ミョウジさんとマイキー君とか全然つり合ってないし。」
好きになるのに、つり合いとか必要なのか?苛立ちを感じながらもこれ以上続けるのがしんどくて話を切り上げようとする。
何より私が可愛くないのは事実だ。
「別に、私はマイ、佐野君のことは何とも」
「ふーん。俺のことの何とも思ってないんだ?」
「え?!」
振りむくとそこには見たこともないくらい怖い顔したマイキーがいた。
「学校きてたの?」
「さっきね。それより何?俺ってナマエの彼氏じゃなかったの?」
返事が出来ないでいる内に私に絡んでいた女子が勇敢にもマイキーに話しかける。
「マイキー君、そんなことよりどっか行かない?一緒にサボろうよ。」
「は?つか、誰お前?気安く話かけんな。」
底冷えするようなマイキーの声と表情に女子は固まっていた。
そして私も
「ごめんなさい。」
「あ!ちょっと!!」
一言告げると顔も見ずに逃げ出した。
どうしよう、めちゃくちゃ怒ってた。やっぱり私じゃだめだよ。
人の目を避けてひたすら走っていたら、よくわからないが中庭にたどり着いていた。
もうこのまま帰ろうかな、でも荷物どうしよう。
荷物だけ取りに行ってそのまま早退しようと振り返るとマイキーが立っていた。
そりゃ、逃げ切れるわけないか。
「あらためて聞くけど、さっきの何?付き合ってると思ってたの俺だけ?
それともナマエはイヤイヤ付き合ってたの?」
怒りをあらわにしながら、聞かれたその問いに何も答えることが出来ないでいた。
しばらく沈黙が続いた後、「もういいよ。」とマイキーはどこかへ行こうとする。
「違うよ。本当は付き合ってるってちゃんと言いたかった!」
やっと言葉を絞りだしたけど、マイキーは振り返ってはくれず、「じゃあ、なんで?」と静かに言葉だけ返ってきた。
「だって、私可愛くないから。」
「は?!」
今度はマイキーが勢いよく振り返る。
「いつも表情乏しいし、何考えてるかよくわからないってよく言われるし。しまいには鉄仮面って言われるし!けど、マイキーはカッコいいしモテるじゃん!さっきつり合ってないって言われた時も、ああって自分でも納得しちゃったの!なんでこんなのと付き合ってるのかって思うし。」
「それがナマエが最近悩んでたこと?」
「そうだよ!きっとマイキーも内心つまらない奴と思ってるだろうなって。それならマイキーは別れてもっと可愛い子と付き合った方が幸せだろうなって・・」
そこまで言ったところで、勢いよくマイキーに抱きしめられた。
ぶつけた鼻が痛い。
「それ以上言うと本当に怒るけど。」
「なんで怒るのぉ・・・?」
もう、勝手に出てきた涙が止まらない。
「全然わかってないから。いくらナマエでも俺の好きな人のことそんな風に言っちゃダメ。」
「でも、、、鉄仮面だし、それに」
「席となりになって初めて話した時に一目惚れした。」
「え?」
「隣になって声かけた時、めちゃくちゃビビってんのわかって、別に女子にとはかかわらなくても困らないし、適当に切り上げようと思ってさ。
給食の時以外ほとんどいないから安心してって言ったら、ナマエが可笑しそうに笑ったんだよ。
それはだめでしょ?って。その笑顔がめちゃくちゃ可愛くて一目惚れ。
絶対、口説き落とすって決めたの。他の奴に持っていかれてたまるかって。」
だから、いきなり学校来るようになったのか。
「それにナマエはいつも可愛いよ。俯いて隠そうとする照れた笑顔とか本当にたまんない。
集会で紹介した時、それ見てニヤついてる奴にマジで腹立ってガンつけちゃったし。」
あの時のみんなの表情ってまさか横にいたマイキーを恐れて・・?
初めて聞く驚愕の事実に戸惑うばかりだ。
「悩んでるのもすぐわかるし、悩んでるところも可愛いんだけど、気づいちゃえば笑ってほしくなる。
それくらいナマエがめちゃくちゃ好き。だから別れるとか言うの禁止。」
いたずらっぽくも優しく気持ちを伝えてくれるマイキーの顔をみて、嬉しくなる。
だけど、先に謝らないと。
「マイキー、ごめんね。」
「んー。どうしよっかな。傷ついたしお仕置きかな。」
傷ついたんじゃなくて怒ってただけじゃん。こっちだってめちゃくちゃ怖かったのに。
でもまぁ、しょうがないか。デコピンとかで済むといいんだけど・・。
「わかった。でもあんまり痛いことはなしね。」
「大丈夫。そんなことしない。すぐ済むよ。」
「え?なに・・」
何をするの?と聞こうとして言葉が続かなかった。
気づいたら、マイキーの顔がピントが合わないくらい近くにあって、お互いの唇がくっついていた。
「昨日の海でもめちゃくちゃ可愛い顔するから、ヤバかったの。でもあのままキスすると止まらなくなりそうだったし。
色々、我慢してる彼氏の苦労も考えてね。」
「な、止まらないって・・・」
「試してみる?」
「い、いいよ!マイキーのばか!」
「はは。まあそれはまた今度ね。」
今度という言葉に少なからず戸惑うが、あっさり奪われたファーストキスの衝撃が大きくて、顔が赤くなってるのがさすがの私でもよくわかる。
「ナマエ、大好き。俺にはちゃんとナマエの気持ち伝わってるよ。だから悩んで辛くなる前にもっと俺を頼ってよ。」
愛おしそうな優しい目で伝えてくれる。
「ありがとう。私も大好きだよ。」
そう返せば、眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。
きっとこれからも悩むことはあるだろうし、すれ違う時もあるだろう。
でも、いつだって優しく包み込んでくれるマイキーのためにもっと伝える努力をしよう。
これからもずっと一緒にいるために。
そう思いながら、まだまだぎこちない笑顔を返したら、マイキーは照れた顔して俯いたのだった。
そのせいで感情がわかりにくいのか、小学校の高学年ですでに、よくてクールな人、悪い時は鉄仮面と呼ばれていた。
中学生になり、学校一ひいてはこの辺一帯で一番の不良と言われているマイキーの隣の席になった時はそれはそれは驚いたし、なぜか話しかけられ付きまとわれるようになった時は、途轍もなく恐怖を感じた。
なのに、動かない表情筋のせいでそれらの感情は相手に伝わることなく、どんどんマイキーのペースのみ込まれていった。
そしてしばらくして不良なんて言われてるけど、優しいマイキーに惹かれている自分に気づいた。
けど、ただの気まぐれと物珍しさからの私を気にかけてるんだと思っていたから付き合おうと言われた時は信じられなかったし、今でも何かの間違いじゃないかと思っている。
すごく嬉しかったのに、笑顔を作ることもできず、うなずくだけの私をマイキーは抱きしめてくれたが、私がどれだけ嬉しかったかは伝わってないと思う。
集会に連れていかれて「嫁のナマエ!」と紹介された時も恥ずかしくて俯いてばかりだった。
顔を上げた時、それを見ていたみんなも浮かない顔をしていた。
本当はとても嬉しかったのに。
マイキーは意外にも恋人に甘いタイプで、優しく甘やしてくれる。
ただその度に嬉しさを表現できず、下を向いてばかりの自分に嫌気さしていて、こんなんじゃ近いうちフラれるなというが最近の私の悩みだ。
「ナマエ~!!今日どっか行こうか?家までバブ取りにいこう!」
放課後になった瞬間、マイキーは私の手を引いて教室を出る。
授業が終わったとたんの元気になる様子に、本当にいつも給食のためだけに登校してるんだなと呆れつつも、子供みたいな笑顔にこちらまで笑顔になる。おそらくは伝わってないけど。
最近は朝から教室にいることも多くてなぜか、ドラケン君に感謝されたっけ?
「今日は何か用があるんじゃなったの?」
「大した用じゃないし、ナマエと出かけたい気分になったから、ケンチンにお願いした。」
「そっか。」
ここで、嬉しいとかせめて笑顔でありがとうとか言えよ自分!と思うがそんなこと絶対できない。もう、本当に自己嫌悪だ。
返事をしたあと下を向きそのまま繋がれた手を頼りに歩いていく。
「とりあえずたい焼き買いたいな。そのあと海にでも行く?」
「昨日、どら焼き食べてなかった?」
「まったく別物じゃん。ナマエの分もいれて5個かなー?」
どういう配分?というか形が違うだけじゃない?と思いつつ楽しくなってくる。
これがもっと伝わるように表現出来たらなと我に返って、かぶったヘルメットに隠れてため息をつきながら、マイキーの腰に手を回す。
そんな表情すべてがミラーに映っていてマイキーに見られていたとも知らずに。
「もうこの時間は少し冷えるな。」
呟くマイキーに、反応しつつ夕日を眺めながら散歩する。
なんか雰囲気たっぷりのデートのはずなのに、最近は例の悩みが頭から離れないせいか、いまいち心が盛り上がらない。
そんな私を見るのに飽きたのかマイキーは突然しゃがみ込み砂遊びを始めた。
黙ってるばっかりだし、つまらなかったかな?と思いながらも、夕日をそのまま眺めていた。
怒ると怖いし、総長な時は近寄りがたいけど、顔はいいし、女の子には優しいからモテると思う。
なんで私なのかは、付き合ってしばらくたつけど本当に謎だ。
やっぱり何かの間違い?それとも罰ゲームかな?
まあ、マイキーが勝負事に負けて罰ゲームを受けるとか想像できないけど。
そんなことをぐるぐる考えていたら突然マイキーに呼ばれた。
「ナマエみてー。理想の大きさのたい焼き!」
そこには砂で作られた、なかなかの大きさでクオリティの高いたい焼きがあった。
「何これ・・?」
「だからたい焼き!1個がこれくらいの大きさとか理想じゃない?」
さっきから何もしゃべらないと思ってたらこんな物つくってたの?
暴走族の総長でいろんな人に恐れられてるマイキーが??
「ふっ!ふふ!何を真剣やってるのかと思ったら、、吹き出しちゃったじゃない。」
思わず笑いが込み上げてきた私をマイキーは満足そうな笑顔で見ていた。
「やった。やっと笑ったね。ナマエのその顔ひさびさ!」
なんか最近元気なさそうだったからさー、なんて何でもないように続けながらマイキーはゆっくりしたペースで歩いていく。
え?もしかして今日ここに来たのは、私のため?悩んでるの気づかれてたの?
普段、家族にさえ感情が伝わらないことがあるのに、マイキーの言葉に驚きを隠せなかった。
「なに?その顔。そりゃ彼女が元気なければ気づくでしょ。」
そっか。マイキーは気づいてくれたのか、本当に優しいな。
そして話を聞き出すわけでもわけでもなく、私のことを考えてここまで連れてきてくれたんだ。
そのことに気づくと嬉しい気持ちがあふれ出す。
「ね、マイキー」
「んー?」
「ありがとう。」
あふれ出した嬉しさで自分でも笑顔になったのでは?と思うくらい気持ちを込めてお礼を言う。
だけど、やっぱりうまく表情筋が動いてないのか、伝わらなかったようで、ちょっとだけ不機嫌そうな顔をしたマイキーが「もう帰ろっか。」と言って、バブが置いてある方に歩いて行ってしまった。
あぁここまでしたのに、可愛い笑顔でお礼一つちゃんと言えない奴にあきれてるんだな。
せっかく楽しそうにしてくれてたのに、失敗しちゃったな。
膨らんだ気持ちが、しぼんでいくのを感じながらその日はそのまま帰途についた。
次の日、昨日ことを引きずりながら学校に向かう。
ついてないことにその日は日直で、昼休みを使って授業で使った教材を資料室に返却しにいく。
そういえば、今日はまだマイキーの顔みてない。給食、揚げパンじゃないしパスしたのかな?
なんてことを思って歩いていると、ちょっと派手な格好の女子に呼び止められる。
「ミョウジさん、今日マイキー君って学校来てるの?」
「いや、教室でも見てないし、今日は来てないと思うよ。」
適当に答えて教室に戻ろうとしたところ
「てかさ、最近やたら一緒にいるよね?まさか付き合ってるとかじゃないよね?」
「え?」
なんて答えようか考えているとその間が気に障ったのか、少し苛立ったようにさらに続けて聞かれる。
「そんなことないよね?マイキー君、可愛い子がタイプって言ってたし。」
ああ、そんなこと聞きたくないんだけど。と心の中で悪態をつきながらもやっぱりと思う。
私がマイキーのタイプなわけないか。
「まさか好きな人とか言わないよね。ミョウジさんとマイキー君とか全然つり合ってないし。」
好きになるのに、つり合いとか必要なのか?苛立ちを感じながらもこれ以上続けるのがしんどくて話を切り上げようとする。
何より私が可愛くないのは事実だ。
「別に、私はマイ、佐野君のことは何とも」
「ふーん。俺のことの何とも思ってないんだ?」
「え?!」
振りむくとそこには見たこともないくらい怖い顔したマイキーがいた。
「学校きてたの?」
「さっきね。それより何?俺ってナマエの彼氏じゃなかったの?」
返事が出来ないでいる内に私に絡んでいた女子が勇敢にもマイキーに話しかける。
「マイキー君、そんなことよりどっか行かない?一緒にサボろうよ。」
「は?つか、誰お前?気安く話かけんな。」
底冷えするようなマイキーの声と表情に女子は固まっていた。
そして私も
「ごめんなさい。」
「あ!ちょっと!!」
一言告げると顔も見ずに逃げ出した。
どうしよう、めちゃくちゃ怒ってた。やっぱり私じゃだめだよ。
人の目を避けてひたすら走っていたら、よくわからないが中庭にたどり着いていた。
もうこのまま帰ろうかな、でも荷物どうしよう。
荷物だけ取りに行ってそのまま早退しようと振り返るとマイキーが立っていた。
そりゃ、逃げ切れるわけないか。
「あらためて聞くけど、さっきの何?付き合ってると思ってたの俺だけ?
それともナマエはイヤイヤ付き合ってたの?」
怒りをあらわにしながら、聞かれたその問いに何も答えることが出来ないでいた。
しばらく沈黙が続いた後、「もういいよ。」とマイキーはどこかへ行こうとする。
「違うよ。本当は付き合ってるってちゃんと言いたかった!」
やっと言葉を絞りだしたけど、マイキーは振り返ってはくれず、「じゃあ、なんで?」と静かに言葉だけ返ってきた。
「だって、私可愛くないから。」
「は?!」
今度はマイキーが勢いよく振り返る。
「いつも表情乏しいし、何考えてるかよくわからないってよく言われるし。しまいには鉄仮面って言われるし!けど、マイキーはカッコいいしモテるじゃん!さっきつり合ってないって言われた時も、ああって自分でも納得しちゃったの!なんでこんなのと付き合ってるのかって思うし。」
「それがナマエが最近悩んでたこと?」
「そうだよ!きっとマイキーも内心つまらない奴と思ってるだろうなって。それならマイキーは別れてもっと可愛い子と付き合った方が幸せだろうなって・・」
そこまで言ったところで、勢いよくマイキーに抱きしめられた。
ぶつけた鼻が痛い。
「それ以上言うと本当に怒るけど。」
「なんで怒るのぉ・・・?」
もう、勝手に出てきた涙が止まらない。
「全然わかってないから。いくらナマエでも俺の好きな人のことそんな風に言っちゃダメ。」
「でも、、、鉄仮面だし、それに」
「席となりになって初めて話した時に一目惚れした。」
「え?」
「隣になって声かけた時、めちゃくちゃビビってんのわかって、別に女子にとはかかわらなくても困らないし、適当に切り上げようと思ってさ。
給食の時以外ほとんどいないから安心してって言ったら、ナマエが可笑しそうに笑ったんだよ。
それはだめでしょ?って。その笑顔がめちゃくちゃ可愛くて一目惚れ。
絶対、口説き落とすって決めたの。他の奴に持っていかれてたまるかって。」
だから、いきなり学校来るようになったのか。
「それにナマエはいつも可愛いよ。俯いて隠そうとする照れた笑顔とか本当にたまんない。
集会で紹介した時、それ見てニヤついてる奴にマジで腹立ってガンつけちゃったし。」
あの時のみんなの表情ってまさか横にいたマイキーを恐れて・・?
初めて聞く驚愕の事実に戸惑うばかりだ。
「悩んでるのもすぐわかるし、悩んでるところも可愛いんだけど、気づいちゃえば笑ってほしくなる。
それくらいナマエがめちゃくちゃ好き。だから別れるとか言うの禁止。」
いたずらっぽくも優しく気持ちを伝えてくれるマイキーの顔をみて、嬉しくなる。
だけど、先に謝らないと。
「マイキー、ごめんね。」
「んー。どうしよっかな。傷ついたしお仕置きかな。」
傷ついたんじゃなくて怒ってただけじゃん。こっちだってめちゃくちゃ怖かったのに。
でもまぁ、しょうがないか。デコピンとかで済むといいんだけど・・。
「わかった。でもあんまり痛いことはなしね。」
「大丈夫。そんなことしない。すぐ済むよ。」
「え?なに・・」
何をするの?と聞こうとして言葉が続かなかった。
気づいたら、マイキーの顔がピントが合わないくらい近くにあって、お互いの唇がくっついていた。
「昨日の海でもめちゃくちゃ可愛い顔するから、ヤバかったの。でもあのままキスすると止まらなくなりそうだったし。
色々、我慢してる彼氏の苦労も考えてね。」
「な、止まらないって・・・」
「試してみる?」
「い、いいよ!マイキーのばか!」
「はは。まあそれはまた今度ね。」
今度という言葉に少なからず戸惑うが、あっさり奪われたファーストキスの衝撃が大きくて、顔が赤くなってるのがさすがの私でもよくわかる。
「ナマエ、大好き。俺にはちゃんとナマエの気持ち伝わってるよ。だから悩んで辛くなる前にもっと俺を頼ってよ。」
愛おしそうな優しい目で伝えてくれる。
「ありがとう。私も大好きだよ。」
そう返せば、眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。
きっとこれからも悩むことはあるだろうし、すれ違う時もあるだろう。
でも、いつだって優しく包み込んでくれるマイキーのためにもっと伝える努力をしよう。
これからもずっと一緒にいるために。
そう思いながら、まだまだぎこちない笑顔を返したら、マイキーは照れた顔して俯いたのだった。