雨の日も悪くない
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「なんのことでしょうか。」
兵助の真剣な問いかけに、沙知は笑顔で、はぐらかした。
彼の問いかけに白黒ハッキリと答えてしまえば、関係性が変わってしまう。
そんな気がしたからだ。
「惚けてなんていないで、ハッキリ答えて。」
「惚けてなんていません。それにハッキリなんてさせる必要なんてないでしょう。私の答えは先ほど申し上げたとおりですから」
恋は忍の三禁の一つで、恋は結婚するときに邪魔になるもの。
だから恋はしない。
それが沙知の答えだ。
だから、兵助の好きな人が沙知だった場合、それを理由に断っているのだが、彼は納得しない。
「その答えは千川の立場での回答だろう?千川の気持ちじゃない。」
沙知が自身の気持ちから逃げないようにと思い、兵助は彼女の腕を更に強く握れば、沙知は顔をしかめた。
「私の気持ちですか。そんなのわかりません。ただ、わかるのは死んでほしくない。それだけです。久々知くんには、幸せでいてほしいって、それだけです」
沙知は、兵助のことを好きか嫌いかはわからない。
ただ実家の忍び集団には入隊してほしくないことだけはわかる。
死者が出る入隊試験も、若手には厳しすぎる訓練も受けてほしくない。
実家の忍び集団で生きていくということは、他の忍び集団で生きていくより、はるかに難しいのだ。
むろん、その分、他と比べれば、福利厚生は充実しており、給金もはずむのだが、命と比べたらはるかに安い。
「その気持ちはさ、勘右衛門や雷蔵、三郎達にもある?それとも俺だけ?」
ズイッと顔を近づけて兵助が問えば沙知は口を開く。
「‥たぶん、そうです。考えたことなかったですけど、同じことを言われれば、きっとそう返します」
同級生達はもちろん、先輩も後輩もそんな目にあってほしくはない。
それが沙知の気持ちだ。
「そう。なら、千川は俺に対して特別な情は持っていないってことだね。でも、俺は諦めないから。千川が安心できるくらい、強くなって、千川が抱えてる不安を消して、そして、ちゃんと俺を好きになってもらうから」
兵助が捉えた沙知の腕に、もう力は込められていない。沙知は、いつでも振りほどけるはずなのだが、彼女は腕を振り切ることなどしなかった。
「さて、学園に戻ろう。こんな雨じゃ、身体も冷えるしな」
沙知の腕を離し、いつもと同じトーンで語る兵助に対して、沙知は小さく頷いた。
兵助は、沙知が自分を好きになってもらえるように覚悟を決めた、この日は雨の日は悪くないと思い、彼女の歩調に合わせて歩みだす。
一方、沙知は、彼の気持ちに困惑しつつも、心のどこかで生まれた新たな感情を必死に押しつぶしていた。しかしこの気持ちが生まれてしまった、この雨の日は悪くないと思いながら、歩き始めたのだった。
兵助の真剣な問いかけに、沙知は笑顔で、はぐらかした。
彼の問いかけに白黒ハッキリと答えてしまえば、関係性が変わってしまう。
そんな気がしたからだ。
「惚けてなんていないで、ハッキリ答えて。」
「惚けてなんていません。それにハッキリなんてさせる必要なんてないでしょう。私の答えは先ほど申し上げたとおりですから」
恋は忍の三禁の一つで、恋は結婚するときに邪魔になるもの。
だから恋はしない。
それが沙知の答えだ。
だから、兵助の好きな人が沙知だった場合、それを理由に断っているのだが、彼は納得しない。
「その答えは千川の立場での回答だろう?千川の気持ちじゃない。」
沙知が自身の気持ちから逃げないようにと思い、兵助は彼女の腕を更に強く握れば、沙知は顔をしかめた。
「私の気持ちですか。そんなのわかりません。ただ、わかるのは死んでほしくない。それだけです。久々知くんには、幸せでいてほしいって、それだけです」
沙知は、兵助のことを好きか嫌いかはわからない。
ただ実家の忍び集団には入隊してほしくないことだけはわかる。
死者が出る入隊試験も、若手には厳しすぎる訓練も受けてほしくない。
実家の忍び集団で生きていくということは、他の忍び集団で生きていくより、はるかに難しいのだ。
むろん、その分、他と比べれば、福利厚生は充実しており、給金もはずむのだが、命と比べたらはるかに安い。
「その気持ちはさ、勘右衛門や雷蔵、三郎達にもある?それとも俺だけ?」
ズイッと顔を近づけて兵助が問えば沙知は口を開く。
「‥たぶん、そうです。考えたことなかったですけど、同じことを言われれば、きっとそう返します」
同級生達はもちろん、先輩も後輩もそんな目にあってほしくはない。
それが沙知の気持ちだ。
「そう。なら、千川は俺に対して特別な情は持っていないってことだね。でも、俺は諦めないから。千川が安心できるくらい、強くなって、千川が抱えてる不安を消して、そして、ちゃんと俺を好きになってもらうから」
兵助が捉えた沙知の腕に、もう力は込められていない。沙知は、いつでも振りほどけるはずなのだが、彼女は腕を振り切ることなどしなかった。
「さて、学園に戻ろう。こんな雨じゃ、身体も冷えるしな」
沙知の腕を離し、いつもと同じトーンで語る兵助に対して、沙知は小さく頷いた。
兵助は、沙知が自分を好きになってもらえるように覚悟を決めた、この日は雨の日は悪くないと思い、彼女の歩調に合わせて歩みだす。
一方、沙知は、彼の気持ちに困惑しつつも、心のどこかで生まれた新たな感情を必死に押しつぶしていた。しかしこの気持ちが生まれてしまった、この雨の日は悪くないと思いながら、歩き始めたのだった。
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