雨の日も悪くない
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恋の話は、ゆかりのことを裏付けるような話が多かった、中にはそんな一面があったのかという沙知でも知らない話があった。
そしてその話をする兵助の表情はゆかりが八左ヱ門の話をする時と同じ、恋をしている人の表情だった。
ただ、彼の恋は実らない。
ゆかりは八左ヱ門を選んだのだ。
失恋をしているのに、これだけ想いを語れるのは、やはり彼女への愛だろうか。それとも何か考えがあるからこそ話せるのか。
そこはなんとも言えない。
しかしながら、彼の話を聞いていて一つわかったことはあった。
「久々知くんは、本当にその人のこと、大好きなんですね」
「まぁ当の本人は俺のことは眼中にないけれどね。」
「それでも好きなんですね」
「あぁ。彼女は三禁の理由で恋愛に興味を持たないようにしてるらしいけど、自分の立場とかをよく理解しているから、それも理由の一つなのかなって。身分差があるわけじゃないから、俺としては彼女の立場を理解した上で、こうして想い続けているんだけどね」
その言葉は、やけに自分と考えが似ている人物だと沙知は感じた。
いや、それだけではない。
兵助が話した好きな人の話は、ゆかりのことを裏付ける話が多かったが、それは実際に沙知もその場に居合わせた話だ。
ゆかりに関する意外性のある話は、ゆかりなら意外性があるが、沙知であるならば、意外性を感じない話だ。
もし、兵助の好きな人が、沙知である場合、彼が沙知の傘の中にいるのも納得がいく。沙知は兵助の好きな人が自分であった場合を仮定して、久々知の気持ちに返答した。
「久々知くんが、立場を理解しても想いつづけても、その人は久々知くんの将来を考えて断るんじゃないでしょうか。それに女であれば、いずれどこかに嫁ぎます。付き合っていても相手と別れなければいけない。気持ちに区切りをつけないといけなくなります。経験がなければ、気持ちに区切りをつける必要性はない。そういうものだと割り切れます。少なくとも私の場合はそうです。」
「なら、婚約者になってしまえば問題ないってことだな。」
「あの話聞いてました?」
ぶっ飛んだ回答に思わず、ツッコミをすれば彼は笑ってこう答えた。
「聞いてるから、そう答えたんだろ?好きな人が婚約者だったら、その悩みの種も消える。」
「それ本気で仰ってます?ご自身の進路に関わることなんですよ?婚約者になるということはご自身の勤め先が、婚約者の家業になるということです。毎年、希望者向けに入隊テストをして、死人がでてるようなところですよ。それに婚約者となれば、それ相応の実力が必要です。その狭き門をくぐってくるなんて夢物語もほどがあります。好きという感情だけじゃ、生きてなんていけません。だから、私は恋をしないんです」
兵助の着物の襟を引っ張り、沙知は声を荒げて言った。
好きな人が沙知だということを仮定が消え、沙知と結婚した場合の話にすり替わっているが、当の本人は気づいていない。
普段声を荒らげない沙知を見て兵助は驚いた表情をした。その表情を見て沙知は自分の言ったことに気づき、襟から手を離した。
「すいません、取り乱してしまって。私ならという話ですので、今の話は忘れてください。久々知くんの好きな人が、こういう考えをもってるとは限りませんから。婚約者になって、外堀から埋めていくというのはありだと思いますし、ここまで愛してくださるなら、その人も他に好きな人がいても、徐々に久々知くんを好きになってくださると思いますから。その応援はしますからね?」
必死に取り繕ったが、もう遅い。
兵助は沙知が着物を引っ張った腕をグッと掴んで、ジッと沙知を見つめて、真剣な顔つきをして、いつもより低い声でこう続けた。
「‥そこまで、言ってて、まだ気づかないふりをするのか?千川。それとも本当に気づいてない?」
そしてその話をする兵助の表情はゆかりが八左ヱ門の話をする時と同じ、恋をしている人の表情だった。
ただ、彼の恋は実らない。
ゆかりは八左ヱ門を選んだのだ。
失恋をしているのに、これだけ想いを語れるのは、やはり彼女への愛だろうか。それとも何か考えがあるからこそ話せるのか。
そこはなんとも言えない。
しかしながら、彼の話を聞いていて一つわかったことはあった。
「久々知くんは、本当にその人のこと、大好きなんですね」
「まぁ当の本人は俺のことは眼中にないけれどね。」
「それでも好きなんですね」
「あぁ。彼女は三禁の理由で恋愛に興味を持たないようにしてるらしいけど、自分の立場とかをよく理解しているから、それも理由の一つなのかなって。身分差があるわけじゃないから、俺としては彼女の立場を理解した上で、こうして想い続けているんだけどね」
その言葉は、やけに自分と考えが似ている人物だと沙知は感じた。
いや、それだけではない。
兵助が話した好きな人の話は、ゆかりのことを裏付ける話が多かったが、それは実際に沙知もその場に居合わせた話だ。
ゆかりに関する意外性のある話は、ゆかりなら意外性があるが、沙知であるならば、意外性を感じない話だ。
もし、兵助の好きな人が、沙知である場合、彼が沙知の傘の中にいるのも納得がいく。沙知は兵助の好きな人が自分であった場合を仮定して、久々知の気持ちに返答した。
「久々知くんが、立場を理解しても想いつづけても、その人は久々知くんの将来を考えて断るんじゃないでしょうか。それに女であれば、いずれどこかに嫁ぎます。付き合っていても相手と別れなければいけない。気持ちに区切りをつけないといけなくなります。経験がなければ、気持ちに区切りをつける必要性はない。そういうものだと割り切れます。少なくとも私の場合はそうです。」
「なら、婚約者になってしまえば問題ないってことだな。」
「あの話聞いてました?」
ぶっ飛んだ回答に思わず、ツッコミをすれば彼は笑ってこう答えた。
「聞いてるから、そう答えたんだろ?好きな人が婚約者だったら、その悩みの種も消える。」
「それ本気で仰ってます?ご自身の進路に関わることなんですよ?婚約者になるということはご自身の勤め先が、婚約者の家業になるということです。毎年、希望者向けに入隊テストをして、死人がでてるようなところですよ。それに婚約者となれば、それ相応の実力が必要です。その狭き門をくぐってくるなんて夢物語もほどがあります。好きという感情だけじゃ、生きてなんていけません。だから、私は恋をしないんです」
兵助の着物の襟を引っ張り、沙知は声を荒げて言った。
好きな人が沙知だということを仮定が消え、沙知と結婚した場合の話にすり替わっているが、当の本人は気づいていない。
普段声を荒らげない沙知を見て兵助は驚いた表情をした。その表情を見て沙知は自分の言ったことに気づき、襟から手を離した。
「すいません、取り乱してしまって。私ならという話ですので、今の話は忘れてください。久々知くんの好きな人が、こういう考えをもってるとは限りませんから。婚約者になって、外堀から埋めていくというのはありだと思いますし、ここまで愛してくださるなら、その人も他に好きな人がいても、徐々に久々知くんを好きになってくださると思いますから。その応援はしますからね?」
必死に取り繕ったが、もう遅い。
兵助は沙知が着物を引っ張った腕をグッと掴んで、ジッと沙知を見つめて、真剣な顔つきをして、いつもより低い声でこう続けた。
「‥そこまで、言ってて、まだ気づかないふりをするのか?千川。それとも本当に気づいてない?」