「すごいな、あの二人‥」

「まぁ、二人ともわかりやすいですし、いつかはと思っていましたが、まさか今日とは」

突然のゆかりと八左ヱ門の告白の応酬に、二人は唖然としていた。

「なんていうか。うん。八左ヱ門らしいといえば八左ヱ門らしいけど。」

「何かご不満でもあるんですか？」

兵助が何か言いたげな様子に、沙知は耳を傾ければ、兵助は答えた。

「俺なら、もっといい雰囲気を作って、告白するなって。あんなふうに言ったりはしない」

少し苛立った雰囲気と拗ねたような言い方だ。
その様子を見て、沙知は兵助もゆかりが好きだったのだと感じたのと同時に疑問が生じた。

なぜ、自分の傘にわざわざが久々知は入ったのか。
勝ち目がないってわかっていたのか
恋愛より友情を選んだからなのか。
それで後悔をしないのか。

沙知は1つ1つの疑問を整理しようとしていれば、兵助はこう続けた。

「それとも、八左ヱ門みたいな告白が、女子としてはいいのか？」

「それは個人の好みによるんじゃないでしょうか。」

八左ヱ門のような自分の気持ちを思いのままに伝える告白も、兵助が話すいい雰囲気の告白も、どちらも素敵なものだと沙知は思う。
だから沙知は個人の好みとしか答えようがない。

「千川なら、どっちがいい？」

「私ですか？そうですねぇ。どちらも気持ちがこもっていれば、それでよいかと。でもまぁ、身分や相手に合う告白をするのは得策だと思うというくらいで」

沙知の回答を聞いて、兵助は少し間を置いて口を開く。

「もしかして、千川は恋愛とかに興味がないのか？失恋したっていう感じがしない」

「全く興味がないというわけではないですが、三禁の一つですから。それに、私が失恋って、どこのどなたから聞いたんですか。恋愛をしていないのですから、失恋も何もありませんよ」

失恋した話は、どこから出たのだろうか。
彼が何をもって、自分が失恋したと思ったのかは沙知は理解し難かったが、違うものは違うため、しっかりと否定する。

「そう。」

少し思い悩んだ彼を見て、らしくないと思いつつ口を開く。

「でも人にそれを強要することはありませんよ。それに自分がしない分、人の話を聞いたり応援するのは好きなんですよ。もちろん誰かに言ったりしませんから。話してくださいな。言って楽になることだってあるでしょう」

兵助はゆかりが好きで、失恋したことのあると思い込んでいた自分に話を聞いてもらいたいのだと沙知は、そう解釈した。
沙知の傘に入ってきたのも、恋の話を執拗にふるのも、この解釈なら全て説明がついた。

「なら、お言葉に甘えて話そうかな。俺の恋の話」

そうして彼は、少しはにかんだ表情を見せて、話し始めたのだった。