町へ出かけていた帰り道。雨の中ゆかりと沙知は、学園へ戻っていた。

「思ってたより、どしゃぶりだね。朝は晴れてたのにさ」

「えぇ、朝から外出してる方は持っていってないでしょうね。途中で誰かに会ったら入れていかない？」

「そうだね。ってあれ。あそこに誰かいる」

他愛もない話をしながら歩いていれば、ゆかりは二人の男が雨宿りしている姿を捉えた。
その姿は誰かはまだわからないが、近くまでくれば、それはよく知る人物だった。

「竹谷くんと久々知くんですね。よかったねゆかり」

沙知はゆかりににっこりと微笑みかける。
その微笑みにゆかりは顔を赤くした。

「ちょっと。無理だから。沙知が八左ヱ門いれてよ。私が兵助いれるからさ。」

「それでもいいですけど。せっかくのチャンスは有効活用した方がいいんじゃない？」

「せっかくのチャンスって。別に私、八左ヱ門とどうこうなりたいとかないし。恋人になりたいとは思ってないし。いや、なれたらなりたいと思うけど。八左ヱ門そーゆの興味ないし」

「竹谷くんも私達と同じ十四ですよ？人並みに興味はあると思いますけど。それに、なれたらなりたいと思うのなら、やはり行動すべきですよ。ほらほら、向こうが私達に気づきましたよ」

沙知の言葉通り、竹谷と久々知はゆかりと沙知に気づき、竹谷は大きくこちらに手を降っている。

「おーい、二人とも学園まで入れていってくれ」

まだ距離があるというのに竹谷の声が鮮明に聞こえた。
ゆかりはその呼びかけに答えるように大きな声で、すぐ行くと竹谷に届くように声を張れば、急がなくていいと言う声が返ってきた。