類は友を呼ぶ、ゆえに必然だった
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▽
踊り場で中島と初めて会ってから数日が経った。あの日、ニャンコ先生に人間に憑りついている妖怪をどうにか出来ないか聞いてみると「憑りつき方は妖によって様々だが……どれほどその人間への結びつきが強くなっているかによっては、無理に剝がそうとすると人間まで傷つけかねんぞ」と言われた。だからといってこのまま彼女に憑いている妖怪を無視するわけにもいかず、とりあえず彼女と話して現状だけでも知れないだろうかと思ったのだが…。彼女に声を掛けると「ごめん!用事あるから」と言われてそそくさと去っていく。それが毎度の事ならば、流石に彼女が俺を避けているんだろう、という事は察せる。俺、知らない間に何か、してしまったのか……?
「はあ……」
今日こそは話せたら、と思ったのだが最近、中島を見かけない。気になって彼女と同じクラスの子に聞いてみると、どうやら風邪を拗らせて休んでいるらしい。彼女の家を知っているわけではないので、もうこれ以上出来ることが無い。けれど休むほど体調が優れないという事は、中島は今とても危険な状態かもしれない。胸の奥がざわざわとして落ち着かない。俺は、どうしたら彼女を助けられるのだろうか。
「どうした夏目~、ため息なんか吐いて」
「あぁ、いや―――」
そういえば西村は、中島が倒れた時、彼女と同じ中学で彼女が貧血でよく倒れていたと言っていた。もしかしたら彼女の家を知っているかもしれない…!
「……確か西村って中島と同じ中学だったんだよな」
「ん?あぁ、そうだけど…」
「中島の家がどこにあるか知らないか?」
「中島の家ぇ…?うーん……どこだったかな……てかなんで中島の家知りたいんだ?」
そう言われて俺ははっとする。事情を知らない西村から見たら、人の、しかも女子の家を知りたがるなんて確実に誤解を招いてしまう!何とか頭を働かせていると、あることを思い出す。あの日、放課後に見つけたお守りのような物。北本が、中島が持っているのを見かけたと言っていた。それに先生はこのお守りのような物には魔除け効果のある匂いが微かに香ると言っていた。きっとこれのお陰で少しは妖怪からの干渉を止められていたのだろう。
「…その、ほら、前中島が倒れた時にお守りみたいなのを落としてただろ?まだそれを返せてなくて―――」
話している途中で西村が俺の肩に手を置く。何の意図があって手を置いたのか分からず、西村の顔を見ると鼻を擦りながら目を瞑ってニヤついていた。嫌な予感……。
「みなまで言うな夏目…!そうか、そうか…!お前にもついに春が来たんだな……!」
「……は?」
「お前に彼女が出来るのは、少し…いやとても腹が立つけど、それでも俺は応援してるぞ!」
「え、いや、違う――!」
「そう隠さなくていいって!中島、いいやつだもんな」
「いや、本当に――!」
最後まで話を聞かないで、西村は「中島の仲の良い女子に聞いてくる!」と言って教室から出て行った。結局、要らぬ誤解を招いてしまって思わず頭を抱えてしまう。後でちゃんと誤解を解いておこう。
放課後、結局誤解は解けないまま、北本にも話が行ってしまい二人に温かい目で見送られながら、西原から教えらてもらった中島の家へ向かう。中島の耳に入る前に、あの2人の誤解を解いておかないと。
歩いていると遠くの方に、俯いて足取りの覚束ない女性がこちらに向かってきているのが見えた。あまりにも不気味な雰囲気を醸し出していたので、妖怪かと思い見ないようにしていると、その女性が顔を上げる。それはどこか見覚えのある顔だった。
「……中島?」
中島はこちらに目もくれず森へと続く草むらへと入っていく。嫌な胸騒ぎがする。まさか、また妖怪に操られて―――!俺は急いで中島の後を追って森へと続く草むらへと入る。
どれだけ呼び掛けても中島が止まる気配はない。足場の悪い獣道に転びそうになりながらも彼女を追っていると、少し開けた場所へと出る。その場所の真ん中に、ぽつんと中島が立っていた。夕日に照らされたその背はどこか儚く、今にも消え入りそうで、このままでは本当に中島は消えてしまう気がして、俺は咄嗟に彼女の名を呼ぶ。
彼女はぴくりと肩を揺らしたあと数秒固まっていたが、何かを確認するかのように手を胸の辺りまで上げていた。その肩は震えている。彼女の近くまで行って、再度声を掛ける。今回は、肩を跳ねさせていた。やっと反応してくれたことにほんの少し安心を覚える。
「あれ?夏目?どうしたの?」
そう言って振り返った中島の顔は酷くやつれていて顔色も悪かった。それなのに彼女は、見るからに取り繕ったような笑顔を浮かべていた。俺は思わず顔を顰める。きっと辛いはずなのに、どうして彼女は……。
「どうしたの、って…それはこっちのセリフだ。こんなところで何してるんだ」
「あー…さ、散歩してたんだよ~ははは」
「…そんなに顔色が悪いのに?」
中島は取り繕った笑顔のまま黙り込む。そして少し申し訳なさそうな顔をした後俯いてしまった。どう言葉を掛けていいか分からず、俺も黙り込んでしまう。暫しの沈黙の後、突然中島が声を上げる。
「!!待って、彼は―――!!?うっ!」
顔を上げた中島が苦しそうに頭を抑える。まさか妖怪がなにかしようとして…!?中島の名を呼ぶと同時に目の前に髪の長い人が――妖が半身だけ乗り出して俺の首に手を掛けた。
「直接お前を喰って、この小娘を乗っ取る養分にしてくれよう。なにせ、後少しなのでな…!」
「っう!!っは、なせ!」
苦しさに藻掻く。妖怪の手を首から引き剥がそうと腕を掴むが、びくともしない。息が出来ない。このままでは…!!
「っ!離せって…言ってるだろう!!」
無意識に振り翳した拳は妖怪の顔に当たり、妖怪は呻き声を上げる。そして後ろの、中島の方に倒れたかと思うとそのまま彼女を通り抜けていく。そのおかげで中島の姿が見えたのだが――。
「え」
「あ!?」
目を真ん丸とさせた中島の目線の先には、俺が振り翳した拳があった。止まることを知らない俺の拳はそのまま、鈍い音を立てて中島の額に当たってしまう。結構強めに。その衝撃で中島は背中から倒れてしまった。
「うわぁーー!!?な、中島大丈夫か!?」
俺は冷や汗を掻きながら中島に駆け寄る。肩を軽く揺さぶってみるが、ぐったりとしていて目を開ける気配がない。今までの疲労もあっただろうが、俺のせいで気絶させてしまったことに罪悪感が募る。
「せっかく波長の合う人間を見つけたが…もう面倒だ」
嫌な空気に背筋を凍らせる。ゆっくりと妖怪が居る方に顔を向けると、憎悪を感じられる表情でこちらを見ていた。本能がまずいと、逃げろと叫んでいる。けれど、中島が倒れている今、逃げ出すことはできない。俺は彼女の前に出る。
「なんで、中島を…!」
「なんで?簡単な事だ小僧。ただ、波長が合っただけだ。乗っ取りやすそうだっただけだ。それ以上もそれ以下もない」
「ただ、それだけで―――!」
「だがもう面倒だ。あぁ、面倒だ面倒だ。あの小娘は無駄に精神力が強く、お前は無駄に妖力が強い…!腹立たしい腹立たしい!!人間ごときがこの私に逆らおうなど腹立たしい!!どうせ死したとしても操れるのだ!!ならばもう、貴様ら2人共々喰ってやろう!!」
そう言って勢いよくこちらに向かって来る妖怪に、俺はただ目を強く瞑る以外できなかった。
「まったく、お前はすぐ面倒ごとに巻き込まれよって……」
がさりと草が揺れる音が後ろから聞こえたかと思えば、聞き覚えのある声が聞こえた。この声は俺の用心棒――。
「こいつは私の獲物だ―――去れ!!」
先生がそう言うと妖怪は大きな悲鳴をあげる。恐る恐る目を開けると妖怪はどこにも居なく、白いまん丸の生き物――ニャンコ先生が呆れたような目つきで俺を見ていた。緊張感から解放された俺は、音を立てながらへたり込む。
「……助かったよ先生」
「ふん、いい加減面倒ごとに首を突っ込むのは止せ。私が来なかったら喰われていたぞ」
「………そうだな…でも――それでも、知ってしまったからには、見て見ぬふりはしたくないんだ」
先生は大きなため息を吐きながら中島のそばへと向かい、無言でじっと見つめてる。心なしか、中島の顔色が先程よりはよくなっているように見えた。
「……中島は大丈夫なのか?」
「ふむ…生気と妖力をだいぶ吸われているが、数日寝込めば回復するだろう」
「そうか、よかった……」
ほっと安堵の声を漏らす。本当に良かった。そう思って中島の顔をじっと見つめる。あの時、偶然あの場に出くわした事を心から良かったと思う。もしあの時彼女と出会わなければ、今頃彼女は……。
「む?こやつ額が赤くなっているが―――」
「あ―――!」
完全に中島を殴ってしまった事を忘れていた!!先生に軽く説明をして、額を冷やすために何かないか聞くと、近くに小川が流れているというので、俺はハンカチを手に取って急いで向かう。本当にごめん中島―――!!
踊り場で中島と初めて会ってから数日が経った。あの日、ニャンコ先生に人間に憑りついている妖怪をどうにか出来ないか聞いてみると「憑りつき方は妖によって様々だが……どれほどその人間への結びつきが強くなっているかによっては、無理に剝がそうとすると人間まで傷つけかねんぞ」と言われた。だからといってこのまま彼女に憑いている妖怪を無視するわけにもいかず、とりあえず彼女と話して現状だけでも知れないだろうかと思ったのだが…。彼女に声を掛けると「ごめん!用事あるから」と言われてそそくさと去っていく。それが毎度の事ならば、流石に彼女が俺を避けているんだろう、という事は察せる。俺、知らない間に何か、してしまったのか……?
「はあ……」
今日こそは話せたら、と思ったのだが最近、中島を見かけない。気になって彼女と同じクラスの子に聞いてみると、どうやら風邪を拗らせて休んでいるらしい。彼女の家を知っているわけではないので、もうこれ以上出来ることが無い。けれど休むほど体調が優れないという事は、中島は今とても危険な状態かもしれない。胸の奥がざわざわとして落ち着かない。俺は、どうしたら彼女を助けられるのだろうか。
「どうした夏目~、ため息なんか吐いて」
「あぁ、いや―――」
そういえば西村は、中島が倒れた時、彼女と同じ中学で彼女が貧血でよく倒れていたと言っていた。もしかしたら彼女の家を知っているかもしれない…!
「……確か西村って中島と同じ中学だったんだよな」
「ん?あぁ、そうだけど…」
「中島の家がどこにあるか知らないか?」
「中島の家ぇ…?うーん……どこだったかな……てかなんで中島の家知りたいんだ?」
そう言われて俺ははっとする。事情を知らない西村から見たら、人の、しかも女子の家を知りたがるなんて確実に誤解を招いてしまう!何とか頭を働かせていると、あることを思い出す。あの日、放課後に見つけたお守りのような物。北本が、中島が持っているのを見かけたと言っていた。それに先生はこのお守りのような物には魔除け効果のある匂いが微かに香ると言っていた。きっとこれのお陰で少しは妖怪からの干渉を止められていたのだろう。
「…その、ほら、前中島が倒れた時にお守りみたいなのを落としてただろ?まだそれを返せてなくて―――」
話している途中で西村が俺の肩に手を置く。何の意図があって手を置いたのか分からず、西村の顔を見ると鼻を擦りながら目を瞑ってニヤついていた。嫌な予感……。
「みなまで言うな夏目…!そうか、そうか…!お前にもついに春が来たんだな……!」
「……は?」
「お前に彼女が出来るのは、少し…いやとても腹が立つけど、それでも俺は応援してるぞ!」
「え、いや、違う――!」
「そう隠さなくていいって!中島、いいやつだもんな」
「いや、本当に――!」
最後まで話を聞かないで、西村は「中島の仲の良い女子に聞いてくる!」と言って教室から出て行った。結局、要らぬ誤解を招いてしまって思わず頭を抱えてしまう。後でちゃんと誤解を解いておこう。
放課後、結局誤解は解けないまま、北本にも話が行ってしまい二人に温かい目で見送られながら、西原から教えらてもらった中島の家へ向かう。中島の耳に入る前に、あの2人の誤解を解いておかないと。
歩いていると遠くの方に、俯いて足取りの覚束ない女性がこちらに向かってきているのが見えた。あまりにも不気味な雰囲気を醸し出していたので、妖怪かと思い見ないようにしていると、その女性が顔を上げる。それはどこか見覚えのある顔だった。
「……中島?」
中島はこちらに目もくれず森へと続く草むらへと入っていく。嫌な胸騒ぎがする。まさか、また妖怪に操られて―――!俺は急いで中島の後を追って森へと続く草むらへと入る。
どれだけ呼び掛けても中島が止まる気配はない。足場の悪い獣道に転びそうになりながらも彼女を追っていると、少し開けた場所へと出る。その場所の真ん中に、ぽつんと中島が立っていた。夕日に照らされたその背はどこか儚く、今にも消え入りそうで、このままでは本当に中島は消えてしまう気がして、俺は咄嗟に彼女の名を呼ぶ。
彼女はぴくりと肩を揺らしたあと数秒固まっていたが、何かを確認するかのように手を胸の辺りまで上げていた。その肩は震えている。彼女の近くまで行って、再度声を掛ける。今回は、肩を跳ねさせていた。やっと反応してくれたことにほんの少し安心を覚える。
「あれ?夏目?どうしたの?」
そう言って振り返った中島の顔は酷くやつれていて顔色も悪かった。それなのに彼女は、見るからに取り繕ったような笑顔を浮かべていた。俺は思わず顔を顰める。きっと辛いはずなのに、どうして彼女は……。
「どうしたの、って…それはこっちのセリフだ。こんなところで何してるんだ」
「あー…さ、散歩してたんだよ~ははは」
「…そんなに顔色が悪いのに?」
中島は取り繕った笑顔のまま黙り込む。そして少し申し訳なさそうな顔をした後俯いてしまった。どう言葉を掛けていいか分からず、俺も黙り込んでしまう。暫しの沈黙の後、突然中島が声を上げる。
「!!待って、彼は―――!!?うっ!」
顔を上げた中島が苦しそうに頭を抑える。まさか妖怪がなにかしようとして…!?中島の名を呼ぶと同時に目の前に髪の長い人が――妖が半身だけ乗り出して俺の首に手を掛けた。
「直接お前を喰って、この小娘を乗っ取る養分にしてくれよう。なにせ、後少しなのでな…!」
「っう!!っは、なせ!」
苦しさに藻掻く。妖怪の手を首から引き剥がそうと腕を掴むが、びくともしない。息が出来ない。このままでは…!!
「っ!離せって…言ってるだろう!!」
無意識に振り翳した拳は妖怪の顔に当たり、妖怪は呻き声を上げる。そして後ろの、中島の方に倒れたかと思うとそのまま彼女を通り抜けていく。そのおかげで中島の姿が見えたのだが――。
「え」
「あ!?」
目を真ん丸とさせた中島の目線の先には、俺が振り翳した拳があった。止まることを知らない俺の拳はそのまま、鈍い音を立てて中島の額に当たってしまう。結構強めに。その衝撃で中島は背中から倒れてしまった。
「うわぁーー!!?な、中島大丈夫か!?」
俺は冷や汗を掻きながら中島に駆け寄る。肩を軽く揺さぶってみるが、ぐったりとしていて目を開ける気配がない。今までの疲労もあっただろうが、俺のせいで気絶させてしまったことに罪悪感が募る。
「せっかく波長の合う人間を見つけたが…もう面倒だ」
嫌な空気に背筋を凍らせる。ゆっくりと妖怪が居る方に顔を向けると、憎悪を感じられる表情でこちらを見ていた。本能がまずいと、逃げろと叫んでいる。けれど、中島が倒れている今、逃げ出すことはできない。俺は彼女の前に出る。
「なんで、中島を…!」
「なんで?簡単な事だ小僧。ただ、波長が合っただけだ。乗っ取りやすそうだっただけだ。それ以上もそれ以下もない」
「ただ、それだけで―――!」
「だがもう面倒だ。あぁ、面倒だ面倒だ。あの小娘は無駄に精神力が強く、お前は無駄に妖力が強い…!腹立たしい腹立たしい!!人間ごときがこの私に逆らおうなど腹立たしい!!どうせ死したとしても操れるのだ!!ならばもう、貴様ら2人共々喰ってやろう!!」
そう言って勢いよくこちらに向かって来る妖怪に、俺はただ目を強く瞑る以外できなかった。
「まったく、お前はすぐ面倒ごとに巻き込まれよって……」
がさりと草が揺れる音が後ろから聞こえたかと思えば、聞き覚えのある声が聞こえた。この声は俺の用心棒――。
「こいつは私の獲物だ―――去れ!!」
先生がそう言うと妖怪は大きな悲鳴をあげる。恐る恐る目を開けると妖怪はどこにも居なく、白いまん丸の生き物――ニャンコ先生が呆れたような目つきで俺を見ていた。緊張感から解放された俺は、音を立てながらへたり込む。
「……助かったよ先生」
「ふん、いい加減面倒ごとに首を突っ込むのは止せ。私が来なかったら喰われていたぞ」
「………そうだな…でも――それでも、知ってしまったからには、見て見ぬふりはしたくないんだ」
先生は大きなため息を吐きながら中島のそばへと向かい、無言でじっと見つめてる。心なしか、中島の顔色が先程よりはよくなっているように見えた。
「……中島は大丈夫なのか?」
「ふむ…生気と妖力をだいぶ吸われているが、数日寝込めば回復するだろう」
「そうか、よかった……」
ほっと安堵の声を漏らす。本当に良かった。そう思って中島の顔をじっと見つめる。あの時、偶然あの場に出くわした事を心から良かったと思う。もしあの時彼女と出会わなければ、今頃彼女は……。
「む?こやつ額が赤くなっているが―――」
「あ―――!」
完全に中島を殴ってしまった事を忘れていた!!先生に軽く説明をして、額を冷やすために何かないか聞くと、近くに小川が流れているというので、俺はハンカチを手に取って急いで向かう。本当にごめん中島―――!!