類は友を呼ぶ、ゆえに必然だった
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢を見た。大切な人が――友人が私のせいで可笑しくなってしまう夢。どうにかして必死に助け方を探すも見つからず、策を考えて行動してもどうにもできず、私はただ徐々に徐々に可笑しくなっていく、恐ろしい生き物になっていく友人を、泣きながら 謝りながら見ていることしかできなかった。そんな、夢―――。
「っ、はぁ……」
もう何度目かも分からない酷い頭痛に目が覚める。閉められたカーテンの隙間から柔らかい橙色の光が漏れていた。時計を見やれば、丁度学校が終わったであろう時間であった。
ベッドの上でただ布団を抱えて蹲ることしかできない自分が嫌になる。数日前までは普通に歩けていたのに、日が経つにつれ頭痛と倦怠感が酷くなりベッドから起き上がることも難しくなってしまった。それもこれも、何処かに魔除け効果のある匂い袋を落とした所為だ。あれで妖怪の行動を少しばかり鈍らせることが出来ていたのだが、あれを無くした途端、妖怪は水を得た魚の様に私の身体を奪おうと躍起になっている。自然とため息が増えてしまう。
⦅――寄こせ、寄こせ。その身体を寄こせ!⦆
頭に響く不快な声。この声が頭痛に響く。本当に迷惑だ。いや、こいつのせいで今こうなってるんだった。
もうダメだ、うまく思考が出来ない。このままじゃ――――。
頭痛も倦怠感も無視して、私は上半身を勢いよく起き上がらせる。今すぐにでもベッドに倒れこみたい気持ちを抑えながら私は台所へと向かう。途中、自分に言い聞かせるように小さく「……絶対に、私は……お前なんかに屈しない」と呟くと、甲高い笑い声が脳内に響き渡る。消える事は無いというのを分かっていても、私は思わず耳を塞いでしまった。
⦅ふん、精神だけは無駄にしぶとい。しかし…ふふふ、いつまで続くかな……⦆
「…………」
この現状をどうにかしなければいけないという焦りと、どうにもできない現実に苛立ち、私はただ拳を強く握るのみだった。
覚束ない足取りで台所まで着いた私は、コップを手に取り冷蔵庫から水の入った容器を取り出した。そしてコップに水を注いで、それを勢いよく飲む。喉を通るヒンヤリとした感覚が、私の中で積もりに積もった焦燥感を落ち着かせてくれる。
大丈夫、大丈夫。どうにかなる。私がどうにかする。だってこんなところで私は――――。
「あ」
後ろに引っ張られるような感覚。手に持っていたコップは音を立てて床に落ちる。そして私は、必死に力を入れていた脚から崩れ落ち、床に倒れこんだ。思考もままならないまま、どこからか聞こえる甲高い笑い声を聞きながら私は意識を手放した。
意識が曖昧だ。
ぼんやりと夕日の色が掛かった緑が見えるけれど、それが何なのか分からない。それに思考もぼんやりとしている。私は今、何をしているのだろうか。立っているのか、座っているのか、はたまた寝ているのか、それすらも分からない。感覚が、ない。それなのに頭が割れる様に痛い。痛くて痛くて、苦しい。
それがとても怖くて、不安で、どうにかしなければいけないと思うけれど、どうすればいいか分からなくて、焦りばかり募る。あれ、でも、なんでこうなっているんだっけ。思い出そうとするも、思い出せない。記憶が朧気だ。私は 私は今まで何をしていたんだっけ?私は、私は―――?。
「――中島!」
曖昧だった全てが、私を呼ぶ誰かの声で明確になる。目の前には草木が生い茂っていた。どうやら私は森に居るようだった。もし、今誰も来なかったら―――その先を考えるのも恐ろしい。自分が確かに存在している事を確認するために手を胸辺りまで持ってきて、手を開いて握ってを繰り返す。その手は恐怖で震えていたがそんなことも無視して。大丈夫、私は存在する。
「中島?大丈夫か?」
いつの間にか声の主は私の後ろまで来ていたようで、思わず肩を跳ねさせる。この声は―――……。何とか事態を悟られないように取り繕った表情で振り返り、震えている手は後ろに隠す。例え悟られていようとも、それでも。
「あれ?夏目?どうしたの?」
「どうしたの、って…それはこっちのセリフだ。こんなところで何してるんだ」
「あー…さ、散歩してたんだよ~ははは」
「…そんなに顔色が悪いのに?」
笑顔のまま言葉に詰まる。未だに頭が痛いから、きっと今も顔色が悪いことだって自分でも分かっていた。けれど、それでも取り繕って彼に悟られないようにしたのは、彼に関わるべきではないと思っている自分の、一種のプライドからだ。気まずくて俯いてしまい、自分の身体が目に入る。私、寝巻のままだったんだ。なんだか惨めで泣きそうになってきた。
目頭が熱くなるが、ぐっと堪える。ここで泣いてしまえば、弱気になってしまえば、あの妖怪が憑りつく隙を作ってしまうかもしれない。だから弱気なるな。私の精神力が、最後の砦だ。
⦅本当にお前は精神力だけは無駄に強い。ふふふふ、だから恨むならこの小娘を恨めよ、小僧⦆
頭の中で響く声。まさか、また夏目を喰おうとして――?!!
「!!待って、彼は―――!!?うっ!」
激しい頭痛と共に目の前に人影が現れる。もしかして、私の身体から出たのか?出て直接夏目を――?!
「中島―――っ!?」
「直接お前を喰って、この小娘を乗っ取る養分にしてくれよう。なにせ、後少しなのでな…!」
「っう!!っは、なせ!」
夏目の苦しそうな声が聞こえる。この目の前に居る妖怪を引っ叩いてやりたいが、体が動かない。多分、妖怪の半身がまだ私の身体に居るからだろう。どうしていつも私はこんなにも無力なんだ―――!
「っ!離せって…言ってるだろう!!」
夏目の声と共に妖怪が呻き声を上げ、私の方に倒れてくる。何が起きているのか見えなかったが、妖怪が私を通り抜けたのか人影は無くなり夏目が見える。その手は、拳は私の目前まで迫っていた。
「え」
「あ!?」
鈍い音が鳴り、額に痛みが走る。元々頭痛が酷かったからか、その衝撃で私は意識が遠のく。訳も分からないまま、夏目の焦ったような表情と声を最後に、私は意識を手放した。もしかして、私殴れたの?と困惑しながら。
「っ、はぁ……」
もう何度目かも分からない酷い頭痛に目が覚める。閉められたカーテンの隙間から柔らかい橙色の光が漏れていた。時計を見やれば、丁度学校が終わったであろう時間であった。
ベッドの上でただ布団を抱えて蹲ることしかできない自分が嫌になる。数日前までは普通に歩けていたのに、日が経つにつれ頭痛と倦怠感が酷くなりベッドから起き上がることも難しくなってしまった。それもこれも、何処かに魔除け効果のある匂い袋を落とした所為だ。あれで妖怪の行動を少しばかり鈍らせることが出来ていたのだが、あれを無くした途端、妖怪は水を得た魚の様に私の身体を奪おうと躍起になっている。自然とため息が増えてしまう。
⦅――寄こせ、寄こせ。その身体を寄こせ!⦆
頭に響く不快な声。この声が頭痛に響く。本当に迷惑だ。いや、こいつのせいで今こうなってるんだった。
もうダメだ、うまく思考が出来ない。このままじゃ――――。
頭痛も倦怠感も無視して、私は上半身を勢いよく起き上がらせる。今すぐにでもベッドに倒れこみたい気持ちを抑えながら私は台所へと向かう。途中、自分に言い聞かせるように小さく「……絶対に、私は……お前なんかに屈しない」と呟くと、甲高い笑い声が脳内に響き渡る。消える事は無いというのを分かっていても、私は思わず耳を塞いでしまった。
⦅ふん、精神だけは無駄にしぶとい。しかし…ふふふ、いつまで続くかな……⦆
「…………」
この現状をどうにかしなければいけないという焦りと、どうにもできない現実に苛立ち、私はただ拳を強く握るのみだった。
覚束ない足取りで台所まで着いた私は、コップを手に取り冷蔵庫から水の入った容器を取り出した。そしてコップに水を注いで、それを勢いよく飲む。喉を通るヒンヤリとした感覚が、私の中で積もりに積もった焦燥感を落ち着かせてくれる。
大丈夫、大丈夫。どうにかなる。私がどうにかする。だってこんなところで私は――――。
「あ」
後ろに引っ張られるような感覚。手に持っていたコップは音を立てて床に落ちる。そして私は、必死に力を入れていた脚から崩れ落ち、床に倒れこんだ。思考もままならないまま、どこからか聞こえる甲高い笑い声を聞きながら私は意識を手放した。
意識が曖昧だ。
ぼんやりと夕日の色が掛かった緑が見えるけれど、それが何なのか分からない。それに思考もぼんやりとしている。私は今、何をしているのだろうか。立っているのか、座っているのか、はたまた寝ているのか、それすらも分からない。感覚が、ない。それなのに頭が割れる様に痛い。痛くて痛くて、苦しい。
それがとても怖くて、不安で、どうにかしなければいけないと思うけれど、どうすればいいか分からなくて、焦りばかり募る。あれ、でも、なんでこうなっているんだっけ。思い出そうとするも、思い出せない。記憶が朧気だ。私は 私は今まで何をしていたんだっけ?私は、私は―――?。
「――中島!」
曖昧だった全てが、私を呼ぶ誰かの声で明確になる。目の前には草木が生い茂っていた。どうやら私は森に居るようだった。もし、今誰も来なかったら―――その先を考えるのも恐ろしい。自分が確かに存在している事を確認するために手を胸辺りまで持ってきて、手を開いて握ってを繰り返す。その手は恐怖で震えていたがそんなことも無視して。大丈夫、私は存在する。
「中島?大丈夫か?」
いつの間にか声の主は私の後ろまで来ていたようで、思わず肩を跳ねさせる。この声は―――……。何とか事態を悟られないように取り繕った表情で振り返り、震えている手は後ろに隠す。例え悟られていようとも、それでも。
「あれ?夏目?どうしたの?」
「どうしたの、って…それはこっちのセリフだ。こんなところで何してるんだ」
「あー…さ、散歩してたんだよ~ははは」
「…そんなに顔色が悪いのに?」
笑顔のまま言葉に詰まる。未だに頭が痛いから、きっと今も顔色が悪いことだって自分でも分かっていた。けれど、それでも取り繕って彼に悟られないようにしたのは、彼に関わるべきではないと思っている自分の、一種のプライドからだ。気まずくて俯いてしまい、自分の身体が目に入る。私、寝巻のままだったんだ。なんだか惨めで泣きそうになってきた。
目頭が熱くなるが、ぐっと堪える。ここで泣いてしまえば、弱気になってしまえば、あの妖怪が憑りつく隙を作ってしまうかもしれない。だから弱気なるな。私の精神力が、最後の砦だ。
⦅本当にお前は精神力だけは無駄に強い。ふふふふ、だから恨むならこの小娘を恨めよ、小僧⦆
頭の中で響く声。まさか、また夏目を喰おうとして――?!!
「!!待って、彼は―――!!?うっ!」
激しい頭痛と共に目の前に人影が現れる。もしかして、私の身体から出たのか?出て直接夏目を――?!
「中島―――っ!?」
「直接お前を喰って、この小娘を乗っ取る養分にしてくれよう。なにせ、後少しなのでな…!」
「っう!!っは、なせ!」
夏目の苦しそうな声が聞こえる。この目の前に居る妖怪を引っ叩いてやりたいが、体が動かない。多分、妖怪の半身がまだ私の身体に居るからだろう。どうしていつも私はこんなにも無力なんだ―――!
「っ!離せって…言ってるだろう!!」
夏目の声と共に妖怪が呻き声を上げ、私の方に倒れてくる。何が起きているのか見えなかったが、妖怪が私を通り抜けたのか人影は無くなり夏目が見える。その手は、拳は私の目前まで迫っていた。
「え」
「あ!?」
鈍い音が鳴り、額に痛みが走る。元々頭痛が酷かったからか、その衝撃で私は意識が遠のく。訳も分からないまま、夏目の焦ったような表情と声を最後に、私は意識を手放した。もしかして、私殴れたの?と困惑しながら。