プロポーズしてみた
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昼休みに美術部の子に頼まれて、美術室の片付けを手伝っていた。
棚の上の段ボールとか降ろして掃除する、と聞いていたので、ああこの段ボールかと思って降ろそうとしたのがさっき。
そしていま。
『あちゃー…やっちまった』
「うわ、悠桐大丈夫!?」
『あぁ、平気平気』
言葉にするなら、ざっくり。
左腕から流れ出した血は、制服であるシャツを赤く染めていく。
段ボールの横に無造作に置かれていた彫刻刀たちが、段ボールを引っ張ると同時に上から降ってきたのだ。
彫刻刀の管理ぐらいちゃんとやれよ危ねぇな、という言葉は飲み込んで、代わりにため息をつく。
『…片付けて保健室いこ』
「いや、今すぐ保健室行って」
『あい』
保健室についた。
しつれーします、と言いつつ、大して失礼とも思わずにガラリと扉を開ける。
「あれ、伏見ちゃん?」
『あ、及川さん』
「どうし…うわ、何その腕!?」
『彫刻刀降ってきた』
「は!?」
簡単に経緯を説明すると、早くここ座って!と促されて椅子に座る。
『先生は?』
「いま会議でいないよ」
『及川さんは何でここにいるの?』
「保健委員だから」
『へぇ』
なんでも保健委員は昼休みにしか活動しないらしく、放課後部活がある及川にとっては都合が良いらしい。
ちなみに今回は保健室の備品整理だったそうだ。
会議を忘れていた先生は慌てて出て行き、及川だけが残されたということ。
「はい、まず洗ってきて」
『はーい』
どうやら手伝ってくれるらしい及川の指示に従い、傷口を洗いに洗面台へ向かう。
「なんでセーター着てないのさ」
『作業するって聞いてたから汚したくなくて、教室で脱いで来ちゃった』
「バカ」
『ぬぅ…』
何も言い返せない。
確かにセーターがあれば刺さってなかったかもしれない。
「動かないでね」
うひゃー痛そう、と顔を引き攣らせつつ患部を処置して包帯を巻いてくれる及川を眺める。
本当に顔面が整っている。
もはや造形美である。黙っていれば。
「…はい、これでいいよ」
『ありがとう及川さん』
「ん。痛くない?」
『あんまり』
あっという間に隠れた傷口は、不思議なことにあまり痛まない。
『(及川さんに怪我の処置をされる日が来ようとは…。全国の及川ファンに謝らねば)』
「伏見ちゃん」
『うん?』
す、と差し出されたのはグレーのハンカチ。
意味を掴みあぐねていると、及川はそれを無理やり握らせた。
「教室戻るまで、そのシャツ目立つでしょ。これで隠して行きなよ」
その気遣いの裏に、心配していますという表情をちらちら覗かせている。
あ、いま心臓がキュッてなった。
『え…どうしよう今めっちゃキュンとした』
「え、まじで?じゃあ付き合う?」
『いやいい』
「なんで!?」
『すっ飛ばして結婚しない?』
「けっ…結婚!?」
『まぁ嘘ですけどネ』
「嘘かよ!!」
顔真っ赤にしちゃってまぁ。可愛いもんだ。うるさいけど。