プロポーズしてみた
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『及川さん、そこ私の席。邪魔』
ちょっと寝坊していつもより遅く学校へ行くと、松川と及川が仲良く前後に座っていた。
邪魔なんですけど。
「あ、伏見おはよう」
「ちょっと伏見ちゃん!話があるんだけど!」
『おはようまっつん。及川さん朝からうるさい』
「ごめんね!!」
『ボリューム!』
ガタンと椅子から立ち上がって、及川は悠桐の耳元で謝る。鼓膜への暴力が甚だしい。
「ちょっと座ってください」
もう一度椅子に座り直して、悠桐が座れるほどのスペースを空けて、そこをペシペシと叩く。
つまりは椅子を半分こしようとしたわけである。
『中井くんごめん、椅子借りるね』
「ん?おー、いいよ」
「何でだよ!」
隣の席の中井に声を掛け、そこに座ると案の定及川は抗議の声を挙げた。
そこそこうるさい。
『で、話ってなんですか』
「俺の足のことなんだけど」
『足?』
割と真面目なトーンで切り出された話に、悠桐は触っていたスマホを鞄に戻す。
「なんで俺が捻挫したことに気付いたの?」
『え、ほんとに捻挫してたの?ダッセェ』
「言い方!!」
ダンッ!と机を拳で叩いて、及川は不満そうに頬を膨らませた。
くそ、可愛いな。無駄に顔面が整ってやがる。
「それ、俺も聞きたい」
はーい、と小さく手を挙げる松川を一瞥して、悠桐は及川に視線を戻した。
『むしろなんで捻挫したことを隠してたのか聞きたい。逆に』
「っ、このくらいなら大丈夫だと思ったの!」
『このくらいがどのくらいかを判断するのは医者でしょうよ』
「そうだけど!俺の質問に答えて!」
『しょっちゅう練習見てきたんだから、変化があれば気付くよ』
「…そーゆーもん?」
『そーゆーもん』
首を傾げる松川に頷いて、悠桐は小さくため息をついた。
『及川さんさ』
「うん」
『全国目指してるんでしょ?』
「?うん、もちろん」
『だったら、"このくらいなら大丈夫"の精神が大きな怪我に繋がるかもしれないの、君ならわかるよね?』
「!」
『部を引っ張る立場の君が故障したのを隠して練習して、それを見て部員が奮い立つと思ってる?』
「っ、それは」
『今はゆっくり休んで、万全の状態でまた練習すればいいでしょ。何を焦るの』
君の努力は、そう簡単に追い付かれるものじゃないんだから。
悠桐がきっぱりと言い切ると、及川は俯いて小さく頷いた。
あ、やべぇ説教くさくなった。
歳を取るとやぁねぇほんと。
『ほら、ホームルーム始まる。巣へお帰り』
「だから言い方!!」
ガタンと音を立てて立ち上がり、及川はドアへと向かう。そしてくるりと振り返って、悠桐を指さした。
「万全の状態で、かっこいいとこ見せてやるからね!」
『人を指さすなと教わらなかったのかお前は』
「いだだだだ!」
向けられた指を握って逆方向に曲げてやると、及川は慌てて教室へ帰って行く。
『朝から死ぬほど疲れた』
ようやく自分の席に座った悠桐は、だらんと机に突っ伏した。
「悪いな、うちの主将が」
『ほんとだよー。私が来るまでに教室に追い返しておいてよね、ブロッカーでしょー』
「確かに」
くすりと笑う松川は本当に17歳なのかと思う。
いや顔じゃなくて雰囲気な。雰囲気。
「あ、でもこれ以上伏見の体力減らないようにブロックは出来るかも」
『え、なにそれどーすんの?』
松川がぐっと手を伸ばす。向かった先は悠桐の頭だった。ぽんぽんと優しく撫でた後に微笑む松川を見て、思わず顔を両手で覆う。
『えー…なにそれ…めっちゃ癒された…』
「ブロック出来た?」
『出来た出来た。超出来た』
「そりゃ良かった」
『高校生怖ぁ…。ねぇまっつん結婚しよ…』
「ん?別にいいよ」
『断れよ』
「理不尽」