本編
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「なんか…」
「うん…」
「すごいピリピリしてんな」
「なに怒ってんだ?」
4人の視線の先には悠桐がいた。
不機嫌そうにへの字に曲がった唇は、ギュッと固く結ばれている。
全身から立ち上るような不機嫌オーラをそのままに、悠桐が見ているのは今日彼らが試合する予定の大学生バレーボールチームだ。
週初めに、今日試合があるが人手が足りないことを理由に頼んだ臨時マネージャー。
放課後になるまではいつも通りだったはず。
アップをしている大学生から目を離さず、時折抱えているノートにペンを走らせる様子を見て、4人は首を傾げた。
「今日一日普通だったよな?」
「おかしいとこは何もなかったなぁ」
花巻の問いに、同じクラスの松川は悠桐の一日を振り返る。
「大学生来てからじゃない?」
「あーそうかも……っておい、岩泉!」
悠桐の不機嫌の原因を探ろうと、ああでもないこうでもないと話し合っていたのに、いち早くそこから抜け出たのは岩泉だった。
花巻の制止の声も聞かず、岩泉はずんずん歩いて悠桐の目の前で立ち止まる。
そして彼は言った。
「なにイライラしてんだお前。便秘か?」
「「「(アホかーー!)」」」
おおよそ女子に対して聞く質問ではなかったそれに、残された3人は思わず頭を抱えた。
しかしそこは岩泉だ。きっと普段から実直で質問に他意のない彼なら、このありえない状況を打破できるかもしれないと、3人は若干の期待を込めて見守ったのだが。
『はあ!?』
返ってきたのは当たり前の反応だった。
眉間に寄せる皺は、今までに類を見ないほど深い。
『バカじゃないの!?ほんっ……バカ!!』
「語彙力どうした」
花巻が思わず突っ込む。もちろん遠くから見守っているので悠桐には聞こえない。
悠桐の握るペンがミシリと音を立てるのを、岩泉は突っ立ったまま聞いていた。
『快便だよバーーカ!!』
「す、すまん…」
悠桐の剣幕に負けた岩泉はすごすごと3人の元へ戻り、その3人は肩を落として帰ってきたエースを迎えた。
「おかえり岩泉」
「どんまい」
「今のは岩ちゃんが悪い」
「ぐぬぅ…!」
及川の珍しく正論な指摘に、岩泉は言い返せずに頭を抱える。
悠桐は先程の不機嫌オーラをやや引っ込めたものの、相変わらず顔は不機嫌なままだ。
「結局なにがあったのかは分からないままかー」
不機嫌でも仕事はちゃんとこなしているし、恐らくいま書いているのも、アップをとっている大学生の細かい動きの癖なんかを調査しているのだろうと思う。
触らぬ神に何とやら。触れないほうが賢明かと4人が方向性を合わせた時。
「あの…」
躊躇いがちに掛けられた声の方を向くと、何やら視線をさ迷わせた矢巾と金田一がいた。
「どした?」
「あー…伏見さんが機嫌悪い原因、なんですけど…」
「え、わかんの!?」
「た、たぶん…?」
随分と歯切れの悪い2人は、本当に言っていいのかと視線で会話をしている。
「なにがあった」
岩泉が聞くと、2人は小さく頷き合った。
「えっと、さっき大学生が来てすぐくらいにーー」