本編
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外の水道でスクイズを振りながら、悠桐はドリンクを作っていた。
『あんなに作っておいても足りないのか…高校生の新陳代謝なめてたわ…』
あれだけ激しく運動していたら当たり前と言えば当たり前だが、想像以上の消費量に思わず独り言を呟く。
「あ」
『ん?』
あ、と呟いたのは白布で、悠桐は声のした方を振り向いた。
『あれ、試合終わった?』
「はい」
悠桐に視線を向けることなく、白布はベリベリとテーピングを外しながら素っ気なく返事をする。
「あ、白布さん!テーピングもうなかったですよ!」
「誰だよ最後に使ったやつ…」
遠くから五色の声が聞こえ、白布の不機嫌な声が続いた。
「柔らかいやつならありますけど」
「使いづらいんだよ、それ」
近付いてきた五色が持っていたテーピングを見て文句を言い、白布は水道を捻って手を洗う。
『(きれいな指先だなぁ)』
女の子も羨むほどのきれいな手。
じっとその手を眺めながらスクイズを振っていた悠桐は、ふと自分のジャージのポケットに固めのテーピングが入っていたことを思い出した。
『白布くん、これ使う?』
「は、」
手渡されたテーピングを見て、白布は悠桐に目を向ける。
『あ、うちの備品とかではないから。私がテーピング練習に使ってたやつなの』
それで良ければあげるよ、と続ける悠桐を見て、白布と五色は一瞬視線を交わした。
「敵に塩を送るなんて余裕ですね!」
「お前失礼だろ」
ふふん、という顔をした五色を見て、さすがに白布が咎める。
悠桐は思わず笑いそうになって、どうせなら五色にも塩を送ろうと口を開いた。
『キレッキレのストレートがかっこいい五色くんだよね』
「えっ」
『1年生なのにレギュラーってすごいね』
にっこりと笑って悠桐は言う。
「…まっ、まあ!?俺は白鳥沢のエースと呼ばれるに相応しい男ですからね!」
『(ちょっろ)』
「大口叩くな」
ドヤァ…と胸を張る五色に、悠桐は口元をキュッと引き締めて笑わないように努め、白布は五色をたしなめる。
悠桐が言ったことは決して嘘ではなく本心だ。五色のことはもちろん推しているし、活躍してほしいとも思っている。
ただ今は敵同士。少しでも青城の勝率を上げるためにマネージャー(仮)として仕事をしなければ。
それにしてもチョロい。チョロチョロのチョロである。
「……もらってもいいんですか」
『ん?ああ、いいよ。青城に勝ってほしいけど、白布くんに怪我してほしいわけじゃないし』
「…そうですか」
そう言って白布は悠桐の手からテーピングを受け取って、固さを確かめるように手の中で転がしている。
悠桐は作り終わったドリンクが入ったスクイズを持つと、白布と五色にひらひらと手を振った。
『じゃあ残りの試合も頑張ってね』
背を向けた悠桐に、白布の声が掛かる。
「伏見さん!」
『はぁい?』
呼び止められて、悠桐はくるりと振り向いた。
「テーピング…ありがとうございました」
白布がぺこりと頭を下げると、シルクのような細く色素の薄い髪がさらりと揺れる。
『どういたしまして』
にこりと笑って、悠桐は体育館に向かった。