本編
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「前、前!」
「フェイント!」
『…すっごい……』
悠桐は目を輝かせた。
大好きなキャラクターだった彼らが、いま目の前で試合をしている。
「今のは取れるボールだろうが工!!」
「すっ、すみません!!」
『(鍛治くんの迫力やばぁ…!)』
フライングレシーブが上手く出来なかった五色を、白鳥沢の監督である鷲匠が怒鳴りつける様子を見て、悠桐は若干の恐怖を覚えた。
今日白鳥沢は大学生バレーボールチームとの練習試合もあるようで、青城とは2セット先取の3セットマッチ、2試合行うことになっている。
「岩泉ナイッサー!」
白鳥沢に1セットを取られて2セット目。
現在2-6で負けている。
それでももちろん、青城の誰一人として諦めの色は見えていない。
『(迫力あるなぁ…)』
試合を観つつ用事をしていた悠桐は、ふと手を止めた。
『………』
じっとコートの中を見守り、怪訝そうに首を傾げる。
「伏見?」
その様子に気付いた溝口が悠桐に声をかけるが、悠桐は聞こえないのかずっとコートを見ている。
「伏見はどうかしたのか?」
「いや、なんかずっとあのまま動かないと言いますか…」
溝口と入畑が悠桐へ視線を向けたとき、ちょうど青城が続けて2点取ったことによる白鳥沢のタイムアウトが入った。
悠桐はコートにくるりと背を向けて、溝口の横に置かれていた救急箱からコールドスプレーとテーピング、ハサミを取り出して花巻へ歩み寄る。
『花巻』
「ん?」
『右手出して。ブロックのとき引っ掛けたでしょう』
「え」
「え!?」
「マッキーほんと!?」
「あー…うん、気付かれてねぇと思ってたけど」
そう言って笑う花巻を見て、悠桐は顔を顰めた。
『まさか、そのまま隠すつもりだったわけ?』
「や、そんな違和感ないし」
そこまで言って、何度か指を曲げてみせる。
「……一応テーピングしとくわ」
『スプレーは?』
「いや、それはいい」
『手、出して』
素直に差し出された手に、悠桐がそっと触れる。
比べて見ると当たり前に花巻の手は大きく骨ばっていて、悠桐のそれは小さかった。
『これ痛い?』
「へーき」
どうやら本当に軽度らしく、悠桐は人知れずホッと息をつく。
そのまま手早くテーピングをする悠桐に、周りはその様子をじっと伺った。
『…どう?きつい?』
「ちょうどいい。サンキュ」
微笑む花巻に、悠桐もへらりと笑って頷く。
タイムアウトが終わってコートへ戻っていくメンバー達からスクイズを受け取って、それを抱えて外へ出ようとする悠桐に、溝口が話しかけた。
「よく花巻が突き指したってわかったな」
『たまたまですよ』
悠桐は笑って続ける。
『タオルたたむの飽きたなーと思ってコート見てただけです』
その発言に溝口は笑い、また口を開いた。
「テーピング手際良かったな。やったことあるのか?」
『あー、弟がバスケしてて、たまにやってまして』
「なるほどな」
悠桐には弟がいる。
5つ歳の離れた弟は、現実世界では20歳で、大学のサークルでバスケをしている。
その弟の手伝いでテーピングしたことは確かにあるが、今回上手くテーピングが出来たのは、仮マネージャーを引き受ける前日に買った本を読んで練習したからである。
『(上手くいって良かった…)』
これで後からテーピングが原因で悪化したって言われたらどうしよう。
悠桐はその時のことはあまり考えないようにして、体育館の外に出た。