本編
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『伏見でーす』
何度か部室のドアをノックして、とりあえず名乗る。やや時間を置いて、ドアが開かれた。
「いらっしゃーい」
笑顔で迎えてくれたのは及川で、中には何人かのレギュラーがいるようだった。
開けた瞬間に香る制汗剤の匂いと、汗の匂い。
悠桐は悪いことをしているような気持ちになって、カゴを及川に差し出した。
『タオルお届けに参りました』
「ありがとー!」
『荷物取ってもらっていい?』
「え、なんで?」
『なんでが何で?』
帰れないからだろうが、と悪態をつきたくなって、悠桐は眉根を寄せる。
「もうちょっとで着替え終わるから中で待ってて」
「送っていく」
及川の肩口からひょっこり顔を覗かせた岩泉が、なんでもないようにさらりと言ってのけた。
「岩ちゃんそれ俺の台詞ー!」
「うるせぇ及川」
『……いやいや、大丈夫だから』
だから早く荷物ください。コントしてないで。
「暗いから危ないし。ね?」
そう言って爽やかに笑ってみせる及川に、悠桐は頭を抱えたくなった。
これが及川クオリティである。
「虫入るからほら、伏見ちゃん」
ちょいちょい、と手招きされて、悠桐は小さくため息をついてから、お邪魔しますと告げて部室へ入った。
『うわ汚っ…』
「第一声がそれか」
思っていたより広い部室は、壁に沿っていくつもロッカーが並んでいる。
真ん中のスペースには4つのパイプ椅子が乱雑に置かれていて、床には空のペットボトルや食べたパンの袋、そして誰のものか分からない靴下が片方、タオルが何枚か転がっている。
『第一声がそれになるくらい汚い。なんでゴミはゴミ箱に入れられないの?』
「入れようと思ってて忘れる」
『思った時点で行動に移さないからでしょ』
キリッとした顔で言い返してきた岩泉をジト目で睨んでから、悠桐は近くにあったゴミ箱にパンの袋を突っ込んだ。
「おかんかよ…」
「ゴリラなのにおかんか…」
『聞こえてるよ花巻。歯食いしばれ』
「嘘ですゴメンナサイ!」
ジャグを二つ持っていたことをまだ引きずっているのか、ぼそりと呟く花巻に、悠桐は落ちていたペットボトルを拾い上げて構える。それを見て慌てて謝った花巻を、着替え途中の矢巾が引き気味で見ていた。
「伏見さん強ぇ…」