本編
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タオルとビブスの用意も終わり、悠桐は入畑と溝口の近くでコートを眺めている。
これからやる試合形式の練習をじっくり見るためだ。
得点板を捲るために待機していたが、入畑の厚意で今日は見学になったのだ。
悠桐は持っていたノートを捲って、ペンを握る。試合開始の笛が鳴って、ピリッとした空気が肌を刺した。
点を取って取られてを繰り返す様子を目で追いながら、悠桐はノートに文字を書き込んでいく。
「アウト!」
「あー、悪い」
「ごめん、トス低かった!」
岩泉のスパイクがエンドラインを超えてしまい、及川が自分のトスのせいだと岩泉に謝った。
『トスが低い、のは…レシーブが乱れたせい…。レシーブが乱れたのはスパイクの威力によろけちゃったから……レシーブしたのは国見くんか。……下半身強化だな』
ぶつぶつと独り言を言う悠桐を、入畑と溝口はポカンとした表情で眺める。集中している悠桐はそれに気づいていない。
『まっつんのブロック成功率は今のところ5割…いや、6割?バックアタックの時にミスることが多いからタイミング…合わせれば7割は堅いかな…』
独り言を言っている自覚はないのだろう、悠桐はスラスラとノートにペンを走らせる。
やがて試合は終わり、一旦休憩へ入ることになった。
「あー、伏見」
『はい』
タオルとスクイズを配る悠桐に声を掛けたのは溝口だ。
「さっきの。ノート見せてくれるか」
『え』
「書いてただろ。色々」
『いやぁ…あれは超個人的な感想で…』
「私も見たいんだ」
『えっ…』
入畑の援護射撃により、悠桐は渋々ノートを差し出した。
なんだなんだとレギュラー陣がそれに群がり、書かれた内容をじっくりと読み漁る。
「なんていうか…」
「ものすごく突かれたくないポイントを的確に見抜かれてる感じ」
「うわ、俺のことも書いてある…」
「下半身強化…」
『なんかすまん』
国見が嫌そうな顔をして、悠桐は反射的に謝った。
「伏見ってアナリストでも目指してんの?」
『いや全く』
「才能あるんじゃねーの」
「反論の余地もない」
『そんなことないでしょ』
「いやいや、これは中々使えるよ。ありがとう伏見さん」
『え、あ、はい…』
入畑の言葉に、悠桐は曖昧に頷く。
悠桐自身、自分が適当に書いた情報にここまで食いつかれるとは思っていなかった。
「よし、じゃあこの情報を元にメニュー組み直すぞー」
『(まじかよ)』
溝口の言葉に、悠桐は思わず半目になる。
『(すまん、国見くん…)』
下半身強化メニュー(主に走り込み)を言い渡されている国見を見ないように、悠桐はそそくさと仕事に戻った。