11.
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インターハイ予選前日。
「ーー俺からは以上だ。今日は良く休めよ」
「「「ハイ!!」」」
いよいよ明日に迫ったインターハイ予選。
部活後、烏養からの注意事項等々を聞く部員達。
「よし!じゃあこれでーー」
「あっちょっと待って!もうひとつ良いかな!?」
締めかけた澤村の言葉を武田が大声で遮る。
「清水さんから!」
「……」
「??」
「「!!!」」
指名されたのは清水で、彼女は俯いたまま動かない。
そんな清水の横に立っていた唯月は、彼女をちらりと見る。
『…キーコ』
「………激励とか…、そういうの…得意じゃないので…」
「??」
そう言って、清水は体育館の隅に置かれた紙袋を漁って、中身を取り出した。
「唯月、先生、お願いします」
『ん』
「任せて!!」
「「??」」
唯月は清水から布を受け取り、取り付けられた梯子を登る。
「ああ八賀くん、運ぶのは僕が…!」
『大丈夫ですよ』
唯月と清水、武田の3人で上まで登り、黒い布を広げてタイミングを計る。
下では部員達がなんだなんだと騒いでいて、こちらに注目していた。
「せーのっ」
「!?」
武田の声掛けで、3人で黒い布の端をしっかり持ったまま下へ落とす。
布は大きく翻って、そしてそこに書かれた文字を部員達に見せつけた。
「「「!!!」」」
書かれた文字はただ一言。
"飛べ"。
そこに込められた想いは何よりも重く、切実。
「こんなのあったんだ…!」
「掃除してたら見つけたから、きれいにした」
『破れてた所は縫い合わせたよ』
「うおおお!!燃えて来たァァ!!」
「さすが潔子さん!唯月さん!!良い仕事するっス!!」
テンションの上がる西谷達を見て、唯月は澤村へ視線を送る。
その視線の意味に気付いたのか、澤村は西谷達を黙らせた。
「……」
「「??」」
「…が」
澤村がこちらを見上げるのに倣って、他の部員達も同じように見上げる。
静まり返った体育館に、清水の声が小さく響いた。
「がんばれ」
頬を赤く染めて、ただ一言の激励。
恥ずかしいのか緊張したのか、清水はそのまま梯子を伝って降りていく。
澤村達3年と西谷、田中が無言で涙を流し始め、やがて大きな泣き声へと変貌する。
喜びの涙を流しながら気合いを入れ直す部員達を横目に、唯月は苦笑した。
『キーコ効果すごいな』
部員達に見せるために柵に括り付けた横断幕の紐を解き、唯月はそれを再度畳む。
ふと視線を感じて下を見ると、こちらを見ている西谷と目が合った。
がんばって、と口パクで伝えてみると、西谷は一瞬驚いた顔をして、そして嬉しそうに笑う。
『…』
きゅう、と胸が締め付けられたような感覚を覚えて、唯月は西谷から目を逸らした。
下ではまだ部員達がうるさく騒いでいて、清水からのプレゼントに上がったテンションが抑えられないらしい。
唯月は横断幕を抱えて、梯子に向かった。