10.
夢小説設定
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「唯月、さっきの子元カノなんだって?」
『……まあ』
帰り道。
肩を組んできた佐見から顔を逸らし、唯月は面倒くさそうに頷いた。
佐見とは逆側にノリが来て、同じように唯月に言う。
「かわいー子だったじゃん」
『まぁ』
「唯月面食いなの?」
『さぁ』
「なんでお前そんな面倒くさそうなの」
『面倒だから』
肩に回された佐見の腕を払って落とし、唯月は烏野バレー部の側に歩み寄った。
『観に来てくれてありがとね』
「めちゃくちゃかっこよかったっス!!」
『それは…さっきも聞いた』
被せるような日向の台詞に、唯月は少し引きながら答える。
「当たり前だろ!唯月さんはすげー上手いんだからな!」
「西谷が自慢することじゃないだろー」
嬉しそうな西谷に菅原が突っ込み、そのまま唯月に話し掛けた。
「なあ唯月、さっきの子、なんだって?」
『なんだってって何』
「告白でもされたか?」
『は?』
「えっ!?八賀さん、さっきの人に告白されたんスか!?」
『日向うるさい。されてない』
「……」
ここでも出る話題に、唯月はげんなりとした顔をする。
「それよりあの時の八賀さんのサーブが…」
恋愛の話よりもバレーへの興味が勝っている影山によって、試合の話に戻る。
唯月は人知れずほっと息を吐き出した。
『……』
「……」
いつもなら食いつくバレーの話題に、西谷だけが入っていかない。
何かを考えている様子の西谷は、歩くスピードも少し遅かった。
それをちらりと横目で見て、唯月は西谷のスピードに合わせて隣を歩く。
『…別に、何でもないから』
「え?」
『連絡先は交換したけど…何にもないから。また付き合うとかそういうの、ない』
「……なんで、わざわざ俺に言ってくれるんですか」
『……』
西谷の質問に、唯月は目を瞬かせた。
確かにそうだ。言う必要などない。
仮に付き合っているとは言え、それはあくまでお試しであって本気ではない。
つまり言わなくても何の支障もない。
でも言わなくてはと、誤解を解いておかねばと思ったのだ。
『(…なんで?)』
なんで言わなきゃと思ったんだろう。
『(だって…誤解されたら…駄目だって、)』
誤解されたら嫌だって。
さっき脳内にチラついた小さな影に。
『…っ…!』
カッと顔に熱が集中するのが分かった。
腕で口元を慌てて隠して、唯月は西谷から顔を逸らす。
「…顔、赤いですよ」
西谷は唯月の顔を覗き込んで、嬉しそうににんまりと笑った。
『…うるさい』
呟いた声に説得力はない。
ばくばくと疾走する心臓に手を当てて、唯月は息を吐き出した。