9.
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そのあと、起き出した部員達が洗面所に来たため、唯月と西谷は部屋に戻った。
「唯月、顔赤いけど…もしかして熱でもあるんじゃ…!」
『な、ないから…!』
東峰がおろおろと近付いてくるのを手で制して、唯月は深呼吸をする。
『(なんなのほんと…)』
もそもそと着替えて、唯月は部員達よりも先に食堂へ向かった。
台所には既に清水がおり、朝食の準備を始めている。
『おはよう』
「ああ、おはよう」
『ごめん、遅くなった』
「いいよ」
味噌汁を作っている清水の横で、彼女が焼いてくれていた鮭をひっくり返す。
昨日遅くまで作っていた煮物はいい感じに味がしみていて、唯月は少し嬉しくなった。
小鉢に移すよりも好きなだけ取って食べられるように、煮物は大皿によそって机に並べる。
焼き上がった鮭を皿に移し始めた辺りで、ぞろぞろと部員達が食堂へやって来た。
「いい匂いー!腹減ったあー!!」
「お前は朝から元気だなぁ…」
うきうきとしている日向に、近くにいた田中が乾いた笑みを浮かべる。
唯月や清水がよそったご飯や味噌汁を受け取った部員達は、それぞれ席についた。
漬物や他のおかずを机に運んだ唯月は、台所に立っている清水に声を掛ける。
『キーコ、あの…あれ、……あれ取って』
「……」
「「「……」」」
名前が出て来ない。
いくらなんでも分かるわけがない、という気持ちになり、部員達は半目になった。
が。
「はい」
『ん、ありがとう』
「「「!?」」」
清水から手渡されたのは醤油の瓶。
何でもないように受け取った唯月はそれを机に置いて、『冷める前に食べなよー』とのんきに声を掛ける。
「唯月、醤油の名前も忘れるとかまだ寝ぼけてるんじゃない」
『キーコうるさい』
「「「…」」」
そう言う清水に、台所へ戻って布巾を洗う唯月が反論する。
「なんであれで通じるんだ…」
「幼馴染ってそんな感じなのか…」
「くそっ…唯月羨ましい…!」
くっ、と拳を握り締める東峰、澤村、菅原。
「…西谷、なんか変な顔だけど大丈夫か」
「…おう…」
ムスッとした表情の西谷に、縁下が話し掛ける。
「……」
台所で仲良さげに作業する唯月と清水。
ただの幼馴染とは聞いているが、果たして本当だろうか。
腹の底に溜まっていく黒い感情が、西谷には居心地が悪かった。