8.
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ガコン、と音がした。
落ちてきたジュースを取り出し口から出して、唯月は顔を顰める。
『…間違えた』
余所見をしながらボタンを押したせいで、飲みたかった水ではなくソーダが落ちてきた。
唯月はあまり炭酸が得意ではないので、もう一度お金を入れて水を買い直す。
『これは誰かにあげよう…』
風呂上がり。
1年生もみんな入ってしまって、一番最後に入った唯月。
思ったより長湯をしてしまい、火照った身体を冷ますために、彼はすぐに部屋に戻るのをやめた。
廊下の電気はもう消えていて、自販機の灯りだけが辺りをぼうっと照らす。
その自販機の前にあるソファに座り、がしがしと頭を拭く。
よく冷えた水が喉を通っていくのが分かって、唯月はゆっくりと息を吐いた。
しばらくそうしていた時。
「あ、八賀さんいた!」
『!』
大声で後ろから呼ばれて肩を跳ねさせた唯月が振り返る。
『西谷、』
「遅いから探しに来ました!あと30分で消灯ですよ!」
『そう、分かった』
西谷に呼ばれて驚くのは何回目だろうかとため息をつく。いい加減このびっくりする癖を治したいのだが、どうにも上手くいかない。
『…ああ、西谷』
「はい」
ソファに座ったままの唯月の前に立って、西谷は唯月の言葉を待つ。
『間違えて買っちゃったんだけど、良かったら飲んで』
「いいんですか!あざーっす!」
唯月からソーダを受け取って、西谷は笑った。
『西谷ってさ』
「?はい」
『朝強い?』
「朝ッスか?強いほうだと思いますけど」
『俺、姉ちゃんに"寝起き10分はポンコツ"って言われるくらい朝弱くて…、明日、みんなより10分早く起こしてくれると嬉しいんだけど』
唯月の頼みに、西谷は力いっぱい頷く。
「任せてください!」
『ありがと』
礼を言って微笑んで、水を飲む唯月を見る。
「(…いま気付いたけど、)」
風呂上がりで紅潮した頬。
水分を含んで首筋に張り付く髪。
ペットボトルをくわえる口元が。
「(えろい…)」
唯月に釘付けになって、目が逸らせない。
唯月の髪からぽたりと滴が落ちて、彼のズボンに染みを作ったところで我に返った。