8.
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トントン、と規則正しい包丁の音。
あっという間に切りそろえられていく野菜と、唯月を見つめる。
「(まつげ、長い…綺麗だ)」
『……西谷』
「!はい」
『近い』
どうやらじりじりと唯月に近づいていたらしい。
唯月は顔を顰めて、包丁を握っていない方の手をひらひらと振った。
『危ないから』
「すんません!」
唯月から離れて、西谷はそれでも視線を外さない。
「サエさんとはなんで別れたんスか」
『えっ…その話まだ続いてんの…』
とことん納得するまで聞くんだろうな、と諦め、唯月は答える。
『俺の引っ越しが決まったから。遠距離は自信ないって言われて』
「ふられたんスか」
『そう』
「じゃあふられてなかったら、まだ付き合ってましたか」
『…どうだろう』
鍋を取り出しながら、唯月は言う。
『嫌いで別れたわけじゃないから…そうだったかもしれないけど』
「…」
『でもそれは過去のことだし、いまさらifの話をしてもね』
「……いふ、」
『……もしも、って意味ね』
意味がわからず冷や汗を流す西谷に、唯月は呆れながら意味を教える。
『(あれ、ifって中学英語だよな…)』
「…じゃあ八賀さんは、サエさんのこと好きだったんですね」
『えっ…うーん…まぁ…』
かりかりと頭を掻いて、唯月は考える素振りをした。
『多少なりともそういう感情がなければ、1年付き合ったりはしないかな』
「…そっスか」
練習漬けだった自分を責めるでもなく、試合にも応援に来てくれた。
好きか嫌いかと言われれば、間違いなく好きだった。
「じゃあ俺、練習行きます」
『うん。水分補給しっかりね』
「はい!」
走って出ていく西谷の後ろ姿を見て、唯月はまた調理を再開した。
「(人付き合いが得意じゃない八賀さんでも、彼女がいた)」
走りながら、西谷は考える。
「(恋愛感情はある!ってことは…)」
「お、西谷来た。おーい西谷ー」
「俺にも望みあり!!」
「なにが!?」
手を振る東峰の前で立ち止まって叫んだ内容は、当たり前だが東峰には理解されなかった。