6.
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『ーーだから、俺はバレー部に入るつもりはないよ』
沈黙が降りた。
東峰以外の全員が目を見開いて、話の内容を理解しようと努めている。
何か話さないと、と思う度に思考は絡まって、唯月も何も言えなくなる。
その中で一人、ようやく動いたのが西谷。
まろぶように唯月に駆け寄り、その前に膝を着く。
唯月の肩を痛いほどの力で握った西谷は、苦しそうに、泣きそうに顔を歪めていた。
『西谷く「脚は!!?」…脚?』
「俺っ!いっぱい練習に付き合ってもらって!!サーブレシーブも、ブロックフォローの時も、この間の町内会チームとの練習試合も…っ!!」
次の言葉が継げなくなった西谷は俯く。
『大丈夫。あれくらいじゃ何ともないから』
「でもっ…」
『自分の限界は自分が一番よく知ってるから。大丈夫だよ』
微笑む唯月を見て、西谷は一瞬ホッとしたような表情を見せて、今度はその目に怒りを灯した。
「なんで…、何でもっと早く言ってくれなかったんですか!!」
その言葉に、今度は唯月が俯く番だった。
『……本当はこのまま、ずっと言わないつもりだったよ』
「は…、」
『でも…、菅原くんや澤村くんが、真剣に誘ってくれたから。俺も真剣に応えなきゃと思った』
「!」
薄く笑う唯月はどこか苦しそうで、西谷は唯月の肩から手を離して彼を見つめる。
『…楽しいなって、思ったんだ。バレーが出来なくなっても、やっぱりバレーと関わりたいと思った。全国を目指すみんなを見て、目指せなくなった自分を重ねてたのかもしれない』
ごめんね、と言って、唯月は笑った。
膝立ちになった自分と唯月では、若干こちらの方が高い。
自分を見上げるようにして申し訳なさそうに笑う唯月に、西谷は俯いて、ぐっと拳を握りしめた。
「だったら」
『…?』
「その夢、俺が背負う」
『!』
「「!」」
「アンタがやりたかったこと、叶えたかった夢、全部俺が背負う。全部背負って、」
顔を上げて唯月を見る。西谷は笑顔だった。
「ーー俺がアンタを、全国へ連れていく」
予想していなかった言葉に、唯月は大きな猫目をさらに大きく開く。
言葉が出ない唯月は、ただぽかんとしているばかりで。
西谷の言葉に反応したのは、唯月ではなくバレー部員たちだった。
「俺が、じゃなくて、俺たちが、だろ!」
「いちいち男前だなノヤっさん!!」
「痛いっス、スガさん!」
西谷の頭をがしがしと叩く菅原と、騒がしい田中。口々に「そうですよ!」という部員たちを、唯月はやはりぽかんと見つめた。
『…ふっ、……ははっ!』
「「「!?」」」
俯いたかと思えば、唯月は口元に手を当てて、声を出して笑った。
「「「(笑っ……えっ!?)」」」
ここまで笑う唯月を初めて見る面々は、唯月を凝視したまま固まる。
『あー…ごめん…、参った』
笑いすぎて涙が出たらしい唯月は、それを拭った。
『西谷くん、かっこいいな』
「ーー……」
目尻を下げて、楽しそうに、そして何より嬉しそうに笑う唯月を見る西谷は、そのまま動かない。
『ーーみんなを、信じてみる』
唯月の言葉に、西谷以外の全員が奮い立つ。
気合いを入れ直しているバレー部員たちと、それを見つめる唯月は、西谷の変化に気づかない。
「……(…落ち、た?)」
どくんどくんと高鳴る心臓は締め付けられるよう。
西谷は手で口元を覆いながら、赤くなった顔を隠すことに精一杯だった。