6.
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連れ立って来たのは屋上。
立ち入り禁止と書かれた札を見ないように、唯月と東峰は外へ出る。
壁にもたれかかって、2人して無言のまま食事を開始した。
「えっと…なあ、八賀」
『?』
食べ始めて15分ほど。
東峰はもう持ってきていたパンを完食しかけていた。
「その…大地とかスガに、部活に戻るように説得してほしいって言われて来たんだろ?」
東峰の言葉に、唯月は一瞬動きを止める。
『何も言われてないよ。東峰くんと話すの久しぶりだから、俺が勝手にしてるだけ』
弁当の最後の一口を放り込んで、もぐもぐと咀嚼する。東峰は首を傾げた。
「あれ、そうなの…?」
『戻っていないって言うのは聞いてるけど、説得してくれなんて頼まれてないよ』
頼まれても面倒だからやらない、と続けて、唯月は弁当を片付ける。
『…だから、これは俺個人の話ね』
「え?」
ペットボトルの蓋を開けて中身を飲んで、唯月は空を見上げた。
『ーー俺さ、中学は親の仕事の関係で大阪にいたんだけど』
「(だからすごい選手なのに名前聞いたことなかったのか…)」
形の良い唇から溢れる言葉に、東峰は何も言わずに耳を傾ける。
『中学最後の公式試合、初戦で勝って。このまま最後まで勝ち抜くぞって思った帰り道で、事故に遭った』
「……え、」
唯月は相変わらず空を見上げていて、思わず目を見開いた東峰は、唯月から目が離せなくなった。
『左脚を怪我してね、』
言いながら、前に投げ出していた左脚を撫でる。
『治る怪我だったけど…、どうしても最後の試合に出たくて無理したら、チームメイトに迷惑掛けた挙句、もうバレーが出来なくなった』
「…!!」
『あ、バレー部と練習してるくらいじゃ問題はないんだけど』
少し笑って、唯月はひらひらと手を振った。
『…いつ痛み出すか分からない不安を抱えて、またチームメイトに迷惑を掛けるくらいなら、俺はもう部活もクラブチームも入らないって決めたんだ』
でも、と、唯月はぐっと握った手に力を込める。
『あの時無茶なことしなければ、まだ全力でバレーが出来てたんだろうなって思ったら、後悔しか残らなかった』
「!」
『だからもし、東峰くんがこの先後悔しないなら、バレー部には行かなくていいと思う。ーーでも、』
かちりと合った視線。
吸い込まれるような猫目に、東峰は一瞬たじろいだ。
『"あの時ああしていれば"って後悔するなら、辞めないでほしい』
「八賀…」
『…チームメイトとボールを追いかけられないのってさ、』
立ち上がった唯月は、自嘲するように笑った。
『ーー結構、辛いよ』
唯月はそう言ったあと、『話しすぎたね、戻ろうか』と言った。
思った以上に唯月の抱えていた事情が重いように感じられて、東峰は頷くことしか出来なかった。