7.
夢小説設定
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「……」
落ちた、と思った。
なにが落ちたのかは全然わからなくて、ただ落ちた、という感覚。
先を歩く唯月をボーッと見つめながら、西谷は珍しく静かに最後尾を歩いていた。
唯月の衝撃的な告白のあと、全員でのんびりと帰路につくことになった。
いつもは騒がしく一番前を歩く西谷の異変に気付き、田中はそんな西谷の隣を歩いている。
「えっと…ノヤっさん?」
「…ん、なんだ龍」
ワンテンポ遅れての返事。
田中は首を傾げる。
「あー…なんかあったか?」
「?なんでだ?」
「いや…」
明らかに様子のおかしい西谷を、田中はとりあえず見守ることにした。
西谷の視線はすっと前を向き、そこにいるのは唯月。
やっぱり唯月の告白がまだ腹の中に燻っているのだろうか、と、田中は思う。
やがて途中で唯月が別れることになった。
ひらりと手を振る唯月はいつものように無表情で、さっき本当に声を出して笑ったのかと思ってしまう。
挨拶が済んだ面々から先に進んでいき、西谷と田中が唯月の前に来る。
「お疲れ様です、八賀さん!」
『お疲れ様。気をつけて帰ってね』
「ウス!」
田中はちらりと西谷を一瞥した。
西谷は唯月を見て、挨拶する様子もなく立っている。
「…ノヤっさん、先行くぜ」
「!おう」
『?』
西谷を置いて先へ行く田中と、当たり前のように残る西谷。
唯月は首を傾げた。
『どうかした?』
「あー…いや、別に…」
『…』
珍しく歯切れの悪い回答。
唯月は少し考えて、西谷に声を掛ける。
『西谷くん』
「!はい」
『ありがとね』
「は…何がっスか?」
今度は西谷が首を傾げて、唯月に聞き返した。
『全国、連れていくって言ってくれて』
「!」
『お礼言ってなかったと思って。だから』
また伝え忘れる前に言っておく、と続ける唯月を見上げる。
「(…触りたい)」
唐突にそう思って、手を伸ばしかけて、やめる。
その代わりに、西谷は笑った。
「連れていくんですから、また練習来てください」
『うん。今までよりは遊びに行くと思う』
「でも絶対無理はしないでください」
『あー…うん。この人面白いなって思うと勝負したくなるけど…善処する』
そう言って笑ってみせる唯月の言葉に、西谷は合点がいったように呟いた。
「…旭さんが「熱くなるな」って言ってたのはそのせい…」
『ああ、そうだね』
「……ちょっと待ってください。つまり旭さんは八賀さんの脚の事情知ってたんスよね」
『うん』
「なんでですか」
『えっ…』
「なんで旭さんだけ知ってるんスか」
ずい、と一歩前へ出て、唯月の顔を覗き込む。
『あー…。東峰くんがバレー部に戻らなくて後悔しないように後押しできたらって思って…なんか、話の流れで』
「……そっスか」
むす、とする西谷が理解出来ず、唯月は疑問符を頭に浮かべた。
「…じゃあ、帰ります」
『あ、うん』
「お疲れ様です」
『お疲れ様。気をつけてね』
一礼して田中を追いかけるように走る西谷の後ろ姿を見て、唯月はやっぱり首を傾げる。
『なんかあったのかな…』